表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
二章 ブレイザード王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/37

覚醒の業火 シャリーVSミーニ

 ズタズタの身体と精神を奮い立たせて立ち上がった鉄面皮は状況を確認する。モハンとレイナは戦闘不能、サイとオウボは何とか立ち上がろうとしているが、おそらく無理だろう。サイに至っては右腕を欠損している。オウボも袈裟斬りにされており、今にも内蔵が飛び出そうになっている。

「三匹、仕留め損ねた」

 ミーニがレイピアを構える。刃が閃き、無数の斬撃が鉄面皮たちに迫る。

「ぐっ......!」

 鉄面皮がオウボたちを庇うように動く。当然全てを捌ききれるはずもなく、さらに怪我を負う。

「かはっ」

 仮面から血が溢れ出す。

『元素魔法を発動していてここまでやられるとか......』

 鉄面皮の前にミーニが立つ。

「元素魔法使い、今度こそ貫く」

 ミーニがそう言ってレイピアを引いた瞬間、炎の刃と水の拳がミーニをぶっ飛ばした。

「......お前」

 鉄面皮がポツリと漏らす。目の前には万全の状態のレイナとエヴァンが立っていた。

「すまん、エリクサーを取りに行ってたんだ。といってもがれきに埋もれてて少ししか見つけられなかったが」

 エヴァンが鉄面皮の仮面を引っぺがす。そして露わになった口にエリクサーを押し込む。

「むぐ、いきなり......!」

 鉄面皮ことシャリーの傷が全回復する。

「助かった。レイナさんはモハン団長たちを安全なところに運んでください。この魔人は私がぶっ倒すんで」


「分かった、ここは君たちに任せる」

 レイナは頷くと、サイを背負い、オウボを抱こうとする。だがオウボは首を振ると自分で立ち上がる。傷は完璧とは言えないが、しっかりと縫ってある。そんなことが人間にできるとは思ってもいなかったレイナは思わず舌を巻く。

 オウボはモハンのところへ歩いていき、担ぎ上げる。

「十分経ったら戻ってくる」

 他の団員もまとめて担ぎ上げたオウボはそう言うと、レイナと一緒に比較的安全な地帯へと走り出した。最初は混迷を極めていた戦場も、リクラスの結界やレイモンドの指揮によって統制を取り、戦線を構築することに成功し始めている。

