歓迎会3
「む。遠くから見ていたが一人のようだな」
「なにも問題はありませんが」
四月一日に遭遇する。俺に気づいて何かを掬っていたが手を止める。届かないのか台座にのっている
見ていたのか一人でいることには気づいているようだ
「ああ、問題はない。が、学校側としては親睦会という名目なのでほかの生徒とも話してほしいものだ」
「そう行動するもしないも生徒自身が決めることですよ。それはそうと四月一日先生はいったい何を・・・」
俺は四月一日が取ろうとしていたものを見て動きがとまる。それはおでん。今さっきまで温めていたのかまだグツグツと音がしている。春におでんというのも微妙なものだがそもそも四月一日の服装からして暑いのになんでそんなに熱いものを取ろうとしているんだろうか
「ただのおでんだが?」
そういいながら大きめの器に卵や豆腐などを入れていく。めっちゃ熱そうだ
「寒がりなんですか?」
「ん?いやそんなことはないぞ」
ウソつけ、と思いながら通り過ぎ味噌汁を入れる
「お前は味噌汁か。」
「それよりそんなにからし必要ですか」
ふつうはお椀の縁に少しつけるだろうが四月一日は小皿にからしを山盛りに用意していく。皿に七味唐辛子をそのからしの山に振りかけていく
舌がマヒしているんじゃないだろうか。俺には無理だ
「-挨拶だけだからそんなに面倒じゃないから」
「-何を言ってるんですかぁ。そう言ってこの前も」
席に戻ろうとすると廊下側から騒がしく声が聞こえる。四月一日も気づいたようで入口の顔を向ける
「ほら着いた。はいシャキッと」
「するわけないじゃないですか~。あー。帰りたーい」
扉が開き、式の時に見た校長先生が肩を誰かに貸しながら入ってくる。それとともに数人の生徒が入ってきた。そして生徒会長を見つけた
「あれは?」
「養護教諭だな。とりあえず顔合わせぐらいはしておこうという考えなのだろう。周りの生徒は生徒会のメンバーだな。全員ではないようだが。・・・それより理事長もいないのか?」
「急用が入ったとか?」
「参加するとは聞いていたんだがな。お前の言うように急用と考えるのが妥当だろう。とりあえず席に戻った方がよさそうだ」
そういうとトレーを持って戻っていってしまった。子どものような見た目のせいか女子生徒に好かれているようで女子生徒しかいないテーブルのほうに歩いていく。・・・俺も戻るとしよう
「はい、すいません。皆さん少し時間をいただきたい。こちらを向いてください。」
マイクを通して校長の声が届く。生徒たちは手を止め入り口付近に立つ校長先生に体を向ける。いつのまにか傍には四月一日も控えていた。引きずってきた保険医は椅子に座って下を向いている
「食堂に来る際に通ったはずですが怪我や体調の不調など何かあった際は保健室にいる彼女に言ってくださいね。もちろん彼女が不在の際はほかの先生でもいいですよ。とりあえず今日は顔合わせに連れてきただけですから、では挨拶を」
マイクを渡すが彼女は動かず、マイクを受け取ろうとしない
「あれ、石谷さん?・・・寝るんじゃない」
ゴッという低い音が響く。というか今マイクで殴ったよ。容赦ないな
「イッタ~、何するんですか」
両手で殴られたと思う個所を抑えて呻きながら涙目で訴える
「起きたか?挨拶ぐらいはきちんとしなさい」
「はいはい、しますよ。よいしょっと」
椅子から立ち上がる眼鏡をかけた女性。まず目に入ったのは着ているTシャツというか文字である。白いTシャツに黒い糸で文字が刺繍されている【働きたくない】と
それに気づいた数人の生徒から笑い声が漏れる
「あれ、私面白いこと言ってないよね。」
「君の着ているものだろ」
問いかけに校長はあきれる
「カッコいいでしょ。さらに今着ている上着コレの後ろにも文字が書いてある!」
シャツをもってよく見えるように広げる。さらに後ろを向き生徒にその文字が見れるようになる【惰眠 貪る】
すごいな。え、先生なんだよな。
「私の名前は石谷香奈。ちなみに服はショッピングモールにある〈キゴコチ〉っていう服屋で仕入れてます。旦那が店長してまーす。
文字入りのやつは他にもあるから気になるならいってみてね。よし宣伝終了。」
「いや、最後のは言っちゃダメだろ・・・ともかく何かあった時は彼女のいる保健室に」
「仕事したくないから体調管理はしっかりしてねーいった!」
あ、また殴った
「どれだけ気を付けていたって体調を崩すことはある。」
「はーい、まったく暴力的なんだから・・・もう戻っていい?」
「ん?昼食は食べないのか」
「そんな時間あったら寝るね!」
「お、おぉ。立場的にお前は健康を気にする立場なんだが・・・わかった、もういい。」
気圧された校長を置いて頭をさすりながらさっさと出て行ってしまった
「うひぃ~。終わった終わった。さーて惰眠惰眠。」
「聞こえとるぞ。」
「ご勘弁を~」
廊下での失言が校長の耳に届きじろりとにらむ。石谷先生は走って逃げて行った。
「あ~。ああいう先生なんだ。ただ仕事はするので、まぁなんだ。何かあったら彼女を頼りなさい。」
やや疲れたようにそういう校長先生。普段からああなんだろう。




