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落ちこぼれの少女、世界最強を宿して無双する〜元素魔法が強すぎて世界の奴らがまるで相手にならないんだが〜  作者: エーカン
一章 英雄転生

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美味しい料理のプラドラへ

 二日後。冒険者コースの一年生ならびに、引率の教員の処分が言い渡された。内容は教員クレアの二年の謹慎、騒動に関わったエリス・ヴァ―ルデン、ユリィ・グランザール、他三名の除籍、冒険者コースの二年、三年の二ヶ月謹慎であった。


「はあ、やっぱりこうなるか。上級生までもが謹慎処分になったのには驚いたけどね」


 クレアが書簡をゴミ箱に放り捨てながら言う。ユリィがうつむく。


「先輩方とはこれでお別れなんですね」


「なに、いつでも会いに行ってやるよ」


 ニュイがユリィの頭に手を置いて慰める。エラが歯ぎしりする。


「シャリーの奴、巧いことやるって言ってたくせに」


「彼女も尽力してくれたはずよ。それにエヴァン君も」


 アリスがエラをなだめつつ、クレアの方を向く。


「アルス君たちはどうするんです?この前話してたように各国のギルドへ?」


「そうするしかないだろう。彼らの意見は尊重するべきだとは思うけどね」


 クレアがそこまで言ったとき、窓から伝書鳩が入ってきた。クレアが鳩の脚に括りつけられた手紙を外す。


「誰宛です?」


 アリスが尋ねる。クレアが宛名を見て、ユリィに手紙を差し出す。


「君のお父様からだ」


「わ、私のですか?」


 ユリィが困惑しながら手紙を広げる。


「親愛なる我が娘へ。父さんと母さんはブレイザード王国へ商談へ向かうことになった。かなり大口の取引になりそうで、当面はエンスウェード王国に戻れそうにない。学年が上がる際に必要な物があるなら、家の者に言いつけて揃えてもらいなさい.......」


 ユリィがあんぐり口を開ける。


「今家に帰ってもお父さんとお母さん居ないじゃん」


「メイドはいるんじゃねえか?てか夫婦で商談行くの珍しいな」


 ニュイがテーブルのバスケットに入ったパンを取りながら言う。


「大事な商談の時はいつもそうなんです。二人一緒なら上手くやれるって言ってましたから」


 ユリィが懐かしむかのように呟く。クレアが苦笑いする。


「ご両親に除籍になったこと、伝える算段はあるのかい?」


「荷物をまとめたらすぐに追いかけます。まだそんなに遠くには行ってないはず」


 ユリィが窓の外を見る。エラがエリスに尋ねる。


「お前はどうすんのさ。軍にでも入るのか?」


「いや、そのつもりはない」


 エリスが否定すると、エラが不思議がる。


「なんで、お前の実力だったらすぐに出世して.......そういやお前貴族だったな。領地に戻るのか」


 エラがパンにかぶりつく。エリスはそれも否定した。


「まだ領地に戻るつもりもない」


「え?じゃあ何すんの?まさか冒険者見習いで働くつもりか?」


「世界を見て回りたい。色々見て、自分が満足できたなって思ったら両親のところに帰ろうと思ってる」


 エリスが笑いながら言う。この世界は知らないことで溢れている。自分の気が済むまでそれらを見て、感じて、満足したい。自己満かもしれないが、両親はまだ私のことを疑っているだろうし、家庭内が微妙な雰囲気になるのもあまり好ましくない。


「ふーん、私も謹慎中何しようって思ってたけど、旅行するのもありだな」


「ばか、二ヶ月で何処に行けるってんだよ」


 ニュイがエラに突っ込む。クレアが立ち上がる。


「アルス君たちにも今後どうするか聞いてくるよ」






 数時間後、荷物をまとめたエリスとユリィはペガサスの馬車のもとにいた。エリスはユリィと共にブレイザード王国に向かわせてもらうことにしたのだ。せめて向こうに着くまでは一緒に居たいというわがままを叶えてもらったのである。


