表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつて絶交した幼馴染と再会できたなら、その時はあなたを二度と離さないと決めていました。  作者: 白藍まこと
-友達-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/80

39 あたしの事を考えてくれてるんだね


 ……ちょっと、驚いた。

 ていうのは、完全に(ゆき)のせいで。


『離れる理由がないのなら、これから先も私と過ごす方がいいと思う』


 とか言い出すから。

 てっきり、そっちの意味というか……。

 いや、正確には大学の話だったんだけど……。


「一緒の大学にって……あたしと雪で一緒の大学行くって意味だよね?」


 聞き返すと、雪は静かに頷く。

 その目はこちらを捉えたまま離れる事はない。

 ちゃんと聞いておいて良かった。

 勘違いしたまま話を進めていたらとんでもない事に……なってたかもしれない。

 とにかく、あたしは雪の紛らわしい発言のせいで困惑していた。


「友達と同じ大学に行くのってそんなに珍しい事でもないし、私と陽葵(ひなた)は一緒にいるべき」


 思い付きで話しているような素振りもなく、固い意志を雪の言葉の端々から感じる。

 だけど、それを聞いてすぐに返事が出来るほど簡単な話でもない。


「一応聞くけど、一緒に行くとしてどっちの大学の前提で話してる?」


 あたしはこの街を離れ、都心部の大学に進学する予定でいた。

 偏差値はそれほど高くないけど、とにかく親元を離れて過ごすという事に興味があった。

 それに対して雪はこの街にある偏差値も高い大学だった。

 

「私の方に決まってる」


 雪はそれすらも当たり前のように即答する。

 だけど、それなら余計に話は難しくなってくるんだけど……。


「いや、あたしの学力じゃ厳しいんだけど……」


「一緒に頑張ろう」


 恐ろしい事を簡単に言う。

 勉強をする気がないあたしに何を強要しようとしているのか、彼女は理解出来ていないと思う。


「それに出来ればこの街出たいんだけど……」


「私と一緒にいる方を選ぼう」


 ……なんだろう。

 どうして突然、雪はこんな子供みたいな話し方になってしまったんだ。

 自分の主張ばっかりで理由が不透明なままだから、雪が幼稚化してしまっていた。


「逆に、雪があたしの大学の方を選ぶのは?」


「それはない」


 それも断言される。

 そんな話今まで一切した事がないのに、雪の中だけで話は決まっているようだった。


「理由は?」


「陽葵はこの街で私と一緒にいるべきだと思うから」


「……いや、だから、どうしてこの街で雪といるべきなのかの理由を聞いてるんだけど?」


「それが陽葵の為になるはずだから」


「……」


 雪は突然どうしたんだろう。

 明確な意思はあるはずなのに、理由がはっきりとしない。

 もしかすると、理由はあっても隠そうとしているのかもしれない。

 どちらにしても、それだけで進路を変えろと言われているあたしの身にもなって欲しい。


「でもリアルな話、すぐに返事は出来ないよ。紗奈(さな)とかにも説明しないとだし」


 紗奈とは一緒の大学に進学する予定で、お互いに住む部屋を近くで借りようかなんて話までしていた。

 必要があれば進路を変える事に抵抗はないけど、さすがに“雪に言われたから”というだけで変えられるほど簡単な話でもない。


北川(きたがわ)さんより、私だと思うよ」


 その瞳が訴えかけてくるように、こちらを覗いてくる。

 何だろう。

 雪の真剣さは伝わって来るけど、そこで紗奈の名前を気にする理由があるんだろうか。


『北川さんとじゃなくて、私と同じ大学に進学しよう』


 さっきもそんな言い回しで、あたしを誘ってきた。

 なぜか雪はしきりに“北川紗奈”の名前を持ち出していた。


「……雪、さっきも紗奈の名前を出してたよね。何か気になる事あるの?」


「それは、陽葵と同じ大学に行く人だからでしょ」


「それだけ?」


「他に理由なんてないよ」


 雪が他人の名前を挙げる事は滅多にない。

 いきなり大学を変えろと言ったり、紗奈より雪と一緒にいるべきだと言ったり。

 この違和感には、雪なりの理由がある気がしてならない。


「雪の気持ちは分かったけど、やっぱりすぐには決められないよ」


「……うん、分かってるよ。でも考えて欲しい」


 そうは言いつつ、雪は少し残念そうに瞳を伏せる。

 さっきまで強い意志を覗かせていた瞳の輝きは陰ってしまった。

 それを見てしまうと、あたしも罪悪感めいた感情を抱いてしまう。


「でも、雪があたしとのこと考えてくれてたのは嬉しいよ。まさかそんなに先の事を考えてるとは思わなかったし」


 勿論、雪の誘いはまだ迷っているけど。

 でも仮にあたしと雪が別の道に進んだとしても、今のあたしと雪ならこのまま仲良くやっていけるとそう思えた。


「これくらい、全然先の事なんかじゃないよ」

 

「え、あ、そう……?」


「私はもっと先を見てるから」


 また強い口調で雪は言い切る。


「でもさ連絡は取れるし、たまに会う事も出来るわけなんだし。同じ大学じゃなくても仲良くはやってけるんじゃない?」


 街を離れたからと言っても、永遠に別れるわけじゃない。

 お互いに気持ちがあれば、関係性は続いて行く気がした。


「いや、駄目」


「……ダメなんだ」


 だけど、やっぱり雪は頑なに認めようとはしない。

 いや、認める事が出来ないのかもしれない。


「離れ離れになったら私は駄目だと思う」


「……それって、雪が駄々こねてるって思ってもいい?」


 実際はあたしと離れたくなくて嫌々言ってるだけの子供ムーブ……みたいな?


「怒るよ」


 睨まれた。

 多分だけど、もう怒っている。


「私は真剣に考えてるから、陽葵も真剣に考えて」


「……わ、分かった」


 でも雪がこうして誕生日をお祝いをしてくれたのも、その想いが行動になった結果なんだと思う。

 その気持ちが嘘でない事はずっと伝わっている。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