「十分ね、それまでにケリつけなきゃ」


「そうだな。それともうエリクサーはないからな。どれだけ死にかけてもどうにもならんからな」

 エヴァンが忠告する。

 瓦礫が吹き飛び、ミーニが立ち上がる。その顔は憤怒で覆いつくされていた。

「よくも......よくもォ!」

 エヴァンとシャリーが元素魔法を最大限で発動する。

水龍烈拳リヴァイアサン!」

 音速の拳がミーニの腹に突き刺さる。

「速っ!」

 シャリーが驚く。エヴァンの様相がいつもと違うことに気が付く。髪が蒼く、眼の色も変わっている。シャリーはふと、クレアとの会話を思い出す。



「んー、あの髪色さあ、風元素の神ウィンディとそっくりなんだよね」


「ウィンディ様ってあの?『英雄譚』に載ってる?エンスウェード王国の大聖堂の壁画に描かれてる?」


「うん。そっくりだ」


「じゃ、じゃああいつがウィンディ様の生まれ変わりってことか?」



 エヴァンもエリスと同じ存在になったとでもいうのだろうか。エリスと同じ存在になること、それが魔人に勝利する鍵なのだろうか。

「エヴァンのそれ、どうやってるんだ?」

 シャリーが訊ねる。

「どうって、元素魔法を道具として使わないでやってる」


「はあ?」

 意味の分からない返答にいら立ちを隠せないシャリーだったが、すぐにミーニの方を向く。

「その手をどけろ!」

 ミーニの刃が閃き、エヴァンの腕を切り落とす。腕は水となってその場に落ちる。

「ずいぶんと面白いことになってるな」

 シャリーが生えてくるエヴァンの腕を見ながら呆れる。いつからこの男は人間であることをやめたのだろうか。まあ、いつか私もその境地に足を踏み入れるのだろうが。

 シャリーには漠然とした確信があった。エヴァンと一緒ではその境地に踏み入れることすらかなわないことも。

「エヴァン、お前はエリスのところへ行け。あいつもここにいるんだろ?一緒にカゾエを倒して来いよ」


「お前一人でミーニに勝てるのか?」


「勝てるから言ってんだ」

 シャリーが刃から迸る炎を抑える。

「エリスには私がいること言うなよ」


「......全く、いつまでそんな......」


「早く行け!」

 シャリーが怒ったように言うと、エヴァンはその場から一瞬で姿を消す。

「ずいぶんな自信ね。さっきは私の攻撃に反応もできなかったくせに」

 ミーニが侮蔑のこもった言葉を吐く。

「反応できてなかったら私はとっくに死んでるはずだが?格下一人にてこずって、魔人の名が廃るなァ?」

 シャリーが煽り返す。魔人に廃る名などあるものか、とも思ったが、いまはミーニのことより自身の炎元素魔法のことで頭がいっぱいだ。

『エヴァンは道具として使わないって言ってたな。そのまま受け取るなら、従来の魔法の発動方法とは別のやり方が?』

 ミーニがレイピアを振りかぶる。

「呆けている暇があるかっ!」


「ちぃっ」

 シャリーが間一髪で刃を避ける。

『レイピアは突きを主体として闘う武器だろ、なんで振りかぶるんだ?そんだけ頑丈なのは分かるが......』

 シャリーがミーニの戦い方に疑問を感じる。剣術もどきを身につけた半端者、というサイの言葉はあながち間違いではないかもしれない。いや、ミーニの身体能力なら剣術もクソもないだろう。適当に剣を振っていれば人間は細切れになる。

「サイは私を半端者と言った!それが間違いであることを、貴様が身をもって知るがいい!」

 激昂したミーニが片翼を羽ばたかせて上空へと飛び上がる。それを見たシャリーの身体が今までにないほど熱を持つ。まるで体内で炎が燃えているかのような熱。

「サイに分からせろよ!」

 シャリーも瓦礫を足場にして空中に飛び上がる。足が炎に変化し、ミーニのところへ高速で向かう。

龍焔波りゅうえんは!」

 ミーニがレイピアをシャリーの方に向けて、蒼い炎を放つ。それは龍を思わせるような激しくも美しい炎であった。

「炎⁉」

 シャリーが軌道をずらしてギリギリで回避する。

『なんだあの炎、まるでマグマみたいな......!』

 風切り音にシャリーが剣を構える。一瞬ののちミーニが眼前まで迫り、二人は鍔迫り合いながら地表へと墜ちていく。その衝撃はすさまじく、炎と空気が爆発し、地面が大きくえぐれるほどであった。

『おっも!押し返せなかったら死ぬ!』

 シャリーが歯を食いしばって耐える。手足がだんだん痺れてきた。

「この程度かよ、クソ魔人がァァ!」

 シャリーの身体が深紅のオーラに包まれていく。無意識のうちに進化した炎元素魔法は、命の危機を感じ取った本能によって魂と統合された。それはエヴァンと同じく神の領域に足を踏み入れたのと同義である。髪と眼が緋色に変化しており、肩から炎が噴き出している。

