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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

別の世界ではただの日常です

スマートフォン命

作者: 茅野榛人

 すっかり外も暗くなり、満腹にもなった俺達は、幸せいっぱいの状態でホテルの部屋に帰って来た。

「いやー美味かった!」

「滅茶苦茶美味かったな!」

「苦しい……」

「三回もおかわりしたんだから当然だろ」

「つい調子に乗ったわ」

「俺風呂入るわ」

「ん……分かった……」

 シャワーで今日かいた汗を全て流し、風呂で身体を温める。

 すると突然部屋の方から何かしらの破裂音が聞こえた。

 まるで、大きめの水風船を破裂させた時ような、水音を含んだ破裂音だ。

「どした? 何した?」

 友人に声をかけるも、返事が返って来ない。

 出かけたのか? だとしても先ほど聞こえてきた水音はどう説明する……。

 俺は風呂を終えて、部屋に戻った。

 身体が硬直した。

 部屋は真っ赤に染まっており、ベッドには真っ赤になって横たわっている友人がいた。

 部屋中には、血のにおいが立ち込めていた。

 俺は直ぐに救急車を呼んだ。

「大変残念ですが……お亡くなりになられています……」

「そんな……」

「ただ……」

「ただ?」

「落ち着いて聞いてほしいのですが……」

「はい……」

「この方……胸部に巨大な穴があいているんです」

「……はい?」

「まるで……爆弾が爆発したかのように……」

「……」


 あの旅行をした日から数日が経過した。

 友人の死には謎が多すぎた為、ニュースになった。

 しかしあの謎の死は、友人だけに留まらず、世界中で発生し始めたのだ。それも……友人が死んでから……。

 俺は度々スマートフォンでニュースを見るようになった。

 今日もインターネットでニュースを見ていると、こんな記事を見つけた。

『謎に包まれた死の連鎖の共通点が判明』

 俺は直ぐにその記事を読んだ。

『亡くなった方々は全員、充電の切れたスマートフォンを所持、もしくは破損したスマートフォンを所持していたとの事』

 スマートフォン……友人のスマートフォンは捜査の為と警察が預かっている。

 謎の死とスマートフォンが一体どう繋がるのだろうか……。


 休日、たまには散歩をしてみようと、公園を歩いていた。

 暫く歩き、疲れてベンチで休んでいると、向かいのベンチに座っている親子が目に入った。

 母親の方は、息を切らして休んでいるようだった。

 子供の方は、スマートフォンを横にして持っていた。

 恐らく、子供に母親のスマートフォンを渡して、インターネットの動画を見せているのだろう。

 その時だった。

 パン!

 突然母親の胸部が破裂し、風穴があき、母親の周辺が真っ赤に染まった。

 公園にいる人達は悲鳴を上げ、パニック状態になった。

 まさか……子供の持っている……あの母親のスマートフォンの充電が切れるかしたが為に……いや……そんな馬鹿な事……。

 その時直ぐ近くに立っていた女性が口を押えようとした時、手に持っていたスマートフォンを離してしまった。

 俺は嫌な予感がして、落ちて行くスマートフォンを、スライディングしてキャッチした。

「大丈夫ですか?」

「あ……あの……気分がちょっと……」

「肩捕まって下さい」

「あ……ありがとうございます……」

 俺は女性をベンチに座らせ、俺も女性の隣に座った。

 救急車を呼び、蹲る女性の背中をさすりながら話をしていると……。

「お礼に……連絡先……教えます」

「いや、そんなお礼されるほどの事をしたわけでもないですし……」

 断ろうとしたが、既に女性は手帳にペンを走らせていた。

 走らせた部分を切り取り、俺に差し出した。

「私なら大丈夫なので……これ……私の携帯の電話番号と……私のSNSのユーザー名です」

 女性の目は、心なしか輝いているように見えた。

 俺はその輝きに圧倒され、紙を受け取った。


 公園で女性と別れ、家に帰宅すると、スマートフォンに電話がかかって来た。

 表示された名前は、俺の母親の名前だった。

「もしもし?」

「あ、もしもし! 大変なの!」

「何? 何があったの!?」

「夫が……夫が!」

「え? 父さんがどうかしたのか!」

「う……う……うん! ねえ……こっち来て!」

「分かった! 直ぐそっち行くから!」


 慌てて実家に帰ると、いきなり変なにおいに包まれた。

 血のにおいだった。

 俺は最初に居間に入った。

 そこには母がソファで怯えていた。

「母さん!」

「と……突然……変な破裂音みたいな音が聞こえてきて……聞こえた方向に向かったら……夫が……」

「父さんは!?」

 母は首を横に振った。

「そんな……破裂音は……どこから聞こえてきたの……」

「私達の……寝室……」

 俺は直ぐに両親の寝室に向かった。

 そこは辺り一面真っ赤になっていた。

 俺は直感で、スマートフォンの充電が切れた、もしくは破損した事が原因だろうと考えた。

 何時しか世界は……スマートフォンと持ち主の命が繋がった世界になってしまった……確証は無いが……亡くなった人の共通点である以上……そう考えざるを得ない……。

 部屋に戻ると、母は誰かと電話をしていた。

 その時だった。

 パン!

 俺と居間が真っ赤に染まった。


 相続登記を終えて、家に帰って来た。

 疲労に塗れた俺は、ショックの気持ちを抑えられず、前に貰った紙に書かれた電話番号に電話をした。

「……もしもし?」

「もしもし……俺です……前に公園で会った」

「あ……ああ! あの方でしたか! どうしました?」

「取り敢えず……家に来てくれませんか……」

「……わ……分かりました!」

「今から言う場所で待ち合わせしましょう」

「OKでーす!」

「言いますね……」

「はい!」

 場所を読んでいる途中で、電話が切れた。

 俺は直ぐにかけ直したが、繋がらなかった。

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