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かつて絶交した幼馴染と再会できたなら、その時はあなたを二度と離さないと決めていました。  作者: 白藍まこと
-友達-

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44 あたしはどうしたら


 び、びっくりした……。


『やっぱり好きな人と一緒にいた方がいいのかな?』


 なんて事を(ゆき)が急に言い出すから、一瞬で色んな想像をしてしまった。

 雪に好きな人が出来たのかとも思ったし。

 それかもしくは、あたしの事を……いや、ないか、冷静になれば、それは。

 でも仮に、仮に雪がそういう気持ちでいるとしたらどうだろう。

 あたしは受け入れるだろうか?


 ……まぁ、拒否はしない、か。


「そう言えば先生の呼び出しって何だったの?」


 隣に並んだ雪があたしに問いかけてくる。

 こっちの気も知らないで、飄々とした態度でいるのが少しだけ気に入らない。

 もうちょっとあたしに対する気持ちを察してくれてもいいと思うんだけど。


「進路変える話したから、その事について確認されただけ」


「……ああ、私のせいだったんだ」


 今度は申し訳なさそうに頬をかいている。

 でも、そこじゃない。

 それはあたしが決めた事なんだし、別に先生に呼び出されたからと言ってどうって事ない。

 そこじゃなくてさ、あたしの気持ちをかき乱してる事に申し訳なさを感じてくれてもいいんだけど?


「なに、なんか奢ってくれるの?」


 そんな自分勝手な気持ちが先行した結果、気付けば雪によく分からない要求をし始めていた。

 なんだろう。

 気付いてくれない代わりに、何か見返りを求めている。

 物で吊られても、別にあたしの心が満たされるわけでもないんだけど。

 すぐに“代償”を求めてしまうのは、あたしの悪い癖だな。


「いいよ、奢るよ、何でも」


 こくこく、と。

 雪が力強く頷く。

 細くて白い首がそんなに激しく上下に動くと、折れてしまいそうで怖くなる。

 もっと大事にして欲しい。


 いや、そうさせたのはあたしのせいか。

 いや、そもそもは雪のせいか。


 答えは分からず、ままならない。


「冗談だって、本気にしないでよ」


「ううん、私のせいでもあるから。それくらいはするよ」


 それでも、雪はあたしのお願いを断ろうとする事がほとんどなくなった。

 良いか悪いかは置いといて、その変化はしっかりと感じているけど、でもそれって“反応”が変わっただけなのかなとも思う。

 最初からあたしの気持ちに気付いてくれていたら、そんな行為も求めないんだけど。

 

