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落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
一章 英雄転生

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融合おじさん

 「ふっ、お前ら、見たことねえ顔だな」


「誰だ」


 エヴァンが素っ気なく聞く。エリスがユリィに耳打ちする。


「絶対に目を合わせないで」


 筋骨隆々な男はエヴァンの顔を覗き込む。


「まずはお前が名を名乗れ」


「エヴァンだ。それで、お前の名前は」


 エヴァンが男をにらみつける。男はニヤッと笑ってエヴァンの首根っこを掴んで思いっきり放り投げる。


「エヴァン!」


 ぶん投げられたエヴァンが壁に叩きつけられそうになるが、受け身を取って着地する。


「俺はオウボ、この街で一番強い冒険者だ。分かったか?」


「ああ、分かったとも」


《思慮の足りない筋肉バカってことがな》


 だがエヴァンはそんなことを口にはしない。下手に怒らせて暴れられたりでもするとまずい。


「俺はこの街に来た新米冒険者を鍛えてやってるんだ。ありがたく思えよ、最強に鍛えてもらえるんだからな!」


 オウボがナイフを投げつける。エヴァンは身を翻してナイフを避ける。


「横暴な奴だな」


 エリスが呆れる。ユリィは狙われているエヴァンを見ておどおどする。近くのテーブルに座っている冒険者パーティーのリーダーがエリスたちに声を掛ける。


「大丈夫なのかい?助太刀しなくて。コッソリなら支援魔法かけられるから、行っておいで」


 リーダーの発言にエリスとユリィがドン引きする。あいつを止めるのは私たちに任せっぱなしにするのか。エリスが周りを見渡す。皆二人の攻防を見ているだけで誰も動こうとしない。


「オウボってどういうやつなんだ?」


「この街で一番強い冒険者、それは間違ってない。あいつは無理矢理冒険者をダンジョンに潜らせて、依頼達成報酬を授業料と言ってほとんど徴収する悪いやつさ」


「つまり、不当に冒険者をこき使って甘い蜜を吸ってるやつってことだな」


 エリスの要約にリーダーが頷く。エヴァンは逃げ回っているだけでオウボに反撃をするそぶりも見せない。ギルドの職員もどこかへ逃げてしまった。


「レストランでこれだけ暴れるのはまずい、外へ出るんだ!」


 エリスの指示を受けたエヴァンがギルドの扉を蹴破って外に飛び出す。


「蹴破ったァー⁉」


 冒険者たちが驚く。かなり大きい扉だったし驚くのも無理はないだろう。


「なんだ逃げんのか?意気地なしが!」


 そう叫んだオウボはエリスとユリィに狙いを定めたようだ。二人のもとに机やら椅子やらが飛んでくる。


「はっ!」


 エリスが飛んでくる机や椅子を弾き飛ばす。ユリィは机の下に潜り込んで身を守ろうとする。


「身のこなしは一級品だな!新米!」


「新米新米うるさいぞ」


 エリスが飛んできた椅子をキャッチして投げ返す。オウボはそれを殴り飛ばす。飛んで行った椅子が窓ガラスを割る。


「あいつ、頭おかしいんじゃないか」


 エリスが風元素魔法を発動する。瞬間移動の如くオウボの横に移動して、かなり威力を落したウィンドバーストで外に吹っ飛ばす。


「へえ、なにか面白い魔法を使うみたいだな」


 体勢を立て直したオウボがニヤッと笑って自身に魔法を掛ける。


「身体強化!反応強化!」


「はあ!」


 飛び上がったエヴァンが木の棒で殴りかかるが、オウボの拳に粉砕される。風元素魔法を解除したエリスもオウボに殴りかかる。


「なんだなんだ?」


「オウボの奴、またやってんのか」


 野次馬がぞろぞろやって来る。エリスがオウボの攻撃を受け止めながら野次馬を見る。


『今風元素魔法を使ったら野次馬に被害が出る、というか決定打になる威力の元素魔法を使おうものなら、辺り一帯が吹き飛んでしまうだろう』


 オウボの攻撃は激しくなってきている。有効打になりそうなものはないが、それはこちらも同じだ。というかこの街の治安維持はどうなっているんだ?いつまでたっても止めに入るものがいないのだが。


