三柱イー二との闘い
ブレイザードの王城の一室。窓の外を眺める女王カゾエがいる。
「派手にやりおって、馬鹿ども。憲兵に任せておけばいいものを」
流石に奴らも憲兵を殺すほどに愚かではないだろうが。
「イー二、ミーニ、マイニ―、あまりやりすぎるなよ」
カゾエがテレパシーを三柱に送る。それを受け取った銀髪の女がニヤッと笑う。
「心得ています」
そういうなり、エリスに殴りかかる。エリスはそれを両手で受け止める。
「ぐっ」
今までに感じたことのない衝撃がエリスの身体を伝う。
「へえ、受け止めるんだ」
銀髪の女——イー二が感心したように呟く。エリスが手を掴んで思い切り引き寄せて、イー二の顔面に頭突きをくらわせた。
「いだっ!」
イー二が吹っ飛んで壁に叩きつけられる。すぐに鼻血を拭って立ち上がるイー二をエリスがキッと見据える。
「君、想像以上だよ。あたしが思ってた以上に楽しめそう」
イー二が笑いながら言う。一方のエリスは硬い表情を崩さない。
「楽しいものか、命のやり取りだぞ」
「この世でどれだけの人間が命のやり取りができると思ってるの?たいていの人間が一方的に奪い一方的に取られるだけ。なんにも楽しくない」
イー二が肩を回しながら言う。
「命のやり取りが出来るのは選ばれし人間の特権なんだよ」
「.......話が通じないな」
「通じる必要ないもん」
イー二が親指を立てて上を示す。
「ここじゃ狭いよね、空でやろうよ。どうせ飛べるんでしょ」
「望むところだ」
イー二がギルドの天井を突き破って飛び上がる。エリスも後を追って飛び上がる。
二人がぶつかり合うたびに発生する衝撃波が地上を震わせる。
「三柱と互角に戦える人間がまだいたとは.......」
憲兵隊長が信じられないといった様子で呟く。ギルドマスターも啞然として上を見上げている。
『かなり手加減しているとはいえ、イー二と互角。あのような人間がいるとは、このミーニ、まだまだ見識が浅いようで』
黒髪ロングの女——ミーニが憲兵隊長のそばから離れ、空を仰ぎながら金髪の男——マイニーの側に歩み寄る。
「今の所、イー二の攻撃は一発も当っていない。あの女、何者だ」
「さあ、本人に聞いてみればよろしいんでなくて?とはいえ、やっと脅威になりそうな敵が現れましたわね」
「あの女も討ち入りに参加するのか?」
「さあ?でも喉から手が出るほど欲しい戦士でしょうけどね」
二人は黙りこくって勝負の行方を見守る。
空での戦闘は過激さを増していた。拳が、脚がぶつかる度に破壊的な衝撃が発生する。エリスのパンチがイー二の鳩尾にヒットする。
イー二が吹っ飛んでいく。その真上に瞬間移動のごとき素早さで移動し、両手を組んで思い切り振り下ろす。
「ちいっ」
イー二が地面に叩きつけられる。石畳が大きく割れ、破片が飛び散る。
「容赦ないねぇ、ま、容赦する理由は無いか」
イー二が余裕そうな笑みを浮かべる。
『イー二、引きなさい。もう充分よ』
ミーニからのテレパシーを受けたイー二がため息をつく。
『遅いよ、手加減難しいんだから』
テレパシーでそう言い返したイー二がフッと姿を消す。ミーニとマイニーも姿を消す。
「き、消えた!」
ユリィが辺りを見渡す。エヴァンも辺りを警戒する。
「奴らは撤退したようだ。まさかそんなことが起きるとは思わなかったが」
憲兵隊長が立ち上がりながら言う。ユリィが気遣う。
「ケガは大丈夫ですか?」
「気にするな、このぐらい」
額に脂汗が光っている。エリスが戻ってくる。
「逃げられてしまった。やはり魔族、一筋縄じゃいかないみたいだ」
「お前でもか.......」
エヴァンがぽつりとつぶやく。
「それはそうとお前たち、話がある」
辺りをいつの間にか憲兵隊が取り囲んでいる。憲兵隊長がギルドマスターに目くばせする。するとギルドマスターは頷いてどこかへ行ってしまった。
「ついてきてもらうぞ」
憲兵隊長が冷たく言い放つ。