 ぶつかり合う二人の力は限界を迎え、空気が爆ぜて二人の距離が大きく離れる。シャリーが激しく息をつきながらミーニを見やる。ミーニがこちらに向けて蒼炎を放つ。

「またかよ」

 シャリーがぼやきながら剣で受け止めるが、圧倒的な質量によって勢い良く吹っ飛ばされる。

「うわっ!」

 上空に舞い上がったシャリーがサッと戦場を確認する。紫色の雷が縦横無尽に駆け回っている地点が見える。

『ここにはユリィも来てるんだったな、まさか、あいつが戦ってるなんてことは......ないか』

 シャリーは城の方を見る。城のすぐ近くで竜巻が発生している。恐らく、いや確実にエリスだろう。

「相変わらず空の魔物はうざったいし」

 シャリーが炎の刃で、耳障りな鳴き声を出す魔物を薙ぎ払う。

「......こんなことできたっけ?」

 シャリーが自分のしたことに理解が追い付かない。自分が神の境地に至ったことに未だ気が付いていないのだ。地面を蒼い炎が走るのが見える。

「さて、反撃といくか」

 蒼い炎がシャリーに向かって飛び上がる。

龍焔斬りゅうえんざん!」

 ミーニが技を繰り出そうとした瞬間、肉薄したシャリーが強烈な一撃をお見舞いする。緋色の炎がミーニの眼前に広がる。

「クーエルスラッシュ!」

 爆発音とともに、ミーニが地面に墜落していく。端正な顔に大きな傷がついている。シャリーが地面に着地する。土煙がもうもうと舞う。ミーニが堕ちたのだろう、腹に響く音が鳴る。

 シャリーが剣を振って土煙を払いのける。ミーニが膝をついているのが見える。傷から血がボタボタと垂れている。

「なんでこの国を乗っ取った」

 シャリーが訊ねる。ミーニは肩で息をしながら答える。

「人間の質問など......答える価値もない。我らを迫害した愚かな生物など......!」


「迫害ねぇ......だからって人間に同じことして言い訳......」

 呟いたとき、シャリーの視界がぐらついた。脚の痙攣が止まらない。

『クーエルスラッシュに全力注いだからな、限界がきて当然だ』

 剣を杖代わりにして身体を支える。今倒れるわけにはいかない。ミーニはまだ生きている。

「はあ、はあ、うおおおお!」

 ミーニが雄たけびを上げて空高く舞い上がる。

「あいつ空飛びすぎだろ......」

 シャリーがぼやく。ミーニを中心に巨大な蒼炎の輪が浮かぶ。風が吹き、雷が光る。

「人間が、魔族に勝ることはない!」

 ミーニが叫ぶ。

「負けそうになって焦ってんのか?」

 シャリーが剣を構えて煽る。

「ふっ、威勢のいい人間だったと、記憶に残してあげてもいいわ」


「死人が何を覚えるってぇ!」

 シャリーが地を蹴り、緋色の軌跡を描く。

「龍焔波!」

 ミーニから極大の蒼炎が放たれる。それが何股もの蒼き龍に分裂してシャリーを燃やし尽くさんと暴れ狂う。シャリーがそれを真正面から斬り伏せながら、飛び上がっても届く位置まで走る。地面が砕け、宙に舞い上がった瓦礫を足場にしながら、シャリーは蒼い龍を斬っていく。

 ミーニが一際大きな蒼炎を放つ。空を蒼い光が照らす。

「クーエルスラッシュ!」

 足場の瓦礫を強く蹴り、大きく飛び出したシャリーはその蒼炎すらも真っ二つに斬り伏せる。

「これで最後だ、人間!烈・龍焔波ァ!」

 ミーニが翼を羽ばたかせてこちらに飛んでくるシャリーに突撃する。シャリーも渾身の一撃で迎え撃つ。

焔之龍斬ほむらのりゅうぎり!」

 とてつもない速度でシャリーとミーニの技がぶつかる。眩い光の渦が戦場を照らす。空中で発生した衝撃波によって地響きが起きる。離れたところにいる兵士たちにもそれは確認できた。

 光の渦から剣を振りぬいたシャリーが飛びだしてくる。ミーニの片翼は真っ二つに斬られ、胸から血が噴き出した状態で真っ逆さまに墜ちていく。

 彼女は人間に負けた。シャリー・ロンドベルという神の境地に至った剣士に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