「エリスちゃん、エヴァン君」


 ユリィがギルドの扉の陰に隠れながら二人を案ずる。自分に力があれば三人であの大男を倒すことができるのだろうが、生憎ユリィの力では足手まといにしかならないだろう。ユリィが唇をかみしめたとき。


「お前さん、あの二人の友達なのか?」


 ひげ面で中肉中背のおじさんがユリィの隣に立っていた。彼の後ろには八歳ぐらいの少年が二人いる。一人は黒髪、もう一人は金髪だ。


「そ、そうです。あの二人は私と違って強いから」


 ユリィの答えにおじさんは眉を潜めてこう尋ねた。


「その魔力量で?ビビってるだけじゃないのか?」


 ビビっている、と言われてユリィがムッとする。どれだけの人間がエリスやエヴァンのように動けるというのか。


「ビビるも何も.......」


「お前と同じくらいの体格の女があれだけ動けている。珍しい魔力の流れだ。男も同様だな」


「二人は元素魔法を使えるんです」


 ユリィの言葉でおじさんが納得したような表情を見せる。


「どうりで人間であんなに動けるわけだ。それならオウボもかなり強いな」


 オウボがおじさんの方を振り向く。エリスとエヴァンも動きを止める。


「あ!ユーゴ!」


 このおじさんはどうやらユーゴというらしい。ユーゴはオウボに対して煽るように声を掛ける。


「最強の冒険者さんよ!そこの二人を倒すのに手間取ってたら、本命のこの子と戦えないぞ!」


「ワ~っ!なに言ってるんですか、私あんなのと戦えるわけないですよ?これで怪我したら責任とれるんですか?」


 ユリィがユーゴの襟元を掴んでグイグイ引っ張る。オウボたちが困惑する。


「何言ってんだこいつ」


「わ、分からない。何でユリィが本命なんだ?」


 ユーゴがユリィに尋ねる。


「自分の体にある魔力は認識しているな。それを全身に行き渡らせる感覚は分かるか?」


「魔法を使うことはあるけど.......って戦うことになってる⁉」


「風呂上りにジュースを飲むとお腹のあたりが冷たくなる感覚、あんな感じだ」


 意味の分からないアドバイスを受けながらも、ユリィは魔力を高めてみる。普段魔法を使う時は手に魔力を集中させる感覚はある。だからといって全身に行き渡らせることができるかと言われたら、という話である。


「お前さんもあの二人と同じ魔力の流れをしている。元素魔法、使えるんだろ?」 


 アルスたちにも同じようなことを言われたような気がする。ダンジョンに誘拐されて以降のことはあまり覚えていない。ユリィが目を閉じる。自身の魔力がどんどん膨らんでいくのを感じる。


「見えるか?」


 エヴァンが驚きを口にする。


「ああ、とんでもない魔力量だ。ユリィの奴、あんな力を隠していたのか」


 オウボの興味は完全にユリィに移ったようで、エリスとエヴァンの方を見向きもしない。


「やるじゃねえか。ユーゴが本命って判断するだけはある」


 ユリィがゆっくり目を開ける。


「お姉ちゃん、もっと気合入れないと」


「え?」


 黒髪の男の子が言うと、金髪の方もやいやい言い出す。


「はあ~!って気合入れないと強くなれないよ」


「気合って.......意味あるの?」


 ユリィが懐疑的な視線をちび二人に向ける。


「おい!しごいてやるからさっさとしろ」


 オウボが肩を回しながら言う。エリスとエヴァンが顔を見合わせる。


「どうする?」


「ユリィに任せよう。危なくなったら本気で止めればいい」


「それじゃあ被害が」


「人死にが出るよりかマシだろう」


「.......分かった」


 エリスとエヴァンがサッと離れる。その様子を見たユリィが声にならない悲鳴を上げる。『あの二人何してるの⁉私にやらせるんだ⁉』


 冷や汗がすごい。『あの人は容赦なく私を殺しにかかる。たとえ殺さないつもりでも貧弱な私じゃ絶対に死ぬ。流石に止めに入ってくれるよね、エリスちゃんたち、ほんとに頼むよ!』


