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落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
三章 ドラゴンスレイヤー編

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ジーレストの鬼神

 怪物が大口を開けてセレーナを喰おうとする。

「嫌......お兄様、助けて......!」

 セレーナが祈るように口にする。

 その時、斬撃が飛び、怪物の手首から先を切り落とした。

「いやあああ!」

 落下するセレーナをセシリアが受け止める。

「あなた、死んで......」


「受け身に集中しただけ、かなり痛かったけど」

 セシリアがセレーナを出口に近いところへ置く。

 怪物が手を再生させる。

「なかなか強い攻撃じゃない」

 怪物の右斜め上の空中に剣を構えたアルスが現れる。頭から血が流れている。見るからに満身創痍だろう。

「あなたも食べてあげる!」

 怪物が手を伸ばすが、這うようにアルスがそれを一瞬で輪切りにする。

『あら、いま何をしたの?』

 怪物が反応できないでいると、背中側に抜けたアルスがこちらに戻ってきていた。

『速い!』

 怪物が首の後ろを押さえるが、アルスはそれを無視して目を斬り裂き、ロープを取り出して、先についているフックを背中に突き刺した。そこから下に降りて、両足首を斬って怪物を地面に倒す。

『警戒すべき相手、テル・イズヒサはこいつだったの⁉』

 真上に飛び上がったアルスが剣を魔装鎧状態にする。

「良い笑い方してたじゃねえか!」

 天井を蹴り、怪物のうなじめがけて急降下する。怪物がとっさに首の後ろを抑えたのを見て、直感的にそこが弱点であることは理解できた。あとはそこをぶった斬ればカタがつく。

 「もっと笑ってくれよ!」

 アルスの回転斬りが指を斬りさいた。

「うおおおおおおお!」

 アルスの連撃が怪物の首から長髪の男を引っぺがした。

「のおおおお!」

 男は野太い声で発狂しながら飛び上がると、出口に向かって走り出した。

『もうあのボディを捨てることになったんだけど!ほんっとにあり得ないんだけど!』

「邪魔よ!」

 行く手を阻むセシリアに向かって怒鳴る。

「げーっ、オカマだ!」

 セシリアが目を丸くする。

 男はセシリアの上を軽々と跳び抜けると、後ろを振り返った。

「勇者テル・イズヒサ!この後はそう上手くいかないわよ!」

 男はそう叫んで岩窟を出ていった。

「待ちなさい!」

 セシリアが追跡しようとするが、セレーナが止める。

「いまはあの聖騎士さんの手当てを!死んでしまいます!」

 セシリアが倒れているアルスに駆け寄る。かなりひどい怪我だ。

「よくこんな怪我であんな動きを......」

 セシリアが懐からポーション瓶を取り出して、中身をアルスに振りかける。

 アルスがすぐに目を覚ます。

「起きるのが早いね。どうしちゃったの?」

 セシリアの問いかけにアルスが答える。

「分かりませんよ、急に動けるようになっただけです。それより、あの怪物から出てきた人間は?」


「外へ行ったよ、急いで追いかけよう。この後とか言ってたし、まだ何かやらかしてくれるつもりなのかも」

 セシリアが言うと、アルスがうなずいて立ち上がる。

「あ、あの、助けていたただいたこと、感謝します」

 セレーナがぺこりと頭を下げる。

「え、ああ、騎士たちを助けられなくて、ふがいないです」

 アルスはそれだけ言うと、出口に向かって駆けだした。セシリアもそれに続く。

「ちょっと、一人にしないで!」

 セレーナも慌てて二人の後を追う。





 岩窟を逃げ出した男は猛然と街道を駆けていた。目指すは、はるか前方の空を飛ぶ焔飛龍えんひりゅう。ある人物の命令の元、焔飛龍を支配下に置く必要があった。とはいえ、このタイミングで支配下に置くつもりはなかったが、予定が狂ったのだ。

 あのイカレタ動きの聖騎士のせいで。随分と計画が前倒しになってしまうが、ジーレスト王国を滅ぼすことに影響は出ないだろう。どのみち一人での任務、文句を言うやつもいるまい。

「聖騎士団団長、テル・イズヒサ。思考が追い付かないほどの連撃、敵ながら見事と思ってしまったわ。思ったより若いのね」

 背中がゾクゾクする。ずいぶんなトラウマを植え付けられてしまったみたいだ。

「焔飛龍ちゃん、あなたの身体、借りるわよ!」

 男の身体が液体になって、焔飛龍の元へ浮き上がる。焔飛龍は首をもたげて嫌がるが、液体は焔飛龍の口から侵入し、瞬く間に身体の主導権を奪う。

 焔飛龍の赤い鱗に黒い線が走る。眼も妖しく光る黒い目に変貌する。

『支配完了、心置きなく暴れられるわ』

 あの聖騎士を相手するのにまだ不安は拭えないが、空という圧倒的に有利な位置から攻撃できるのはかなり大きい。

 「さあ、ジーレスト王国を滅ぼしに行くわよ~ん」

 どれだけ強くても、圧倒的な火力の前ではすべてが灰燼に帰す。焔飛龍がジーレスト王国に向かって飛ぶ。





 セレーナは馬を駆りながらアルスの背中を見つめる。明らかに人間を超越した身体能力をもってあの怪物を撃破した様は、鬼神とでも評すればいいか。自身とそう変わらない年齢の男の子が、はたして兄より強いのではないだろうか。

 不覚にもちょっとカッコイイと思ってしまった。連日貴族の男たちがやってきていてうんざりしていたが、ここいらでお見合いに終止符を打つというのもいいかもしれない。

 思わず顔がにやける。それを目ざとく見つけたセシリアが馬を彼女の横につけた。

「また何か企んでるの?」


「べ、別にあの方とお話ししたいなど......」


「言ってるじゃん」

 セレーナが顔を赤らめる。

「この一件に片が付いたら、紹介してあげるよ」


「まだ終わってないのですか?」


「さっき言ってたでしょ、この後はって。まだ、何か策があるみたいよ」

 セシリアが真面目な表情で言う。

 終止符を打たねばならないものがもう一つあったようだ。

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