3. 美しい男とのゲームが始まる…
「いつまでここにいるつもりだ?」
俺は「蒼井 颯様」とかかれたベッドで
半身を起こし、窓辺でニヤニヤと俺をみる
男に話しかけた。
「冷たいね〜次は頑張りなよ〜、
せっかくあげたチャンスなんだから」
美しい顔をした男は本当にゲームを始めるらしい。
きっと俺以外の人間が見ても
今はあいつに見えるのだろう。
俺のよく知る…だがもうこの世に存在しない…。
「でもよく頑張ったよね。山吹光里に近づくために、
君の過去を知っているやつらは、
今の君を見てどう思うんだろうね」
ああ、そうだ。
俺の周りの奴はみんな口を揃えていう。
蒼井颯は人が変わった、と。
5年前のあの日、俺はある男と契約を交わした。
それから5年、やっと俺は光里のそばに
やって来た。
強くなり、自分を磨き、光里のそばにいられる
モデルの場所まで。
なのにまた変なゲームに引き込まれたもんだ。
白いシャツを来た美しい男は、窓の景色を見つめ
楽しそうに微笑む。
「綺麗な夕日だね」
夕焼けには少し早い。何をいってるんだ?
「ゲーム開始。キャストは揃った」
あいつはきっとにやけた顔をしたに違いない。
扉をたたく音と聞き覚えのある声が同時に
俺の耳に届いた。
「颯くん、入るよ」
俺は事故現場であいつを見た時と同じくらい
自分の鼓動が早まるのを感じた。
「まさか、お前…
その顔のままで……」
頼む、やめてくれと願う俺をあいつは
見つめている。
先程まで全く感じなかった夕焼けの光が
強いオレンジ色を放ち、あいつの顔を照らす。
表情は全く見えない。
扉が開き、慌ててきたのだろう、
汗だくの光里が部屋に飛び込んできた。
「颯くん、怪我は?大丈夫?
生きてる?歩ける?」
息をする暇もなく質問攻めの光里よりも
あいつが気になって俺は固唾を飲んだ。
美しい男はゆっくりと振り向く。
光里はどうなるだろう。
目の前にもしあいつが現れたら。
5年…5年も前の話だ。
大丈夫だ。いや本当にそうか?
忘れられるか?
本当に忘れてていいのか?
オレンジ色の光をあびたあいつの顔は
主治医の顔になっていた。
「無事で良かったですね」
礼をして何もなかったかのように部屋から出ていく。
だが俺はあいつの足音が俺を試して遊んでいる
ゲーム音に聞こえた……。