表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Remains  作者: 観月優凪
1/4

1.死神

 「お前は……。つくづく運の悪い男だな」

奴は俺を見て言った。


奴の足元には、一つ前のバス停から乗ってきた妊婦が頭から血を流し、苦しそうにこちらを見つめている。


「さきほどは……席を譲っていただいて……ありがとうございました」


そんなことはどうでもいい。

今にも奴の右手にある大きなカマが振り下ろされようとしているんだぞ。


奴のカマを持つ手が上がるのが見えた。


「ちょっと待て!」


俺は思わずそう叫んだ。もちろん何の作戦も策略もない。


「蒼井颯、人の心配をしている場合か?」


死神は俺を見て笑った。


そう、奴こそが死神だ。


死神がどう見えるかは、見る側に権利があるらしい。

恐ろしいだろう――そう思うから、いかにもな死神像が世間に溢れている。


だが、実際はどうだ。

俺は実はそれほど怖くない。


その理由は今はどうでもいい。

だから奴は俺からみたら普通の男にしか見えなかった。


同じ白いシャツを着た若い男だ。

いや、俺は今朝、白いシャツを着ていたはずだ。


こんな赤いシャツは絶対に選ばない。

そして自分でもわかっている。


俺もそっち側に行くんだろうってことを。


朝、「あと5分」と二度寝をしたことを、今頃後悔しても遅い。


俺の乗ったバスは横転し、煙をあげ、今にも爆発しそうな状況なのだから。


「その勇気に免じてもう一度チャンスをやろう。

だが条件がある。お前が叶えられていないことを叶えてみろ。


わかるだろ? お前なら。


もしかなったらお前にもう一度命をやろう。この妊婦もな。

俺もこのゲームに参加したい。ちょうど退屈していてな」


そう言って、死神は顔を変えた。


見覚えのある男の顔に……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