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皇太子の尻拭いをさせられることになった…



 皇家には2人の皇女がいる。

 第一皇女クレシア・ブランタールは第二王妃の娘であり、シザールより1歳年下の17歳で、アイリスとも仲が良いと聞いたことがある。第二王妃はすでに亡くなっており、第二王妃と皇后の仲が良かったこともあってクレシアは皇帝と皇后の養子となり、良好な家族関係を築いているらしい。

 第二皇女ビビアン・ブランタールは皇后の実の娘で15歳であり、ブランタール皇室の特徴とも言える独特の翠色の瞳が特に色濃く遺伝されていて、将来は社交界の花になるだろうと言われる美しい容姿をしているらしい。


 この2人の皇女のどちらかと結婚しろ、という事である。


 …面倒なことになった。


 皇帝と皇后、第一皇子の目が私に集まっている。


 そのまま、私の隠している事が全て暴かれてしまうのではないかという恐怖感に襲われる。

 

 7歳のとき、青竜を倒した時と同じくらいには心拍数が上がっている。緊張がここまで心臓に影響するとは。


「…私は卑しい身分でございますゆえ、相応しくないかと思われます。」


 皇族の言葉に逆らうのはまずいが、あくまで命令ではなく提案だったので、とりあえず言い訳をして断る。


「多くの貴族家も元は皆と同じ庶民であるではないか。国に尽くして貴族となるのだから、其方も貴族とならば良い。伯爵位、いや、侯爵位を授けよう。」


 いやに粘るな…。


「私を皇族に迎え入れようというのは、この度の婚約破棄騒動のためでしょうか。」


 シザールとアイリスの婚約は表向きはアイリスの父親であるロベリク公爵の強い希望という事になっているが、実は娘を溺愛している公爵が皇族と娘を強制的に結婚させたがるとは思えない。まぁ、公爵は一見冷酷なのもあって、アイリスは父親が自分に愛情を持っていないと思っているだろうが。


 ロベリク公爵は今回の騒動を聞いてすぐに婚約を破棄させるだろう。

 元々、皇帝と皇后がが政治に対する皇后の実家の影響が強まりすぎるのを抑えるために公爵に頼み込んでますなんとか成立した婚約だ。


 だから、皇帝としては自分の引退後にシザールを支えるためにもアイリスの後ろ盾もある私を身内に引き入れて置きたいのだろう。この調子だと、皇后も自分の実家をあまり良く思っていなさそうだしな。


 …エミールが皇太子になれば良いのに。

 なんていう訳にもいかないしな…。


 しかし、残念ながら、私の体は女である。

 どう考えても、皇族を騙したなと死刑になる未来しか見えない…。と言って、今ここで自分が女であると明かしたらシザールと婚約させられかねない。それだけは絶対に嫌だ。


「ほう…。なかなか鋭いな。賢いと聞いていたが、やはりなかなかのものだ。どうだろう、いきなり婚約しろとは言わないが、暫く王宮で過ごしてみないか?」

「そうね。実際に娘達と会う機会があった方が良いわ。やっぱり婚約はお互いを知ってからの方がいいもの。」


 どんどん話が進んで行く…。


「…ベルツェ団長、恋人はいないのか?」


 大変そうだな、というような顔でエミールが助け船を出す。


 しかしこれはどう答えるのが正解なんだ…?

 嘘をついてでも、逃げるべきだよな…?でも、恋人がいないことくらいとっくに調べられているだろうな。

 それに、誰かの名前を出してもその人に何かあったら大変だ。私は、皇帝の人となりをよく知らないから、踏み込んだ手は使わない方が良い。


「……か、神に私の心は差しあ「あら、第二騎士団では神の加護を否定して自力で能力を上げるべきという反信仰的な風潮があるそうね?噂によると、ベルツェ団長が言い出したことなんでしょう?」……。」

「……いえ、神ではなく独身となり、国にこの身を「では国のために娘と結婚するのはどうかしら?」……。」


 やばいぞ。どんどん詰められていく。

 あまり使いたくなかった手だが、これなら…!


「じ、実は私は不能なんです…。女性にトラウマがありまして、その日から、めっきり…。」

「「「………。」」」


 物凄く、可哀想なものを見るような視線が集まった。


 …何故か、凄く不本意であった。









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