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かつて絶交した幼馴染と再会できたなら、その時はあなたを二度と離さないと決めていました。  作者: 白藍まこと
-幼馴染-

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15 触れたい


「そこまでしていいって言ってないんだけど」


 陽葵(ひなた)が、尻もちをついている私を見下ろしている。

 その肢体は晒したままで、どこか艶めかしさを残しているから見上げてしまうと煽情的な光景に見えてしまう。


「いや、でもこれがお礼だし……」


 そんな中でも、私は出来るだけ努めて冷静を装って何でもない事のように声を上げる。


「ていうかさ、今度はあたしの体ジロジロ見過ぎじゃない? いきなり触るし。なに、興奮でもしてんの?」


 取り繕った冷静はすぐに崩れそうになる。

 図星すぎて何も言えず、ただ肯定しそうになる言葉を飲み込むしかなかった。

 興奮はしていないけど、体を見てしまっている事は事実だった。


「そういうつもりでシャワーに入れたの? 怖いんだけど」


 陽葵は自身の体を抱く。

 私は何も発していないのに、なぜか断定的な口調で話を進める。

 当然私にそんなつもりはなく、自分でもこんな感情に襲われたのは予想外だった。


「もしかして(ゆき)って、女が好きなの? それであたしの体に興味あるみたいな?」


 試すような口調に苛立ちを覚えたわけではない。

 そんな事で感情を荒立てるほど、私はもう子供じゃなかった。

 ただ一つだけ、訂正したかった。

 私の陽葵に対する思いが、ぼやけてしまいそうな勘違いを生みそうだったから。


「ちがう」


「何が違うの」


「陽葵だから見たいと思っただけ」


「……え」


 突然の静寂。

 陽葵が言葉を失ってしまうからだ。

 一つの勘違いを正そうとしただけなのに、私のおかしな部分が露呈されてしまう。

 私の失敗は、陽葵をこの部屋に入れた時から始まっていたのかもしれない。


「狙ってたわけでもない。ただ、陽葵に目を惹かれただけ」


「……いや、えっと」


 口火を切ってしまったのだから仕方ない。

 私は思った事を言うしかない。

 元々、何も言わなくなってて壊れてしまった関係性だ。

 言って壊れてしまうなら、それまでの関係なんだろう。


「だから、陽葵が悪い。私の目を奪う陽葵の責任。私のせいじゃない」


「……は、はあ? あたしのせいなわけないでしょ」


 私だって、人の体にだって興味を持った事なんてないのに。

 そんな姿で現れる陽葵のせいだ。

 陽葵が私をおかしくするのが悪い。


「だから、仕返しをしたのも、体を見たのもおかしくない。私はおかしな事なんてしてない」


 正しいか間違っているかなんてさっぱり分からないけど。

 私が感じた事をそのまま言葉にした。

 それを陽葵はどう受け取ってくれるのだろう。


「いや、開き直んなし」


「……え、わ」


 陽葵に肩を押されて、床に背中を打ち付ける。

 私の上に、陽葵が跨っていた。


「勝手にあたしの体を見てんのは雪だし。あたしは雪に罰を与えてるだけだから、そもそも”仕返し”ってのもおかしいから」


 そんな事を言われているのに、私は上に乗る陽葵の温度を感じている。

 頭がどうかしてしまっているのだろうか。

 陽葵の言葉よりも、陽葵自身を感じる事に私は集中してしまっている。


「それって、ダメな事なの?」


 体を見るのも、触ろうとするのも悪い事だろうか。

 そこに悪意はない。

 ただ、陽葵を知ろうとした結果の表現がそうなってしまっただけの事だ。


「ダメだね」


「なんで?」


 分からない。

 これの何がいけないのだろう。

 これは私と陽葵の関係性で起きた出来事だ。

 だから、倫理感なんてものもどうでもいいはずだ。


「雪の気持ちが分からなくなるから、ダメ」


