夜襲
小屋に戻ったエリスたちはさっそく晩御飯の準備に取り掛かった。台所ではガインがドラゴンのしっぽを食べやすい大きさにカットし、串に刺していく。
エリスとアルスは着火道具にあくせくしながらもなんとか魔法を使用せずに火をつけることができた。
「やっと火が付いた」「きりもみ式は疲れるな」
「なかなかこういう機会じゃないと使う機会がないからね。経験しておいて損はないよ」
クレアが水でいっぱいの桶を引っ提げて台所に入ってきた。「火打石ぐらい使わせてくれよ」アルスがげんなりして言う。
「そういえばコールが採ってた果実、洗っておいてくれる?」
ガインが準備を進めながらコールに言う。「分かった!」コールが腰に下げたポーチからまるでザクロのように真っ赤な果実『エニャン』を数個取り出す。
「こっちに持っておいで、洗ってあげるよ」
クレアが手を差し出す。「ありがとうございます」コールが果実を手渡す。「なかなか熟れた果実だ......おや?」
クレアが目を見開く。「これ、エニャンじゃないね」
コールが首をかしげる。「えー?どっからどう見てもエニャンじゃ.......」「よく見てごらん、エニャンは果肉の中心に種子が入っているが、この果物は.......」
コールがハッと気づく。「果肉に種子がない!」「そのとうり、これは別の植物だよ。おそらく『ラジェンドラ』だ。毒はないけど美味しくないみたいだよ」
クレアが笑いながら言う。「違い分かるか?」「エニャンもラジェンドラも知らない」「授業サボってるからだよ」
アルスとエリスがそんなやり取りを交わしている間に、ガインが肉を焼き始めた。「ふー、ちょっと休憩」
ガインがどっかと椅子に座る。「あれ、ユリイは?」「ユリイ君は食卓回りを改造するとか言ってたよ。まあそのうち戻ってくるでしょ」クレアが焼いている肉を覗きながら言う。
「あの人、ほんとに大人か?全然俺たちと同い年に見えるんだが」アルスがぼやくがそれはばっちりクレアに届いていたようだ。「妖艶ぴちぴち23歳さ」クレアがバシッとポーズを決める。
「恥ずかし」アルスが辛辣に言い放つ。「アルス君?私でも怒るときは怒るよ」
「いっ、ごめんなさい」アルスが急いで謝る。「目上の人は敬わないと。敬語くらいは」エリスがアルスを肘でこづく。「お前が言えたことじゃないだろ」
アルスのツッコミにガインが吹き出す。「して、お肉の状態はどうだい?」「いい感じですね。結構脂がノッてて食べ応え抜群だと思いますよ」肉の焼けるいい香りが台所に充満する。
「いい匂い!」
台所にユリィが入ってくる。「食卓の準備はばっちりかい?」「当然です、アドラルク寮と遜色ありません!」ユリイが自信満々に宣言する。
「あ、そういえば。さっき、お花摘みに行った時、狩人さんを見かけたんです。その人と目が合ったんですけど、逃げられてしまって」
その言葉を聞いたクレアの顔が僅かに警戒の色を見せる。「そいつらの人数だったりは覚えてないか?」「人数ですか?確か4人ぐらいだったかと」
「4人か......狩人がたまたま来ていたのかもしれないね。ここの森の所有権は学園がもっている。おそらく勝手に入ってきたんだろう」
クレアが微笑みを見せる。
「今日は私が寝ずの番で見張っておくから心配は無用だよ」
「いや、寝ずの番って、明日どうすんだよ」アルスが呆れかえってため息をつく。エリスも心配する。
「交代制にした方が良いぞ。一睡もしないでは敵の襲撃を退けられないと思う」
クレアがフフ、と笑う。
「優しいね、君たち。いずれ君たちもやることにはなるさ。でも今じゃない」
クレアの瞳には少しの殺気が滲んでいた。エリスがそれを察知し、考え込む。