「エリス、ユリィ」


 エヴァンが二人に声を掛ける。振り向いたユリィがペコっと頭を下げる。エヴァンも気まずそうに会釈をする。


「尽力したんだが、これが限界だった。申し訳ない」


「そんな、謝らないでください」


「何か用か?」


 エリスが尋ねると、エヴァンは淡々とした口調で答える。


「俺も謹慎になった。無期限のな」


「無期限謹慎?そんなのあるのか.......」


「いつ復学できるか分からない以上、ここにいるより故郷に帰った方が良いかと思ってな」


「故郷って、エヴァン君エンスウェード王国出身じゃないの?」


 ユリィが驚くが、エヴァンは表情一つ変えない。


「俺はブレイザード王国出身だ」


 その言葉にエリスとユリィが仰天する。


「え?私たちはこれからブレイザード王国に向かうことになってるんだ」


「まさかエヴァン君の出身地だったなんて.......」


「そんなに驚くか?お前たちもブレイザード王国に行くんなら丁度いい、一緒に乗せてってくれないか」


 エヴァンの提案にユリィが頷く。


「構わないけど、エリスちゃんはどう?」


「構わないよ」


 そもそもエリスに決定権はない。ユリィが言ったことは絶対なのだ、常識の範囲であるなら。ユリィならそんな心配はないと思うが。


「そうか、ブレイザード王国までよろしく頼む」


「おーい、エリスー!ユリィー!」


 また二人を呼ぶ声が聞こえる。振り向くと、アルスがこちらに走ってきていた。


「アルス、どうしたんだ、そんなに急いで」


 エリスが怪訝そうに尋ねると、アルスはゼエゼエ息を切らせながら答えた。


「いや、お前らもう行っちまうんだろ?だから最後に三人の代表として挨拶を、と思ってな」


「そういえばアルスたちはどうするんだ?」


「俺たちはクレア先生の師匠?みたいな人に会いに行くんだ。その人に紹介状を書いてもらってどっかの国のギルドに転がり込むつもり。先生いわくその人勇者でドラゴンも倒してるみたいだし、そのまま弟子入りするのも悪くないかなって」


 アルスが額を流れる汗をぬぐいながら言う。除籍処分を受けたことにショックを受けた様子は微塵も感じられない。


「俺とシャリーの力が及ばなかったせいでこんなことに.......すまない」


 エヴァンが頭を下げるが、アルスは肩をすくめる。


「謝んなよ、みんな夢を叶えるのが少し早くなるだけだ」


 エヴァンが顔を上げる。


「むしろ感謝してるくらいだぜ、お前とシャリーがいなかったらどうなってたか分かんないんだし」


「.......そうか、ありがとう」


 エヴァンが微笑む。


「エヴァン君って笑うんだね。かたーい印象だったけど」


 ユリィがエリスの耳元で囁く。エリスは苦笑いするしかない。


「俺だって人間だ、笑うさ」


 エヴァンが無表情で言い放って馬車に乗り込む。


「エリス、ユリィ、またな」


 アルスがエリス、ユリィと握手を交わす。


「アルスも元気でな。コールとガイン、先生にもよろしく伝えておいてくれ」


「おう」


 アルスは頷くと走り去っていった。エヴァンが馬車の窓から顔を覗かせる。


「ブレイザード王国は遠い、ペガサスでも二日はかかる。余裕がないなら急いだほうがいいぞ」


 エヴァンの忠告を受けた二人が馬車に乗り込む。馬車の中は思ったより広く、二段の寝台が馬車内の前後に設置されている。


「おお、一昨日乗ったやつとはまた違うな」


 エリスがベッドに荷物を載せながら言う。


「一昨日寄越したのは輸送用のだからな。これは旅行用の奴なんだろう。シャリーさまさまだな」


 エヴァンが肩をすくめて言う。馬車が傾き、ぐらっと揺れる。すぐに馬車の下部に設置された魔道具が起動し、車体を安定させる。


「シャリーが用意してくれてたのか、あいつ、案外いい奴なんだな」


 エリスが言うと、エヴァンが鼻で笑う。


「お前のこと、かなり気にしてるみたいだぞ」


「え?何で?」


「今まで負けなしのあいつに勝ったんだ。ライバル視されてるんだろ」


 エヴァンがそう言いながら荷物を確認する。


「エリクサーはあるだけ持ってきたし、魔道具の材料もいくらかある」


「魔道具も作れるの?」


 ユリィがエヴァンの横に腰掛けて尋ねる。


「いや、俺じゃなくて両親が作るんだ。ブレイザード王国で魔道具店を営んでいるんだ。自分で言うのもなんだが、品質はブレイザード王国でもピカイチだと思う」


 エヴァンが地図を広げる。エリスとユリィが地図を覗き込む。


「俺たちの行き先はブレイザード王国だ」


 エヴァンの指が地図を走る。


「ただ今回はプラドラという小さな街に寄る。この街は料理が美味しいと評判でな、晩御飯を食べるにはもってこいだろう」


「あ、聞いたことあるよ。オムライスだっけ?卵のお布団かけるやつだよね」


 ユリィが目を輝かせる。エヴァンも笑みを浮かべる。


「そうだ。この世のものとは思えない舌触り、香り、味にやられて昇天した者もいるという噂だ」


「えぇ.......流石に誇張しすぎじゃないか?」


 エリスが苦笑いする。食事は人を豊かにするとは思うが、流石に昇天した者はいないだろう。それほどに美味しいのは分かるが。


「食べてみないと分かんないでしょ、ホントに死ぬかもしれないじゃん」


 ユリィがニヤリとしながら言う。エリスが肩をすくめて向かいのベッドに座る。天井を見上げてぼんやり物思いにふける。『よく考えたら新学期が始まってから一か月も経たないうちに学園を追い出されてしまったのか』


