表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつて絶交した幼馴染と再会できたなら、その時はあなたを二度と離さないと決めていました。  作者: 白藍まこと
-友達-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/80

28 私の好みよりも前に


「じゃあ、ちょっと一休みしよっか」


 陽葵(ひなた)に連れられるままに、歩いて行くと向かった先はカフェだった。

 外壁がレンガになっていて、店内に入ると淡いオレンジの照明と木材を基調とした作りになっていた。

 新しいお店ではないのか、どこかアンティークな雰囲気を感じる。

 陽葵が向かう先はどこもお洒落だという事はいつもの事だ。

 窓際の席に案内されて、革張りのソファに座る。


「ここ、よく来るんだよね」


「……」


 その発言が、非常に気になってしまった。


「先週も北川(きたがわ)さんともここに来たの?」


「あ、うん、来たね」


「……ふーん」


 やっぱりか。

 こういう勘は結構当たるものらしい。


「どうかした?」


 どうかは……する。

 何か妙に心に引っかかるものがあった。

 それは先週も今週も陽葵はここに来て、他の誰かとここで時間を過ごしたという事にある。

 

「次、カフェに来るなら陽葵も来たことのないお店にするべきだと思う」


「なんで?」


 何でと聞いて来る。

 私がいくら口下手と言っても、何でもかんでも思った事を口にすればいいというものでもない。

 陽葵ももう少し察して欲しいと思うのはワガママだろうか。


「陽葵にとって、私は他の大勢の友達と一緒なの?」


「え……」


 私の質問に陽葵は口を閉ざす。

 どう答えるべきか、考えあぐねているように見えた。


「……幼馴染っていう意味では、雪は他の友達とは違うけど」


 何だか微妙に曖昧で話を反らされたような気もするけど。

 とにかく他の人とは違う所があるというのは認めてくれた。

 それなら、人とは違う扱いを期待するのは間違っているだろうか。


「じゃあ、私とは違う所に行くようにしよう。他の友達とは違うんだから」


「……ど、独特な理由」


 そうだろうか。

 そうかもしれないけど、私は陽葵に区別を望んでいる。

 どんな形でもいいから、まずはその他大勢の友達とは違うという事を認識して欲しい。

 そうしないと、陽葵にとっての一番の関係性にはなれないような気がするから。


「とりあえず話は分かったよ。それじゃ何飲む?」


 陽葵がメニュー表を渡してくる。

 と言っても私はあまり甘い飲み物は得意ではないので、無難にアイスコーヒーにしようかと思う。


「アイスコーヒーにしようかな」


「あー、紗奈(さな)も同じの頼んでたね。偶然だ」


「……」


 その被り方は非常に嫌だった。

 何でかは分からないけど、私と北川さんを同じように連想して欲しくない。


「陽葵は何頼むの?」


「んー、あたしはカフェラテのアイスにしよっかなー。あんまり苦すぎてもダメなんだよね」


 そうか、陽葵は苦いものは好まないのか。


「じゃあ、私も同じの頼む」


「いいけど、珍しいね?」


 私以外の誰かを連想してしまうなら、陽葵の好きな物を飲んでいる方がいい。

 その方が私の心は穏やかでいられる。

 陽葵が注文を終えてから少し経ってから、グラスに入ったカフェラテが届く。


「ここの美味しいよ」


「そうなんだ」


 ストローを差して、飲み込む。

 確かに、コーヒーの香ばしさとミルクのまろやかさが調和していて優しい味わいだった。


「どう?」


 私の反応を伺うように、陽葵がこちらを覗いてくる。


「美味しいね」


「でしょ?」


 その反応で安堵したのか、陽葵が表情を綻ばせる。

 私もそれを見て、何だか嬉しくなってしまう。

 それは陽葵の好きなものを共有できた事と、それを喜んでくれる陽葵を見れたからだと思う。


「たまには違う物を飲んでみるのもいいね」


 私はいつも同じ行動しかとらないから、こうして陽葵をきっかけに違う事を経験してみるのはいいかもしれない。

 陽葵を知る中で、自分にも変化が起きている事を感じていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