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落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
二章 ブレイザード王国編

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ヴィスト奪還作戦、開始

  ユリィは洞窟から遠く離れた海岸に一人で座っていた。太陽が水平線に沈もうとしている。誰かがこちらに駆けてくる音がする。


「ユリィ!」


 ユリィが名前を呼ばれて振り返る。エリスが息を切らせながらこちらに走ってくる。


「エリスちゃん.......」


 エリスがユリィの隣に座り込む。


「はあ、探したんだぞ」


「.......ごめん」


「やっぱり、ショックだった?」


 エリスがユリィに問いかける。ユリィは笑いながら頷く。


「当然だよ、将来の目標がなくなっちゃったんだから。それに予想はしてたよ」


「予想?」


「うん。本当の両親はもういないってわかってた。私に事実を受け入れる覚悟がなかっただけ」


 ユリィの声がだんだんと震えてくる。


「でも二人との思い出をいつか作れるって信じてた。顔も声もにおいも全部覚えてないけど、いつかそれを知ることが出来るって信じてた。どうして私をペル叔母さんのところに預けたのかも聞けると思ってた。ペル叔母さんたちがもっと早くに教えてくれていれば、こんな期待もしなかったのに.......!」


 ユリィのがこらえきれずに泣き出す。


「本当の家族は.......もういないんだって......」


「ペルさんとデノンさんは家族じゃないの?」


 エリスががポツリと呟く。


「血がつながってないもん.......」


「愛情でつながっていれば家族だと思うよ、私は」


 エリスがユリィの方に向き直る。


「今までそのことを言わなかったのもユリィを悲しませたくなかったからだろうし。私から見ればデノンさんとペルさんはユリィの家族だと思うけどね」


 ユリィが涙をぬぐう。


「でも本当の両親は私よりも闘いを選んだんだよ?」


「そうかな?そうだとしたらペルさんたちに預ける必要がないでしょ?」


「.......確かに」


「二人にとってユリィは希望だった。だからこそ戦場から遠ざけたんじゃないのかな。もしも二人が無事だったならすぐに迎えに来てたと思うよ」


 ユリィが深く息を吸って立ち上がる。エリスも立ち上がる。


「私、誤解してた。みんな私を思って行動してくれてた。ペル叔母さんや本当の両親の愛のおかげで今ここにいるんだって実感するよ。死んでもつながりは消えない。二人が繋いだこの力も」