『殺気、つかみどころのない教師だと思っていたが、これは......」
「あの、肉焼けたんだけど」ガインが肉の串を網から上げながら伝える。全員のお腹がけたたましい音を立てる。
「さ、晩飯にしよう。もうここで食べちゃってもいいが」クレアが串をとってそのままアツアツの肉にかぶりつく。あふれ出る肉汁に対抗できるはずもなく、各々は串を取って肉にかぶりついた。
「準備した意味ないじゃん」ユリィがぼやきつつも肉にかぶりつく。「美味し!」思わず叫ぶ。
「舌にのせたら溶けるんだが」
「お肉の脂身って甘かったっけ?」
アルスとコールが肉をまじまじと見つめる。エリスも肉のおいしさに舌を巻く。
「ドラゴンのしっぽってこんなに美味しかったのか」
エリスが心の内で後悔する。『死ぬ前に一度食べておけばよかった』
肉を頬張ったガインが頷く。「うん、巧い火加減で焼けてるね。ここまで巧く焼けたのは初めてだよ」
食事の時間はあっという間に過ぎ去ってしまったが、エリスたちの舌はすっかりドラゴンのしっぽの虜になってしまった。口を開けはあのドラゴンはどこに住んでいるのか、ほかの部位はどんな美味しさなのかなどの会話が飛び交う。
いつしか外は月明かりに照らされ、なかば神秘的な静寂に包まれていた。
「明日、日が昇りきらないぐらいに起きておいで」
クレアからの指示を受けたエリスたちは2階に上がり、それぞれ割り振られた部屋に入っていった。
エリスとユリイはベッドに腰掛け、ガールズトークに花を咲かせたのち、お互いについて語りだした。
「薄々気づいているかもしれないが、私はエリス・ヴァ―ルデンじゃない」
エリスの言葉にユリィは困った表情を見せる。確かに以前のエリスと比べると桁違いに性格も体型も変わった。体型ならまだしも人の性根がそう簡単に変わるとは思えない。という変えようとしても変えられないのでは?そんな疑問がユリィの頭を駆け巡る。
太っていたころのエリスのことをユリィは嫌っていた。口を開けば悪態、罵倒、気に入らないことがあれは清癪を起こす。出来もしないことを出来ると口だけ言って実践しようともしない虚言癖。おまけにそれを指摘されると手当たり次第に暴れだしもする。エリスにはあのクレアもほとほと手を焼いていた。
「えーと、今までのエリス・ヴァールデンとは一味違うぞってこと?」
ユリィの問いかけにエリスは首を振る。そんなそぶりを見せつつもエリスはユリイになんと説明しようか苦心していた。『そのまま伝えて理解してくれるといいんだが』
「違う。魂が違うんだ。体はエリスだけど魂は別人なんだ」
ますますユリィの困惑が深まっていく。
「魂が違う?人格を乗っ取ったって認識で大丈夫?」
エリスが頷く。『人格を乗っ取った、か。確かにそうだな。この体の持ち主だったやつはあまりめられた人間とは言えなかったようだが、それでもこの世に生を受けた人間だった。私はそいつの人格を殺してしまったのかもしれないな』神妙な面持ちになったエリスを見てユリイが話題を変える。
「元素魔法ってどういうものだと思ってる?」
「元素魔法は使用者の魂に刻まれている。素質さえあれば発現できるし、属性魔法では出来ないことも出来るようになる。それこそ人の範疇を軽く飛び越えるようなことがね」
エリスの説明にユリィが興味深そうに頷く。ちょっと考え込んだ後、口を開く。
「素質さえあれば、面白い考え方だね。私たちは元素魔法は神から授かった力だと考えているよ。古くから続いている家系、例えばシャリーのところ、ロンドベル家なんかは炎元素の神の未裔だと考えられているよ。どの代でも必ず炎元素魔法の使い手が現れているから」
ユリィが続ける。
「神から力を授かった人間とその一族は大きな権力を持つことになるわ。だって世界中の誰よりも神に近い人間だもん」
