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落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
二章 ブレイザード王国編

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剣士と三節混使い

 ミーニはレイピアを構える。目の前では紅蓮のオーラに包まれた鉄面皮が剣を構えている。

「恐らく元素魔法使い、侮れないようですね」

 ミーニのレイピアの切っ先が鉄面皮ののど元に迫る。

『速い』

 鉄面皮はそれを最小限の動きで躱し、反撃に出る。燃え上がる刃がミーニの頸筋に迫るが、ミーニはバックステップで回避、カウンターで鉄面皮の鎧に傷をつける。

『腹を搔っ捌けなかった、カウンターに反応したというの?』

 ミーニが鉄面皮を睨む。分身体と闘っている連中が合流するとさらに厄介なことになりそうだ。レイナやエンスウェード王国の騎士は想定より動きのキレが良い。マイニー撃破の一報で士気が上がっているのもあるかもしれないが。

「エンスウェードの連中がこの国の内政に干渉するのは如何かと思いますが?」


「あくまで自衛行動の延長だ。それともなんだ、私とやるのが怖いのか?」

 鉄面皮がミーニの質問に煽りで返す。

「怖いというか、面倒というか......子供と遊ぶことはあまりないので」

 ミーニもなかなかやり返す。鉄面皮が食いつく。

「子供ねぇ!」

 強烈な一振りをミーニが険しい表情で受け止める。

「忍耐が足りませんよ、剣士として失格です」


「お前に剣士がどうこう言う資格ねえよ!そうだろ、サイ!」

 鉄面皮が分身体と対峙しているサイに問いかける。

「そうだ!無駄に生きて剣術もどきを身につけた半端者だ!」

 サイがそう言いながら分身体を押し返す。

『分身体が押されている?』

 ミーニが目の前の光景に混乱する。

『昔は分身体に手も足も出ていなかった男が。......レイナも同じだ、分身体と互角の実力に......!』

「何驚いてるんだよ」

 オウボが間合いに入ってくる。

『分身体をもう倒したのか?こいつ、何者⁉』

 自身の予想と違う事象が立て続けに発生し、ミーニは冷静さを失いかける。

「人間ってつくづく興味深いと思いまして」

 ミーニが高く飛び上がる。そこに鉄面皮が爆炎を剣から放つ。ミーニはその爆炎をレイピアで切り裂く。

 その隙をついて、上からオウボが三節混を振り下ろす。ミーニはガードするが、ものすごい勢いで地面に叩きつけられる。土煙が舞う。

「邪魔すんじゃねぇ、鉄仮面!」


「鉄面皮と呼んでもらおうか!」

 鉄面皮とオウボがやり取りを交わす。

 土煙の中からしなる刃が飛び出して辺りを薙ぎ払う。

「何だ」

 鉄面皮が後ろに飛んで回避する。オウボは三節混をヘリコプターのように回転させて滞空している。

「慢心というのは意識しても消せないみたいです。人間の皆さんならお分かりだったりします?」

 ミーニが首を鳴らしながら立ち上がる。

『私の炎を切り裂いた......こいつ相当腕が立つぞ』

「あなた、元素魔法の使い手ですね」

 ミーニがレイピアを鉄面皮に向ける。

「相手するのは初めてです。お手柔らかに」


「あいにく手加減できそうもない。人間......ではなさそうだが」


「そいつは魔人だ」

 オウボが鉄面皮の隣に降り立つ。その言葉に鉄面皮がため息をつく。

「どうりで嫌な奴だと思った」

 ミーニがレイピアを振るうと、刃が鞭のごとくしなる。

「あなた達、騙されてるんですよ。ここからエンスウェード王国までかなり距離がありますよね?文化交流もない遠方の国との合同演習、おかしいと思わなかったんですか?」

 ミーニがそこまで言った瞬間、鉄面皮とオウボが同時に地を蹴ってミーニに肉薄する。

「御託が聞きたいんじゃねぇんだ」


「強くなるためなら何でもするのさ、私たちは」

 二人の一撃をいなしたミーニが真上に飛び上がってしなる刃を打ち付ける。

「金属がなんでこんなにしなるんだ⁉」

 オウボが攻撃を弾きながら大声を出す。

「知るか!」

 鉄面皮が短く返し、爆炎を放つ。が、一瞬で散らされる。

 空中にいたミーニが地に足をつけ、オウボの心臓めがけてレイピアを突き出す。

「うおっ!」

 オウボは間一髪、上体をのけぞらせて回避する。

『さっき空中にいたろ......!なんつー速さ』


『この速度の一撃に反応するとは。しかもこの柔軟性、並みの戦士ではない』

 この一瞬のやり取りが両者の認識をさらに塗り替える。