 ユリィが雷元素魔法を発動する。感じたことのないパワーが湧いてくる。


「で、どうするんだ?」


 いつの間にか後ろにいたエヴァンがユリィに尋ねる。


「このまま大人しく帰るか、それともこの国にのさばってる魔人どもをぶちのめして仇を取るか?」


「もう逃げない。父さんと母さんの仇を取る」


 ユリィが拳を握りしめる。






「感じました?今の魔力」


 マイニーが窓の外を眺める。


「憲兵隊長のところだな、我々に勝るとも劣らない魔力だ。近日の戦い、なかなか楽しみになってきたな」


 ミーニが不敵な笑みを浮かべながら酒を仰ぐ。


「ヴォルドの時みたいに楽しめるといいな、ははは!」


 イー二が飛び跳ねながらそう言う。






 洞窟に戻ったエリスたちをレイモンドたちが迎え入れる。


「その様子じゃ、大丈夫そうじゃの」


「うん、私も戦うよ」


「よし、ではヴィスト奪還作戦のメンバーを発表する」


 レイモンドがメンバーの名前を読み上げる。


「まずレイナ。お前は道案内の役割を担ってもらう」


「了解した」


「そしてユリィとオウボが敵の排除だ」


「へえ、腕が鳴るぜ」


「い、いきなり?頑張るけど」


「憲兵隊にはパトロールのついでに支援を頼んでいる。何かあれば頼るといい」


 レイモンドの指示にレイナたちが頷く。


「作戦開始は?」


「外出禁止令が発令された瞬間、宵闇のローブを羽織って作戦遂行に当たれ」


 レイモンドが三人に真っ黒のローブを手渡す。


「エヴァンの親父さんの傑作だ。これを羽織れば闇夜に紛れて行動できる」


「へえ、エヴァン君のお父さんってすごいね」


「それなりにな」


 照れ隠しなのかエヴァンがぶっきらぼうに言い捨てる。


「照れてる」


「照れてない」


 エヴァンとユリィのやり取りを見ていたレイモンドがユリィに尋ねる。


「お前さん、戦闘経験は?」


「少ししかないです」


「ふむ、雷元素魔法を使えるとユーゴから聞いたが、隠密行動で派手にやるわけにもいくまい。簡単な魔法、バルジュゼールとかでいいだろう。レイナ、任せてよいか?」


 レイモンドが言うと、レイナは頷いてユリィについて来るように促す。


「魔法の心得は?」


「教えてもらったことはあるけど、そんなに上手じゃないよ」


 レイナとユリィが会話を交わしながら歩く後ろをオウボとエリスも続く。


「あいつの親父、王様なんだよな」


「え?ああ、ユーゴの言ってることが本当ならユリィは王女様だな」


「そうだよな。にしては全員フランクな接し方だったな」


「.......言葉遣い、改めた方がいいかな」


「今更だろ」


 そんな会話を交わすうちに一同は洞窟を出て、一本の大木の前に到着した。


「ここらでいいだろう。簡単な攻撃魔法、バルジュゼールについて知ってることは?」


 レイナの問いかけにユリィではなくオウボが鼻高々になって答える。


「己の魔力を凝縮し、高速で発射する極めてシンプルな魔法。それ故に習得しやすい」


「お前に聞いてないんだよ!」


「うるせぇ!誰が答えたって同じだろ!」


「違うわ!」


 オウボとレイナが急に喧嘩しだすが、ユリィに諫められて正気を取り戻す。


「バカは無視して.......他には」


「えーと、シンプル故に応用が利き、使用者の魔力によって威力も大幅に増減する、とか」


 レイナが満足そうに頷く。


「大体そうだ。誰だってできる魔法で、使用者によっては山を消し飛ばすことだってできるんだ」


「や、山を?そんな人いるんですか」


 ユリィが絶句する。


「早速手本を見せよう。まず手のひらを対象に向ける」


 レイナが手のひらを大木に向ける。


「次に、魔力を手のひらに集め、中心で魔力の渦を作る。すると.......」


 そう言うレイナの手のひらに魔法陣が展開される。


「ここまで来たら、魔法陣から魔法が放たれるイメージを浮かべる。これで.......」


 レイナの魔法陣から光が飛んでいき、大木の幹に穴をあける。


「これがバルジュゼールだ。さ、やってみて」


 レイナに促されてユリィが手を前にかざす。瞬く間に魔法陣が現れ、スパークを放つ。


「あいつの魔法陣、パチパチしてるぞ」


「ほんとだ、魔法陣に個人差とかあるのか?」


 エリスがレイナに尋ねると、レイナは首をかしげる。


「聞いたことないな.......」


 その時、物凄い閃光が走り爆発音が響き渡る。大木がメキメキと音を立てて倒れる。


「あ、えと、すごいなユリィ」


 レイナがかける言葉も見つからないまま、取り敢えず褒める。


「あいつやべぇ.......あいつ一人で城消し飛ばして終いだろ」


 オウボがドン引きする。それを見たユリィがショックを受ける。


「なっ、何で引いてるの?」


「あんなもんいきなりぶっ放すな!撃つときは撃つって言え!」


「ご、ごめんなさい」


「ま、何はともあれ戦闘は大丈夫そうだ」


 レイナが安心したように頷く。


「作戦遂行までしっかり身体を休めておこう、作戦がうまく運ぶとは限らないからね」


 レイナがユリィにウインクする。






 数時間後、すっかり日の沈んだ市街地。ランタンを持って道を歩くモハン達ヴェルツはサイと共にパトロールを行っていた。


「三班に分かれてパトロールとはなかなか手間がかかりますな」


 モハンが言うと、サイが笑って返す。


「はは、皆面倒くさいと愚痴っている。民を守るためなのだから仕方のないことだろうに」


「ここの首都は広いからなぁ。これを毎日やってるんだろ?」


「いかにも。私はとっくに慣れてしまったがね。今や楽しみでもあるんだ。静かな空間を無心で歩くこの時間が」


「無心でパトロールすか」


 チャラい団員が余計なことを言うと、すぐさま鉄面皮が彼のケツをひっぱたく。


「いってぇ!力強すぎだろ.......」


 チャラい団員がケツをさすりながらぼやく。


「ジン、鉄面皮、深夜にでかい声を出すな」


 鉄面皮とチャラい団員―――ジンがしおらしくなる。


「はは、頼むよ.......」


 サイがそう言った時、遠方で赤い光が打ち上げられ、空を真っ赤に染める。


「な、何だ」


「不届者が出たようだが、どうやら逃げられたらしい」


 サイの言葉に鉄面皮が疑問を呈する。


「あれがその合図か?」


「そうだ、長らく使っていないので貴殿らには伝えていなかったな。捕らえられなかった時、対象が逃げた方向に信号弾を撃つことになっている。煙がこちらを向いているということは.......」


 モハンが続ける。


「こっちに逃げているということだな」


「.......そういうことだ」


 ジンが高く飛び上がって目を凝らす。


「何か見えたか?」


「いーや何も.......」


 ジンが何かを見つけた。遠くの建物の屋根を駆ける黒ずくめの三人組がこちらに向かってくるのだ。


「黒ずくめが三人、こっちに来てるっす!」


「分かった。俺たちで捕縛するぞ、良いな!」


 モハンが言うと、団員たちが威勢よく返事を返す。





 建物の屋根を疾走する三人組―――レイナ、ユリィ、オウボは大喧嘩の真っ最中だった。


「何で憲兵に手を出したの!おかげでめちゃくちゃだよ!」


「敵は全部ぶっ飛ばす。それが俺のやり方だ!」


「隠密作戦でこんな奴選ぶとかレイモンドさん頭大丈夫なの⁉というか憲兵は味方じゃなかったっけ!」


「言ってる場合か!敵に私たちの居場所はバレてるんだ!さっさと水道橋まで行くぞ!」


 三人が地面に飛び降りる、がその先にはモハンたちが待ち構えていた。


「賊だかなんだか知らんが、おとなしく投降しろ!」


 モハンが剣を抜きはらう。


「押しとおる!」


 レイナが剣を抜くと、瞬く間に刃が燃え上がった。


「あれ、元素魔法じゃないっすか?」


 ジンの顔が引き攣る。すると鉄面皮が前に進み出る。


「私が相手します」


 鉄面皮が剣を抜きはらう。


 鉄面皮が赤い灼熱のオーラに包まれる。


 レイナが飛び上がって剣を思い切り地面に叩きつける。


 土埃が舞い、モハン達はレイナたちを見失ってしまった。


「くそっ!」


 鉄面皮が剣を振るって土埃を払いのけるが、そこに敵はいなかった。


「まんまとやられましたね」


 ジンが剣を鞘に納めながらぼやく。


「ちょっとあんたたちィ!今何時だと思ってるの!」


 近くの民家の窓が開き、カンカンに怒ったおばさんがモハンたちに怒鳴り散らかす。

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