「は、はあ~」


 顔は青ざめ、足を震わせながらちび二人の言うように気合を入れてみるが、何も起きない。ちび二人がまたやいのやいの言い出す。


「恥ずかしがってたらダメだよ。もっと自信もって」


「そんなんじゃ僕たちにも勝てないよ」


「うるさいなぁ.......恥ずかしいに決まってるでしょ!いい歳こいた人間は声を出して魔力高めたりしないの」


 ユリィが赤面しながら言う。ちび二人はニヤニヤしながらエリスのところへ走っていった。ユーゴもユリィの肩をポンと叩くと、ちび二人の後を追う。


「さあ、本命の実力とやら、見せてみろ!」


 オウボがユリィに飛びかかる。その瞬間、ユリィに生じた恐怖によって彼女の魔力を縛る『枷』が外れた。


「はあっ!」


 近距離での魔力放出を受けたオウボが吹っ飛ばされる。


「うおっ?な、なんだ」


 ユリィから紫のオーラが立ち上り、黒い髪がファサファサと靡いている。時折迸る電流は舗装された広場を傷つける。


「思ったとうりだ」


 ユーゴがニヤッと笑う。ユリィの身体から溢れ出る魔力は凄まじい。『恐らくは、雷の元素魔法か?とんでもない逸材がいたもんだ』


「やはり、ユリィも元素魔法を使えたか」


 エヴァンが腕を組みながら呟く。するとエリスが訝しげに尋ねる。


「やはりって、エヴァンはユリィが元素魔法を使えることを知ってたのか?」


 エヴァンは答えない。ただまっすぐにユリィを見つめている。


「面白れぇ」


 オウボがもう一度飛びかかる。その瞬間、目の前にいたユリィが消え、自身が上空に吹っ飛ばされたのを認識した。とんでもなく強烈な痛みが腹に広がっていく。身体強化魔法が無ければ風穴があいていたかもしれない。そう思わせるほどの一撃にオウボは恐怖を覚えた。


「見えたか?」


「か、辛うじて」


 エリスとエヴァンが啞然とする。オウボがドサッと落下した。


「ちいっ」


 オウボが顔を上げると、恐ろしく冷たい瞳のユリィが立っていた。


「ヒェッ!」


 オウボが後ずさって壁際まで寄って言い訳し始める。


「おいお前、今日は俺が武器を持ってなくて助かったな。俺の三節混が唸るのが見たくなかったら二度と悪さするんじゃないぞ!」


 ユリィが応戦の構えを取るとオウボは逃げ出した。


「う!腹の具合が!逃げるよ逃げるよあーばよっと!」


 あまりのスピードに全員があっけにとられる。ユリィが元素魔法を解除する。


「悪者はどっちよ.......はー、怖かった」


 ユリィがため息をつきながらエリスの元へ歩いて行く。


「無事で何よりだ」


「二人に見捨てられたのかと思ったよ、私」


「すごいじゃないか、ユリィ。私でもギリギリ視認出来るぐらいの速さだった」


「それ褒めてるの?」


 ユリィが苦笑していると、ユーゴが拍手をしながら近づいてきた。


「いやいや素晴らしかったよ。武器を持っていないとはいえオウボに一撃入れるとは」


「武器を持ってるあいつはもっとすごいのか?」


 エリスの問いにユーゴは肩をすくめる。


「自分で確かめればいいさ」


「私の力って」


「恐らく雷の元素魔法。かなり前に使い手が絶滅したって風のうわさで聞いた覚えがあるんだが、こんな所にいたとはな」


「ぜ、絶滅?」


 おおよそ人間に対して使う言葉ではないだろう。


「そうだ。アンペインという国に雷元素魔法使いがいたことは確かなんだが、戦争の途中でその国は滅亡したらしいんだ」


「戦争.......直近では百年前に起きたと記憶しているが」


 エヴァンが言うと、ユーゴは肩をすくめた。


「そういうことになってるな」


「そういうこと?」


 エヴァンが眉をひそめる。ユーゴはサッとあたりを見てついてくるように促す。


「ここでは話せない。聞きたいならついて来い」


 エリス達が顔を見合わせ、頷く。

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