表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

第18話 拒絶の記録

記録院地下第三区画――

その扉は、表向きには存在しないことになっている。


灰色の石造りの壁の一角。

外から見ればただの行き止まりだが、“万象の書庫”を継ぐ者には、その結界が可視化されていた。


《識別照合中──承認:継承者コード一致》

《封印解除──記録保持室 開放》


音もなく石壁がずれる。

冷気を帯びた通路の奥、巨大な保存装置が並ぶ部屋が姿を現した。


「……これが、“拒絶された記録”か」


レオンは歩を進める。

その足取りは、かすかに重かった。


「この空間自体が、“記録から排除された存在”を保管してる。まるで世界に存在しないように」


リュカの声が、静かに響いた。


「……おかしな感じだな。

何もかも整ってるのに、どの記録にも“日付”が書かれてない」


「意図的な抹消でしょうね。誰かが“継承の歴史”の中から、彼の存在を消そうとした」


その瞬間、レオンの書庫が微かに反応した。


《魔力共鳴:対象記録片検出──再生可能》


レオンは、保存装置の一つに手をかざす。


機械が静かに開き、中から一枚の“記録結晶”が浮かび上がった。


記録が、再生される。



『継承とは、選ばれることではない。縛られることだ』

『世界を“理解できる者”が、一番苦しむ。それを、君たちは知らない』

『私は……自分の“存在”を、誰にも見つけてほしくなかった』


映像の中で語っていたのは、黒衣の青年だった。


レオンは目を見開く。


「……この声、間違いない。あいつだ。黒の継承者」


『この力は万能ではない。世界のすべてを読み解いたとしても――

そこにあるのは、“誰にも語れない孤独”だけだった』


『私は、“理解されること”が怖かった。

……だから、継承を拒んだ。誰にも、自分を解読させたくなかったから』


『……君がこれを読んでいるなら。

君には、まだ“誰かと繋がる力”が残っていると信じたい』


映像は、そこで途切れた。


誰にも語れない、理解されない孤独。

それが、黒の継承者の本質だった。


「……あの人は、“理解する力”の果てで、自分自身を見失ったんだ」


レオンは、そっと拳を握る。


「……でも、それでも、最後の最後に、“誰かと繋がる希望”を記してた」


リュミエルが横でつぶやく。


「本当は……助けてほしかったのかもしれないね。

“選ばれなかった”ことが悔しいんじゃなくて、“理解されたくなかった”のに、自分を見つけた誰かがいたから」


「……」


リュカは、レオンをまっすぐに見ていた。


「あなたは、“理解すること”を恐れていない。だから、選ばれたんです」


「……俺は、まだ怖いよ。でも、目を背けるのは違うって……今なら言える」


そのとき、記録室の空間が微かに揺れた。


《魔力反応:不明対象接近中。警戒値レベルB》


「誰か、来る……!?」


結界の外、通路に誰かの気配が走った。


リュミエルがすぐに警戒態勢に入る。


「……また、会いに来たのかもしれないね。あの人」


レオンは結晶を握りしめ、静かに言った。


「今度こそ、向き合う。お前が選ばなかったものを――

俺は、“信じて持っていく”って、伝えるために」


彼は扉の方へ、まっすぐ歩き出す。


記録の奥で眠っていた“拒絶”の言葉が、静かに背を押していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