「私の気持ち?」


 私は陽葵を知ろうとしているだけだ。

 それは一貫している。

 私が気になる人は陽葵しかいなかった。

 だから、何も知る事が出来なかったあの頃のような後悔をしない為、陽葵を知ろうとしているだけだ。


「友達を知るのに、体を見ようとしたりはしないし、触ろうとしたりもしないよ」


「……それは」


 そうかもしれない。

 でも、それなら私達は何だ。

 そもそもまだ友達とすらはっきり言えない関係なのに。

 多少、歪んでしまっても当たり前なんじゃないかと思ってしまう。

 それに……。


「でも、どっちも陽葵が私にやった事だよね?」


 私の服を脱がせてみたり、触ってみたり、噛んでみたり。

 どちらも先に陽葵が私にやってきた事だ。

 私はもしかすると無意識でその好意をなぞらえていただけなのかもしれない。

 だとしたら、やっぱりこの行動の原因は陽葵にある。


「私は雪に罰を与えてるだけだから、雪みたいにやりたくてやってるわけじゃないし」


「……ずる」


 なんか、全部それで誤魔化されている。

 陽葵は“暫定”とか“罰”とか、よく分からない言葉で気持ちを隠している気がする。

 私は頷く事しか出来ないから、それで全部うやむやにされて、こんな所まで来てしまったんだ。


「だから、やりすぎた雪に罰を与えるから」


 そうして、また私は陽葵の言いなりになる。

 それを拒否した先の未来を見るのが怖いから。

 今のこのおかしな関係を繋ぐために、おかしな行為を受け入れる。


 黙って、陽葵を見つめる。

 お互いに視線は逸らさずに、私は陽葵は見上げ、陽葵は私を見下ろす。

 すると、陽葵はおもむろに自身の胸元に手を伸ばして、巻いているバスタオルに手を掛ける。

 あろう事か、それをそのまま引っ張りバスタオルをはぎ取ってしまう。

 

 私の眼前には、陽葵の黒い下着に包まれた豊かな乳房があった。

 その緩やかな体の曲線は腰元にくびれを生んでいて、黒と白のコントラストが煽情的だった。


「ねぇ、触りたい?」


 陽葵に私の手を掴まれ、そのまま彼女の胸元に誘われる。

 指先が触れそうな寸前で、動きは止まった。


「どうなの?」


 その蠱惑的な瞳で、問われる。

 この答えの先にある結末なんて分かり切っているのに。

 陽葵も分かっているくせに。

 そして、その全てを分かっている上で正直に答えようとしている私は救いようのない程に馬鹿だった。


「触りたい」


 陽葵に、自分に嘘をつけなかった。

 その言葉を口にして、自分の感情の輪郭がはっきりして情動が激しさを増していく。

 けれど、その思いは叶う事はない。

 投げ捨てられるように手を離されると、私の手は重力に従って床に落ちる。

 

 陽葵は舌を出した。


「だめ」


 吐き捨てるように拒絶され、バスタオルが陽葵の体を隠す。

 そのまま立ち上がると、私のお腹にあった陽葵の体温も消えていく。


「雪の性欲に蓋をするっていう罰ね」


「……性欲って」


 別に、そんな感情とは限らない。

 純粋に私より豊なものに触れたいと思う気持ちは同性にだってある。


「あと、雪は変態って事が分かった」


 そうなのだろうか。

 見たいと思ったり、触れたいと思う事はそこまで変な事だろうか。

 大なり小なり、好意的な人には持ち合わせる感情だと思っていたのだけど。

 それも、陽葵にしか持ち合わせない感情だから。

 この感情が普通かどうかも確かめようがないのだけど。


「自分は好きなだけ触っておいて、よく言うよ」




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― 新着の感想 ―
ひゃあああああああ!!たまりませんね!この展開は!!!! これから先の2人がますます気になるううううう!!!
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