一通り聞いたエリスがふーっと息を吐きだす。『神から授かった力という認識なのか。私が生きていた時代とは随分と違う考え方だな』エリスが自分の掌を見つめる。
「この世界で仰されている神はどんなのがいるんだ?」
「炎元素の神アディア、水元素の神アクエリナス、、風元素の神ウィンディ、土元素の神ディルポの四神。ほかにも豊穣の神とか鍛冶の神とか地域によっていろんな神様がいるよ」
エリスが満足げに頷く。『この世界についてまた新しいことを知ることができた』
自分が生きていた時代とは世界の様相が様変わりしているのは予想していたが、ここまでとは。自分の時代には元素の神などいなかった。歴史の中でどう素魔法の解釈が変わっていったのかも興味深い。
「自分の知りたいことの答えを求めてひたすらに旅をするのも悪くないかもな」
「あ、将来の目標出来たんだね」
ユリィがエリスに笑いかける。エリスが頷く。二人のそのままベッドに倒れこむ。
「エリスちゃんが冒険者コースの生徒でよかったって今なら思えるよ」
「え?」
エリスが横目でユリイを見る。
「だって、冒険者コースがひどい仕打ちを受ける事になったのは前のエリスちゃんのせいなんだもん。シャリーのお姉さんがエリスちゃんのことを名指しで『神託デブ』って呼んでからだよ」
エリスが静かに言う。
「それがユリィ達にも飛び火したのか」
「うん.......まあね。気づいたら私たちも『出来損ない』って言われるようになった」
ユリィがプッと吹き出す。エリスが怪訝な顔をす
る。
「ユリィ?」
「ぬくぬくした外野から言いたい放題言ってるのってダサいよね。モンスターを倒すための戦闘、魔法。騎士コースや魔導士コースの授業と比べると劣るかもしれない。でもそれに負けないように私たちがどれだけ努力してるかも知らないで『出来損ない』って決めつけて、少し偉いだけの人の発言を自分の頭で考えずにおうむ返しする。出来損ないはどっちなんだろうね」
言葉は強気だが、震えている。泣くのを我慢しているかのように。
「ユリィ......」
エリスが部屋の明かりを消してユリィの隣に横たわる。ユリィが困惑する。
「どうしたの?」
「私のせいだ、すまない」
「いや、今のエリスちゃんは謝らなくてもいいよ。むしろ感謝してるくらいだよ。シャリーを倒したときすっごいすっきりしたもん!悪いのはシャリーのお姉さんとその取り巻き、そいつらがすべての元内だよ」
ユリィがエリスの胸に顔をうずめる。
「おやすみ、ユリィ。明日起こしてくれよ」
「分かった........」
ユリィはすぐに眠りに落ちた。月明かりが部屋をほんのりと照らしている。
「.......つ!」
下の居間から聴覚を強化して二人の会話を聴いていたクレアが歯を食いしばる。彼女の抱えていたものはとっくに限界を迎えていたのだろう。
確かにシャリーの姉、グレナのエリスに対するたり方は異常だった。エリスが『神託』を受けていた、という事実に危機感を抱いていたのだろうか。
「ま、ユリイはエリスに任せるか。なんか森の方から嫌な気配を感じるし」
クレアが煙草を灰皿に押し付ける。懐からカランビットナイフを取り出して指でクルクル回し遊ぶ。
『さて、いつ仕掛けてくるか』
夜も深まったころ、小屋の周りの森で動きがあった。黒い装束を身に纏った何者かが身を寄せて最後の作戦確認を始めた。
「三班に分かれて作戦を遂行するぞ。俺たちは見張りを引き付ける。どうせエリスとかいう元素魔法の使い手が出張ってくるだろう。別班が寝てるやつらを獲え。もう一つの班は頃合いを見計らって小屋に火を放
て」
「抵抗されたら?」