「はああ!」

 ミーニの後ろを取った鉄面皮が剣を振るって腕を斬り落とした。オウボが三節混を構える。この魔人を撃破するまたとないチャンス。

「オラァァ!」

 三節混を振り上げる。凄烈な風が巻き起こる。ミーニはスレスレでレイナと闘っている分身体と同化する。

『疑似的な瞬間移動、分身体を優先してつぶすべきか?でも本体を放置しておくわけにもいかないし』

 鉄面皮が剣を構える。その刃から炎が吹き出す。

「おいレイナ、さっさと分身体片付けろよ!」

 オウボが怒鳴る。

「ああ⁉そっちが本体潰せば済む話でしょーが!」

 負けじとレイナも怒鳴り返す。そんな二人をモハンが諫める。

「やってる場合か!敵に集中しろォ!」

 そんな彼もサイとの見事な連携で分身体を戦闘不能に追い込んでいた。『ヴェルツ』の団員たちはもれなくへばっていたが。

「あまりこの形態は好きじゃないんですが......」

 ミーニがそう言ってレイピアを構え、鍔を胸の前に持ってくる。すると、身体から緑色のオーラが吹き出し、右の肩甲骨辺りから真っ黒な翼が生え出した。羽の先は鋭くとがっており、禍々しく艶めいている。右眼が黒くなっており、瞳孔がルビーのような煌めきを放っている。額からも悪魔のごとき角が一本突き出しており、根元から血が流れている。

「貴様らを殺すためならやぶさかではない。切り刻んでくれる!」

 ミーニがもう一本レイピアを手にする。分身体が魔力となってミーニに流れ込む。

「分身体を本体に戻した、戦力を分散させる必要もないってか」

 モハンが苦笑いしながらミーニを見据える。その姿は堕天使を強く思わせる姿だった。

「合同演習にきたと思ったら反乱に巻き込まれた挙句、魔人と闘うことになるなんて......とんだ笑い話だぜ」


「誰が笑う。貴様はここで私に刻まれて死ぬ。誰に何も言えずに」

 ミーニが冷たく言うが、モハンは全くビビりもしない。

「いーや、生きて帰るさ。女房と息子残して死ねるかよ」


「モハン殿、申し訳ない」

 サイがミーニから目を離さずに、モハンに謝罪する。

「この戦いが終わってから聞こう!」

 モハンはそう言って地を蹴る。鉄面皮とオウボもタイミングを合わせてミーニに迫る。

「そんなものが通用するか!禍輪かりん!」

 ミーニがそう言ってレイピアを振ると、紫色の輪がいくつも飛ぶ。

「リーチのでかい俺が攻撃を散らす、その間に二人で奴を斬れ!」

 オウボが輪を三節混で弾きながら指示を出す。

「ちっ、仕方ない、合わせろシャリー!」


「鉄面皮だ!」

 モハンがけむり玉を爆発させる。ミーニがそちらに気を取られた隙に、鉄面皮が後ろに回り込んでミーニの頸に剣を振るう。モハンが煙を操り、ミーニを拘束する。

「決めるぞ!」

 そしてモハンも真正面からミーニに斬りかかる。

 ミーニはうっとうしそうな表情を見せる。

 二人の刃が届こうとしたとき、物凄い衝撃とともに、辺り一帯がひび割れ、切断された建物が崩れ落ちる。戦場を一瞬の静寂が満たす。すぐに雷の音が響く。

『な、何が......』

 何が起きたのか、認識すらできていない。おそらく五体満足ではあるが、身体はピクリとも動かせない。鉄面皮はぼやける視界であたりを見渡す。遠くの方に血まみれのモハンが瓦礫にもたれかかっているのが見える。

『団長が......サイさんとレイナさんは......?』

 血の雨が降り注ぐ。上空にひしめき合っていた魔物たちの血だろうか。

『誰か、動ける奴は......エヴァンは、無理か......』

 オウボもやられているのだろうか、誰も立ち上がる気配が感じられない。

「はあ、はあ」

 鉄面皮が死力を尽くして立ち上がろうとする。体を動かすたびに耐え難い痛みが走る。泣き叫びたくなる衝動を必死に抑えて、剣を杖代わりにしてついに立ち上がった。

「あの斬撃を受けてなお立ち上がるとは。人間とはつくづく忌々しい......!」

 ミーニの額に青筋が浮く。圧倒的な力を見せつけたはずなのに、目の前の人間は諦めることなく立ち上がった。

 一方の鉄面皮は戦いの最中にエヴァンに感じた魔力の変質を思い出していた。懐に入れていたポーション瓶が割れ、鉄面皮の身体を回復させる。といっても全快とは程遠く、死に体が満身創痍になった程度だ。

『あの時、エヴァンは別のなにかに変質した。そして魔人を撃破した』

 エヴァンと同じ何かに変質することが魔人に勝利する鍵であることは想像に容易い。その肝心な何かが分かっていないのだが。

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