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落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
二章 ブレイザード王国編

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新天地

 「ユリィ、強く生きるんだぞ、もし俺の勘違いだったらすぐに迎えに行ってやる」


「どうかこの子を頼みます」


 おぼろげな声が頭に響き渡る。知らないけれど知っている声だ。自分でも何を言っているのか分からなくなってきたが声はずっと続いている。


「私たちはこれで」


「ご武運を祈っております」


『お父さん?お母さんの声も.......』





 ユリィは鳥のけたたましい鳴き声で目を覚ました。あの夢は何だったのだろう。父と母と話していたのは誰なのだろう。頭を駆け巡る疑問を整理する前にエヴァンが話しかけてきた。


「もうじきブレイザード王国に着く。荷物をまとめておけ」


「わ、分かった」


「随分大きな街だな」


 エリスが窓から顔を出しながら言う。


「中心部だからな。地方はスカスカだぞ。吹けば飛ぶような農村がいっぱいある」


 エヴァンがため息交じりに教える。ユリィもエリスの隣に立って外を見る。


 街の中心部に奇抜な形のお城が立っている。曲線を全面に押し出したデザインの城が日の光に照らされている様を眺めていると、馬車が高度を下げだした。


 間もなく、検問所に降り立った一同は検問を通過し、市街地へと足を踏み入れた。


「エヴァン君の両親がやってるお店ってどこにあるの?」


 ユリィが往来の露店を見ながらエヴァンに尋ねる。


「この先の大通りを右に曲がってすぐのところにある」


「にしても、人が多いわりに活気がないな」


 エリスが言うと、ユリィも確かにと同意する。


「ほんとだね。人はいっぱいいるけど、なんか空気が暗い。何か悲しいことでもあったのかな?」


「さあな、母さんと父さんに聞くのが早い」


 三人はほどなくして大通りに出て右に曲がったところにある魔道具店に到着した。店のドアには、本日定休日、とでかでかと書かれた張り紙が張られていた。


「定休日だってさ、どうするの?」


「どうするって、俺の家なんだから入ったって文句言うやつはいないだろ」


 エヴァンがドアを開いて店の中に入る。ドアベルの音を聞いたのだろうか、店の奥からエプロンを着たおばさんがやって来た。


「すいませんね、今日はお店は休みなんですよ」


 そう言って来訪者に目を向けると、表情が一変する。


「あら、エヴァンちゃん!帰ってくるなら一報ぐらい入れてちょうだいよ!」


 おばさんがエヴァンに駆け寄って背中をバシバシ叩く。エヴァンは痛そうにしながらおばさんを押しのける。


「やむを得なかったんだよ、母さん。あとちゃん付けするのはやめろ」


「ふふ、そうもいかないわ.......あら」


 エヴァンの母がエリスとユリィに気がつく。


「あ、どうも」


「私たち、エヴァン君のゆ.......」


 言い切る前にエヴァンの母が叫んだ。


「お父さん!エヴァンちゃんが許嫁を二人も連れて帰ってきたわ!」


「「そういうんじゃないです!!」」


 エリスとユリィが全力で訂正する。


「許嫁が二人な時点でおかしいだろ」


 エヴァンが呆れながら店の奥にエリスとユリィを案内する。




 エリスたちは二階の応接間に通された。


「なるほどね、謹慎になっちゃったんだ。ま、すべきだと思ったことをしてそうなったんだったらお母さんは何も言わないけどね」


 自分がどうしてここに帰ってきたかの顛末をエヴァンから聞いた母、イーナは特に怒ることもなかった。


「お父さんも同じだと思うよ、今工房にいるけど」


「家からかなり離れてるじゃねえか、何でさっき呼んだんだよ」


「ついうっかり」


 『イーナさん、お茶目な方だ』そんなことを思っていると、話題はエリスとユリィの方へ向いていた。取り敢えず自己紹介は済ませておこうと思い、エリスは名を名乗った。


「エリス・ヴァ―ルデンです。エヴァンとは友人関係です」


「あら、ヴァ―ルデンさんの所の?ずいぶんかわいらしくなったわね」


 イーナの言葉にエリスが身を乗り出す。


「両親を知ってるんですか?」


「ええ、もちろん、贔屓にしてくださってますよ」


 エリスが身を引く。ということは昔のエリス・ヴァ―ルデンも知っているのだろうか。イーナが目線をユリィに向ける。


「ユリィ・グランザールと言います。エリスちゃんと同じで、エヴァン君とは友人です」


「ふふ、こんなに可愛らしい子たちと友達になれるなんて、お母さん嬉しいわ」


「はは、ありがとうございます」


 イーナが二人に尋ねる。


「二人は旅行?」


「エリスちゃんはそうだけど、私は両親に会いに来たんです」


「ユリィちゃんのご両親もブレイザード王国出身なの?」


「そういうわけではないんですけど、商談でブレイザード王国に来ているようで」


「なるほど、そうなのね。それでエリスちゃんはこれからどこかに行くとか決めてるの?」


「あ、そうだ。何かおすすめの観光地とかありますか?」


 エリスの問いかけにイーナが悩む。


「そうねー、なにぶんこの街は広いからね、絞り切れないのよね」


 イーナがポンと手を打つ。


「そうだ。中央広場の所にある冒険者ギルドに行ってみたら?」


「ぼ、冒険者ギルドですか?」


 エリスが面食らう。冒険者ギルドが観光地になりえるのだろうか。


「そうよ。博物館が併設されていてね、なかなか興味深い展示物がいっぱいあるよ。誰でも無料で入れるしね」


 エヴァンがエリスに尋ねる。


「案内しようか?」


「いいのか?」


「暇だし構わん。ユリィはどうする、両親に会いに行くか?」


「私も行くよ。楽しそうだし」


 ユリィが立ち上がる。手紙にも当面は戻れないとあったし、ゆっくり探せばよいだろう、とユリィは考えていた。


「じゃ、いくか」


 エヴァンとエリスも立ち上がる。


「エヴァンちゃん、夕方には帰ってくるのよ。そこの二人とお父さんもいれて晩御飯にするから。あ、そうだ、今日はかなり処刑されてるから、あんまり面倒起こしちゃだめよ」


 イーナが言うと、エヴァンはぶっきらぼうに返した。


「......分かった」


 こうして三人は店を後にし、大通りに出た。


「エヴァン君のお母さん、良い人だね」


 ユリィが言うと、エヴァンは肩をすくめた。


「そうか?ただのお人よしにしか思えないが」


 歩きながら他愛もない会話が続く。人通りは相変わらず多い。だがやはり.......。


「やっぱり活気がないね。みんな人形みたい」


 ユリィが不思議そうに過ぎゆく人を横目に見る。


「処刑のことも含めて、ユーゴが言っていた事がすべてなんだろうな」


 エリスが言うと、ユリィも思い出したようで黙りこくってしまう。


「見えてきたぞ」


 エヴァンの指さす方に、巨大な建物が見えていた。すぐそばに白く輝く大理石で建築された建物もある。


「まっすぐ先にあるのって空から見えたお城だよね、あれが冒険者ギルド?」


 ユリィが呆然としながら言うがエリスが腕を引っ張る。


「流石に白い建物の方だろう」


「さっさと行くぞ」


 エヴァンを先頭に三人はブレイザード王国の冒険者ギルドへ足を踏み入れた。


 

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