「物を貰うのは罪悪感あるから遠慮しとく」


「じゃあ、罰でも受ける?」


 ……いや、確かにそんな事を要求した時もあったけど。

 友達に戻ってからはそんな事をしていないのに。

 どうして今さら蒸し返すような事を言うのかな。


「じゃあ、スカート短くしてみたら?」


 うん。

 そんな思いとは裏腹にあたしの口は罰の内容を口走っていた。

 心の叫びと並行して、雪への罰を考えてしまっていた。

 その上で弾き出した答えが、これ。

 あたしもどうかしてる。


「……え、なんで、そんな事?」


 戸惑う雪のスカートは膝下丈。

 というか一切スカートを折らずに履いている。

 良く言えば優等生、悪く言えば遊びがない。


「もうちょっと短い方が可愛いでしょ」


 と、一応アドバイス的な事を言ってはみるけど本心は違う。

 雪の足を見たいと思っているあたしがいる。

 私服の時もパンツスタイルだったし。

 まぁ、見た事がないわけではないけど。

 ファッションの中で見える足ってまた別物だと思う。


 ……これって変態なのかな。変態なのかもしれない。


 普通がどんどん分からなくなっていく。


「えー……」


 渋る雪。

 なんだろう、さっきまで罰なんて受けなくていいと思っていたのに。

 自分の要望に対する反応が悪いと少しだけモヤッとした。

 それはきっと、こっちが自分の欲望を曝け出したのに、聞くだけ聞いて拒否されたからだと思う。

 裸にされたのに、明後日を向かれる。

 極端に言うとそんな感覚。だから、ちょっとの恥ずかしさもあったりする。


「自分から言っといて拒否るのはなしでしょ」


「アドバイス的な内容だったから、罰になってない」


 嘘だ。

 雪がやりたくないからって、言い訳して逃げようとしている。


「アドバイスだと思うならやんなよ」


 そうだよ。

 罰なら受ける、アドバイスなら聞き入れる。

 どっちにしたってやる理由になってるじゃん。


「ええ……まぁ……若いから許されるのか……?」


 雪は少し変な事を口走りながら自分の足元を見て、スカートの腰元を摘まみたくし上げる。

 わすがに太ももが露わになって、何だかいけない物を見ているような気がした。

 ……いや、やっぱりあたしは変態なのかな。


「え、ホントにやるの?」


「いや、何で陽葵から言っといて確認するの」


 いざその姿を見たら、ちょっとエッチすぎると言うか。

 気持ちをぶつけたくて言ってみたけど、本当にやられると戸惑っていた。


「いや、いいよ、やめとこ、うん」


 冷静に考えると、そんな足を見せるような恰好で人前に出るのは何だかよくない気がした。

 雪の素肌を他人に見せる必要はない。


 ……と、思ったんだけど。


 この感情は何だろう。

 独占欲的なものなのかな。

 それとも雪を他の人に見られる事に対する嫉妬か。

 どっちにしてもその根本にある感情は……いやぁ、はは。


「私はその方がありがたいけど」


 たくしあげていたスカートを放して、雪の足が覆われる。

 安堵感と一緒に物悲しさも感じる。

 人の感情って難しい。


「最近の雪は結構、あたしに従順だよね」


 友達に戻ろうと言ってみたり。

 罰も何だかんだ受け入れて。

 同じ大学にまで誘ってきた。


 すごい変化だ。

 じゃあ、雪のその根本にある感情は何だろう?


 友情……?


 いやいや、友情でそこまでするかなと疑問に思う。

 もっと、こう、深い感情な気がする。

 【す】から始まるやつ。

 【ら】とか【こ】で始まるやつでもいい。


「そりゃ、陽葵の言う事だからね」


「……他の人なら?」


「聞くわけないでしょ」


 ……いや、それってやっぱり友情か?

 友情って、そんな感じになるかな?


「それってつまり、あたしは雪にとって特別って意味?」


 まずい、思ったよりも突っ込んだ内容になってしまった。

 早まった感がすごい。


「そうだね」


 あっさり!


「私は陽葵しか友達いないんだから、特別だよ」


 ……ああ、ちげぇ。

 いらねぇ、そこで【友達】表現いらねー。

 思ってたのとちがーう。


 ていうか、なに。

 雪にとっての友情は、そんなに深い思いを持つんだろうか。

 だとしたら、そりゃ友達が増えるわけもない。

 そんな感情を持てるような人を、何人も増やせるわけないんだから。


 そうなると、雪の“友達”の定義がそもそも合っているのかも疑問になってくる。

 それも他の人と違うんじゃないかなって。


「じゃ、じゃあさ……仮に、マジ仮にだけど、あたしに恋人が出来たとして? 雪との時間を優先できなくなったらさ……どうする?」


 もうここまで言っちゃうとあたしの気持ちも透けそうだけど。

 でも、仮って言ってるから、たらればの話なんていくらでもあるよねっ。

 さあ、これだとどうするのかな、雪ちゃんはっ。


「……あー、それは困る」


 雪が深刻そうな顔で眉間に皺を寄せる。

 そうだよね、困るよね。


「そうなると雪はどうする?」


 色々あるよね。

 取られる前に取っておくとか。

 まぁ、最悪は略奪でもいいし。

 とにかく、そんな雪の剥き出しの感情が知りたい。


「……いや、でも大丈夫だよ」


「へ?」


 え、大丈夫なの?

 あたしがどっか行ってもいいの?

 恋人が出来てもいいの?

 は?


「陽葵にはまだ恋人出来ないらしいから」


 ふん、と鼻を鳴らしながら得意げな顔でそんな事を言い切る。 

 え……なにそれ。

 自分で言うのもなんだけど、あたしそこそこモテるんでしょ?

 雪がそうやって言ってたよね?

 なのに、どうしてそんな余裕?


「いや、もし、仮にっ」


「大丈夫、そのもしもは起こらないよ」


 雪は全く瞳を反らさずに……あたしの瞳を覗いてくる。

 え、勘づいてる?

 あたしの気持ちに気付いているから、他の人になびくわけがないって。

 そういう余裕?


「私は知ってるからね」


 え、ええ……?

 な、何をだろ……。

 でも、それを聞いて深追いした時に間違ってたら恥ずかしいし……。


 ゆ、雪は……やっぱり掴めない……。




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