「フン、『出来損ない』どもに何ができるってんだ。
まともに剣も触れない奴らだぞ」
「攫ったら頃合いを見て合流だな」
「そうだ。アジトの痕跡を残すことを忘れるな。奴らを誘い込めなくなるからな」
リーダーの言葉に黒装束たちが頷いて、作戦を開始する。
エリスはそっと部屋を抜け出して居間に降りて行っ
た。玄関の前でクレアが準備体操をしていた。
「もうすぐ夜更けだけど、まだ早いからもう少し寝ておいで」
「冗談はよしてくれ」
エリスが体を伸ばす。クレアがエリスに歩み寄る。
「ユリイ君はため込みやすい。爆発した時が心配だから、君の方でも気にかけてあげてほしい。頼めるか
い?」
「もちろんだ」
クレアの頼みにエリスは二つ返事を返した。クレアが一瞬安堵したような表情を見せたが、すぐに真剣な表情に変わる。
「外にかなりの数の敵が。屋根の上に登って確認しよ
う」
「分かった」
二人は音を立てることなく階段を駆け上り、屋根裏部屋に到達する。
「天井裏から入ろうとするわけではなさそうだね」
「正面から突っ込んでくるつもりなのか?とても隠密とはいえないが........」
クレアが冷静に分析し、エリスも気配を探る。
「とりあえず上がろう」
クレアが天井の窓を開けて屋根の上に上る。エリスも後に続く。涼しい夜風が二人の髪を靡かせる。二人が慎重に下をのぞき込む。
「いたぞ。ざっと四十人ぐらいか?」
「なかなか楽しめそうだね」
クレアが舌なめずりする。その様子を見てエリスが呆れる。
「死ぬかもしれないんだぞ」
「私はそこまで弱くないよ。一人二十人ね。それじゃ
あ」
クレアが屋根から飛び降りて黒装束たちのど真ん中に着地する。クレアのカランビットナイフが月明かりにきらめく。鮮血が地面を真っ赤に染める。ワンテンポ遅れて黒装束たちが動き出す。
「現れたぞ.......」
また一人喉を掻き切られて倒れる。クレアの動きは獣のように俊敏で黒装束たちの繰り出すを華麗に避け、確実に仕留めていく。
「女一人にここまでやられて恥ずかしくないのかい?」
クレアが攻撃をかわしながら黒装束たちを煽る。
「ほざけええ!」
斧を振りかざした黒装束がクレアに迫るが、風元素魔法を発動したエリスが間に入り、無防備な腹部に強烈なパンチをぶち込む。
「ごふっ!」
斧を持った黒装束が吹っ飛んでいく。
「きれいなのが決まったねぇ!」
クレアが黒装束にハイキックを入れながらエリスを褒める。しかしエリスは微塵もうれしくなさそうだ。
「集中しろ!」
「私は先生だぞ、かわいげのない生徒だなぁ.......」
クレアは自身の生徒の冷たい態度にがっかりしながらも、敵の攻撃を的確に捌き命を刈り取っていく。
『くそっ!これじゃ足止めにもならねえ、こいつらがここまでやるとは.......」
リーダーが焦る。しかし戦いをやめるわけにはいかない。下手に逃げてもエリスとクレアのどちらかに殺されるし、逃げおおせたとしても作戦に失敗したと知ったグレナに殺される。
『俺が生き残るには、作戦を成功させてアジトに生きて帰るしかない!」
リーダーがクレアに斬りかかる。力任せの大振りだ。
「うおおおおお!」
クレアはそれを軽々と避け、リーダーの後ろに回り込んだ。
「なっ!」
リーダーが急いで振り返って剣でクレアの一撃を何とか防ぐが、クレアの蹴りをくらって吹っ飛んで地面を転がる。
一方のエリスも風元素魔法を操り、黒装束たちを圧倒していた。彼女が剣や斧を受け止める度に刃が砕け無防備になった黒装束を吹き飛ばす。
「ぐあああああ!」
黒装束たちが悲鳴を上げる。エリスが残っている黒装束をにらむ。黒装束たちはまだ戦意を喪失していないようで、武器を構えて突進してくる。
