皇太子の尻拭いをさせられることになった
あの後、顔が真っ赤になりながらも不能と話したことによって一応信用されたが、信じきって貰ってもないないために、皇城で戦後処理やその他にも仕事の多い第一皇子の補佐として働くことになった。治安に関してもだいぶ悪化しており、第二、第三騎士団がまとまって対策するので、都合が良いのだそうだ。その過程で皇女たちとも接触を持たなくてはいけないそうだ。『次女は貴方のファンなのよ!』と皇后が言っていた。…なんというか、申し訳ない気持ちになった。
今回良かった事と言えば、騎士団は休みを交代で多めに取ることが許されたことと、かなりの大金を貰えることになったことだろうか。一般的な伯爵クラスの邸宅を5つ買えるくらいは貰えるらしい。ずっと騎士団宿舎暮らしだったからな。家が欲しい…。
「団長!!」
「アイリス嬢。」
壇上から降り、一息ついていると、アイリスがやってきた。他の部下どもは第三騎士団とワイワイやっている。
…まったく、一応貴族が集まっている場であるというのに。
「先程は、本当に申し訳ありません。私のせいで…。」
いつも溌剌としたアイリスとは思えないほど俯き、申し訳ない、恥ずかしいと言った表情をしている。それに、ずいぶんとやつれているし、くまもひどい。
「皇太子殿下の失態だろう。貴殿が気にすることではない。私が不在の間、良くやってくれたな。」
頭を撫でたかったのだが、せっかく綺麗に整えられている髪の毛を崩すのもどうかと思い、とりあえずアイリス好みのジュースを差し出した。
帝国では酒を飲むのに年齢制限はないのだが、やはり我々は子供だからな。
「あ、ありがとうございます。」
何故かアイリスは顔を赤くして、さらに俯いた。
…やはり、疲れているのだろう。
「貴族令嬢は大変だな。常に着飾って礼儀正しくして、高度な教育も受けなければいけないのに、あんな馬鹿の世話までさせられるとは。」
困った困った、と眉を下げて笑いながら馬鹿を強調していうと、アイリスもクスクスと笑った。
「まさかあそこまでとは思っておりませんでした…。それに、スキャンダルまで抱えて…。」
「暫くは噂話に困らないだろうな。」
周りでヒソヒソと私達を見て噂する貴婦人達を見る。
皇太子の新しい婚約者はあの少女になるのか、とか、廃嫡するのだろうか、と言った噂の中に、アイリスが皇太子を満足させられないから、とかアイリスと私が実は恋人関係なのではというふざけたものも混じっていて不愉快きまわりない。
ウェーイ!、と遠くで部下達の盛り上がる声が聞こえる。
「我々も周りの婦人方にヒソヒソと噂されては疲れてしまう。猿どものところにでも行って、落ち着かせて来ようか。エスコートしよう。」
「…確かに、少し落ち着いて頂いた方が良いですね。」
陰口に耐えられるほど元気な状態ではなかった私達が部下達のもとに向かうと、第一皇子とも鉢合わせることになった。というのも、私の部下にだる絡みしていた。
「あ。」
「…おや、アイリス嬢とベルツェ団長じゃないか。先程は愚弟がすまなかったね。」
部下の1人にお酒を押し付けていたエミールと目が合うと、馴れ馴れしく声をかけてきた。
先程とはずいぶん違った感じだが…二重人格の方なのだろうか…?
「いえ、お気遣いなく。」
アイリスはダル絡みするエミールに答えると、唖然としている私を見て、小声で「ちょっとエミール様はおかしいんです。」と言ってきた。
「…聴こえちゃうんだけど…。」
いかにも、ぴえんというような表情だ。
なんとなく腹が立つ。
「だ、団長〜!助けて下さい〜!殿下が俺に酒を強要してくるんですぅ〜。」
どう返そうかと考えていたところ、下に転がって酔いまくっている部下が泣きながら脚にすがってきた。
「うわっ!キモい、どけ。」
「あん!」
自分の父親くらいの歳の部下を蹴り上げると気持ち悪い声をあげる。
「殿下、私の部下を酔いつぶして遊ぶのはやめていただけますでしょうか。」
怒りを込めていうと、
「俺の部下はみんな酔い潰れてしまってね。」
とほざきやがった。
アイリスももはや呆れて物も言えない様子だ。
というか、酔った部下たちにダル絡みされている。
「アイリスぅ〜、久々に団長が帰ってきて嬉しいよな〜。」
「さっきは王子様みたいだったよなぁ。」
アイリスも私も第一皇子と酔った部下達のせいで、さらに社交界での評判を落とすこととなった。




