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宇宙船を貰った男

宇宙船をもらった男、もらったのは☆だった!?5、デザインドチャイルド

作者: 山口遊子

先代マリアさん視点です。


 アギラカナの位置からそれほど遠くない地球という惑星に、アーセンの血を濃く残す人物を発見した。そして、いまその人物、ヤマダケイイチが私の目の前でこのアギラカナの艦長になろうとしている。


 これで、これでやっとアギラカナが、バイオノイドがアーセンのくびきから解放される。



「これより、ヤマダ・ケイイチの艦長就任式をおこなう。ヤマダ・ケイイチは前へ」


「はい」


「アーセン連合王国国王代理権者、アギラカナ・コアがヤマダ・ケイイチをアーセン連合王国1級市民と認め、惑星型宇宙艦アギラカナ艦長に任命する。さらに、ヤマダ・ケイイチをアーセン連合王国宇宙軍大将に任ずる。ヤマダ・ケイイチのコア認証を行なうのでこの認証板に手を」


 ヤマダ・ケイイチが認証版に手を置きコアがその遺伝子をアーセンのものと正式に認証した。式典員がヤマダ・ケイイチの軍服の襟に宇宙軍大将を示す3個の金ボタンを取り付けた。


「それでは、閣下、皆の方へ向けて手を振ってください」


 山田艦長が手を振り、会場に集まったアギラカナの乗組員たちが拍手した。皆もこのことの意味を分かっているようだ。


 ……。


 その後、式は滞りなく進み、わたしはアーセン憲章を破棄し、新たにアギラカナ憲章が発効したことを皆に告げた。


 そして式典は終了した。



 アギラカナ憲章により、今後生産されるバイオノイドには生殖能力を与えることが可能になる。新バイオノイドたちは新たな種となるのだ!


 いまアギラカナで活動しているバイオノイド、休眠しているバイオノイド、全てが旧世代バイオノイドとなるわけだがさみしいわけではない。全てのバイオノイドたちが喜びで満ち溢れている。これからわたしは忙しくなる。艦長の血をさらに強化し、考えられる最高のアギラカナ艦長を作り上げる。そのため艦長の配偶者となる女性バイオノイドを設計するのだ。この宇宙からゼノの脅威を取り去ることも夢ではなくなる。


 ……。


 艦長の配偶者の設計にあたり、わたしは生まれてくる艦長の子、次代の艦長に一つの特性を与えることができることに気づいた。設計自体はコアの力を借りればそれほど難しいものではなく無事終えることができ、設計に基づいた胚を人工子宮で成長させ、十分成長した段階でその他の嬰児とともに育成過程に入れた。


 嬰児は幼児に育ちそして少女に育っていった。その間わたしの後任としての特殊器官も設計通り成長している。


 その間アギラカナはゼノの主星を発見し、その星に向かって超空間航行に入っていた。


 彼女は陸戦過程に進み士官候補として評価されるまでに成長した。そしてわたしは彼女をわたしのもとに呼び、彼女の役割を全て話した。


「あなたは今日からわたしのもとで次代のマリアとしての教育を行ないます。もちろん艦長についての細かな説明も行ないます」


「はい!」


「よろしい」


 これまでの彼女の行動から、彼女はわたしの設計から外れることなく成長していることは分かっている。


 しばらくしてアギラカナがゼノの主星を破壊した。艦長はわれわれが見込んだ人物だったが予想をはるかに超えてしまった。わたしの代でこの日が来るとは艦長がこのアギラカナにやって来た時には夢にも思っていなかった。しかし、主星は破壊したものの宇宙にはそれこそ何億、何十億のゼノが生きている。脅威が去ったわけではない。


 それから一カ月。彼女は次代のバイオノイドとして成人した。


 艦長に彼女を紹介するころあいだ。



 艦長室に入ると、艦長が暇そうにしてコーヒーを飲んでいた。


 コーヒーは艦長の趣味なのでとやかく言わないが、わたしは少しもコーヒーが美味しいとは思っていない。


「艦長。いつも通り暇そうですね」


「まあ、お互いさまでしょ」


「あら、わたしはこう見えても、艦内のことでいつも忙しくしてるのよ」


「そういうことにしておきましょう。わたしが暇なのは見ての通りですけどね」


「それで、今日ここにわたしが来たのは、そんな暇を持て余している山田艦長に朗報があって来たの」


「朗報? なんですか朗報って?」


「先日、アギラカナ憲章下で生まれた第一期のバイオノイドが成人したでしょう。それで、その中の陸戦課程を終えたを艦長の秘書にどうかと思って連れて来たの。どう? いい話でしょ」


「よしてくださいよ。この通り暇してるわたしに秘書なんて不要でしょう」


「そうはいってももう連れて来ちゃってるの。今から帰すのは可哀そうじゃない。それに艦長のインスタントコーヒーの淹れ方まで教え込んでるのが無駄になるのはもっと可哀そうよ」


 インスタントコーヒーの淹れ方を教えているというのは嘘だがそのくらいの嘘はいいだろう。全バイオノイドで艦長に嘘が吐けるのはわたしと、わたしと同じ能力を持つ彼女だけ。


「わかりました。それじゃあそのを呼んでください」


「マリアいらっしゃい」


 マリアは艦長の趣味に合わせて黒髪だ。わたしと違い軍人なので髪は短い。


「え、このはマリアさんと同じ名前なんですか?」


「そう。

 わたしみたいな軍属は軍人と違って肉体を酷使するような訓練をしていない分若く見えるでしょうけど、わたしはもうすぐ百歳になるの、そしたらマリアを卒業するつもり。山田艦長と会えて地球の文化に触れることも出来てほんと楽しかった。卒業する前にゼノもたおせたし。

 それにね、私たちバイオノイドは、山田艦長が来るまでは、仕事をするのが楽しいしそれが生きがいだったの。逆に言えば、それだけしかなかったの。でもいまは仕事が一番なのはかわらないかもしれないけど、いろんな楽しいことや生きがいがバイオノイドたちの中に生まれてきてるのよ。みんな山田艦長のおかげ。ありがとう。

 この子がわたしの次のコアのアバターのマリアになるから可愛がってあげてね、わたしのことは忘れてもいいから。……」


 そこまで話してふと自分がいなくなった後艦長に忘れられるのはとても悲しいことのような気がした。

「でも、やっぱり忘れられるのは少し寂しいから艦長の私邸の庭にこのハンカチを埋めてくれる。そこに桜の木の苗を植えてくれればもっとうれしいわ」


 悲しいという感情が自分にあることに驚きながら、自分でも気づかぬうちにおかしなことを艦長に向かって口走っていた。



『さようなら、山田艦長』


 わたしは、地球産の白いハンカチを艦長に渡してマリア(・・・)を置いて艦長室から自分の部屋に帰っていった。




『宇宙船をもらった男、もらったのは星だった!?』

https://ncode.syosetu.com/n6166fw/

今回は、山田圭一とマリアの子、山田明日香がいかなる子なのか。についての解説的説明でした。

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山口遊子さん、こんにちは。 「宇宙船をもらった男、もらったのは☆だった!?5、デザインドチャイルド」拝読致しました。  運要素の、設計段階を加えたエピソード。先代のマリアがいなければ、こうした発想は…
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