「まだやるのか?そろそろ逃げてもいいころだぞ」
エリスが困惑しながらも敵の攻撃を避ける。
黒装束たちは玄関側で仲間が気を引いているうちに窓から侵入、ユリィ達を手際良く拘束し、窓から飛び降りて外へ連れ出す。目を覚ましたユリィがどんどん近づいてくる地面に気づいて悲鳴を上げる。
「きゃああああ!」
悲鳴に気づいたエリスが振り返って名前を叫ぶ。
「ユリィ!」
悲鳴を聞いたクレアの表情に焦りが浮かぶ。正面の黒装束たちは囮だったのだ。うかつだった。だがそのことに気づいてももう遅いのは分かっていた。しかし大事な生徒が危険にさらされている状況に叫ばずにはいられなかった。
「エリス君、ここは頼んだ!ユリィたちは私が追いかける!」
「わかった!片づけたら私もすぐ向かう!」
クレアが周りの黒装束を瞬殺し、小屋の裏手にまわって森の中に走りこんでいく。遠くの方に松明の光が見える。
「あれか?」
クレアが全力で探知魔法を発動する。人を抱えた黒装束たちとその護衛の黒装束が走っている姿を確かに探知した。
「抱えられているのは四人、エリス以外全員が攫われたのか。一体何のために?人身売買?それとも.......」
目の前に矢が飛んでくる。クレアはすれすれでそれを避け、黒装束を追い続ける。
二人の護衛の黒装束が立ち止まり、クレアに向けて魔法陣を展開する。展開された魔法陣が白く輝きだす。
「バルジュゼール」
二人が詠唱した瞬間、魔法陣から白い閃光が迸った。閃光は光の矢となってクレアに突撃していく。
「魔法か!」
クレアが木々の間を飛び移って回避するが、光の矢はクレアを追尾していく。
「く、時間稼ぎか」
クレアが黒装束に猛スピードで突進する。黒装束は意表を突かれたのか体を強張らせた。クレアは光の矢を引き付けたまま二人の目の前で真上に飛び上がった。
光の矢はスピードを緩めることなく二人を貫いてまばゆい光を放ちながら爆発した。
「ハア、ハア、くそっ!」
着地したクレアが探知魔法を発動するが反応はない。一刻も早く探し出さなくてはならないが、今闇雲に探すのは無謀だろう。クレアは来た道を戻りだした。
「はああ!」
エリスが風の力で黒装束を遥か上空に浮かび上がらせる。近くの茂みに隠れていた黒装束も浮かび上が
る。
「ウィンドバースト」
圧縮された空気が破裂し、黒装束を遥か彼方へ吹き飛ばす。すぐにユリィたちを追いかけようと飛び上がるが、こちらに戻ってくるクレアが見え、ダメだったことを悟った。
太陽が顔を覗かせ、空が明るみ始める。
野外実習が行われている森に向かって走っていたシャリーとエヴァンの目の前にエリスに吹き飛ばされた黒装束がドシャっと落ちてくる。
「うわっと!」
「なんだ?」
二人が立ち止まって黒装束を見やる。シャリーはこの黒装束に見覚えがあるようだ。
「これは、親衛隊が裏仕事をやるときに着用する奴だ。まさかこんなところで見るとは」
「親衛隊?」
エヴァンの疑問にシャリーが答える。
「私の父親の管理下にある私設兵みたいなやつ。そいつらが表立って動けない仕事の時にこの真っ黒の服を着るって、父親が昔自慢げに語ってたのを思い出し
た」
「なるほど。ところでそれが森の方から飛んでき
た、ということは........」
エヴァンの推測はシャリーにも分かるほどに明確だった。
「くそ姉貴、もうおっぱじめやがったな」
「人死にが出るという最悪の事態だけは避けなくてはならない。まあ、エリスがいればそんなことにはならないだろうが」
シャリーがグレナの顔を思い浮かべ、エヴァンも若千焦りの表情を浮かべる。
「ひとまずエリスたちと合流するぞ」
「そうだな、あいつも一緒にくそ姉貴にかちこんでや
る」
シャリーとエヴァンがまた走り出す。