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第10話 「原点回帰」

王都は、ようやく静けさを取り戻しつつあった。


ゼルガ侯の反逆事件が公に裁かれ、腐敗した一部の貴族派が粛清。

王女エリシアの政治的な立場も強まり、王都は一時の混乱から立ち直り始めていた。


そして、俺――レオン・クロードの名前も、王都の中枢に“刻まれる”ことになった。


だが。


「……一度、村に帰らせてください」


静かな謁見の間で、俺はそう申し出た。


王女エリシアは、少しだけ目を伏せてから、ゆっくりとうなずく。


「そうね。あなたの始まりは、あの最果ての村にあったのだものね」


「はい。今なら、わかる気がするんです。……あそこが、俺の土台だったんだと」


「……わかったわ。でも、レオン」


「はい?」


「また戻ってくるのよ。あなたは“もう、ただの村人”じゃないのだから」


その言葉に、少しだけ胸が熱くなる。


エリシアは王女としてではなく、“一人の仲間”として、俺の背中を押してくれていた。


「……ありがとうございます」


そう答えて、俺は静かに城を後にした。



数日後、最果ての村――アルス村。


変わらぬ景色。素朴な畑の匂い。

鶏小屋から聞こえる懐かしい鳴き声。


「……ただいま」


久々の帰郷に、誰もが驚いたような顔をしていた。


「お、おい……レオンか!? 本当にお前なのか?」


「王都に行ったって噂だったのに、戻ってきたのか?」


以前とは少し違った目で俺を見る村人たち。

以前は“ただの雑用係”だった俺を、少しだけ“誇らしげ”に迎えてくれている気がした。


「……帰ってくる場所があるって、いいもんですね」


俺は、古びた倉庫の脇に腰を下ろし、空を見上げた。


騒がしい王都と違って、ここでは時間がゆっくり流れる。

それが妙に心地よくて、目を閉じた。


けれど、平穏は長くは続かない。


その夜。


村の宿屋の前に、見慣れない人影が立っていた。


「……ああ、やっぱりいた。レオンくん」


銀髪の少女だった。


制服のまま、手には小さなカバン。笑っているのに、その瞳はどこか空虚で、まっすぐに俺を射抜いてくる。


「ねえ、どうして帰ってきちゃったの?」


「……君は、どうしてここに?」


「だって、ここがレオンくんの“原点”なんでしょ? なら、私も知らなきゃいけないじゃない」


少女は自然に俺の隣に腰を下ろす。


「王女様とばっかり仲良くしてたくせに、こういうときだけひとりで戻ってくるなんて、ずるいよ」


声は笑っている。でも、指先がぎゅっと拳を握っているのが見えた。


「……一緒にいさせてくれないかな。私にも、“原点”が欲しいの」


その言葉が、何を意味しているのかは、まだわからない。


けれど、彼女が俺の“過去”を知っているのは確かだった。


――第1章・終幕。

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