 私がエリス・ヴァ―ルデンの体に転生していなければシャリーに勝つことも、ロンドベル家に標的にされることも、ユリィたちが除籍されることもなかったのではないだろうか。一連の事件の発端は私とも言える。


 なぜ私が再びこの世に呼び戻されたかは分からない。考えるだけ無駄だろう、本能的にそれが分かる。


「どうしたの?」


 ユリィが怪訝そうにエリスの顔を見つめる。エリスは首を横に振って横になる。


「プラドラに到着するころには日も暮れる。晩ご飯の時間にはもってこいだろう」


 エヴァンがカバンから魔導書を取り出し広げる。ユリィも興味深々で覗き込む。こうして三人は思い思いに過ごし、プラドラに到着するのを待った。






 眠りについていたエリスは誰かに揺り起こされた。


「んん.......もう着いたのか?」


 エリスをユリィが無理矢理引き起こす。


「早く起きて、もうプラドラ着いてるんだから」


「起きてるよ」


 エリスが軽く伸びをしてベッドから降りて靴を履く。軽く昼寝をするつもりだったが眠りすぎたらしい。外はオレンジに染まっている。馬車の外に出ると、エヴァンがペガサスに草をあげていた。


「お、やっと起きたか。到着してからかれこれ三十分は経ったぞ」


「げっ、そんなにか?ならすぐに起こしてくれればよかったのに」


 そう言うエリスにエヴァンが笑いかける。


「いや、この時間帯からじゃないとディナーは食べれないんだ。ちょうどいいタイミングで起こしてくれたさ、ユリィは」


 ユリィがお腹を抑える。


「お腹すいた!早く!」


「そんなに急がなくてもレストランは逃げないぞ」


 笑いながらエヴァンが先頭に立って歩き出す。プラドラは小さな街だが、美しい街並みを有している。木造の異国情緒溢れる建築物やレンガ造りの建築物が理路整然と並んでおり、歩道も色とりどりのレンガで舗装されており、ただ歩くだけでも気分が良くなる。


「そういえばレストランってどこにあるんだ?」


「冒険者ギルドに併設されてる。この街一番の料理人が働いてるそうだ」


 エリスとエヴァンが会話を交わす。


「あ、あそこかな?看板に冒険者ギルドって書いてある」


 ユリィが前方を指差す。確かにかなり大きめの建物がそびえており、冒険者らしき人間も出入りしている。


「ご名答」


 エヴァンが足を速める。こうしてエヴァンたちは冒険者ギルドの戸をくぐった。


「依頼受注ですか?それともお食事ですか?」


 受付嬢が尋ねる。


「食事だ」


 エヴァンが答えると、受付嬢は右の方を示した。


「レストランは右に進んでお好きな席にお座りください。ごゆっくり」


「ありがとう」


 三人はそのまま右に進んでいき、レストランの端っこの席に着席した。ユリィが目を輝かせながらメニュー表を開く。


「どれにしよっかなー.......決められないよ」


「オムライスにしないのか?」


「うーん、オムライスもいいけど、ビーフストロガノフも捨てがたいんだよね」


 うんうんと悩むユリィを見ながらエヴァンがため息をつく。


「二つ頼めばいいだろ」


「え⁉いいの?でも食べきれなかったらもったいないし」


「エリスとシェアすればいいだろ。エリスがビーフストロガノフを頼んでユリィがオムライスを頼めばいい」


「おいおい、私も食べたいものがあるんだが」


 三人がやいのやいの言い出す。衆目がそちらに集中する。


「見たことない子らね。冒険者っぽいけど、あいつに絡まれないかしら」


「言ってやったほうが良いか?流石にかわいそうだろ」


 そんな囁き声をエリスの耳は捉えていた。エヴァンとユリィにそっと耳打ちする。


「厄介な奴が来るみたいだ、気を付けて」


「は?どういうことだ?」


 エヴァンがメニュー表から目を離す。ユリィも首を傾げる。


「厄介ってなにが?ウェイターさんのこと?」


 先程までガヤガヤしていたレストランが静寂と異様なプレッシャーに包まれる。筋骨隆々の男がこちらに歩いてくる。エリスとエヴァンが警戒する。


「ふっ、お前ら、見たことねえ顔だな」


 男が不敵な笑みを浮かべてエリスたちを見下ろす。            

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