1年ぶりに帰還したら部下が断罪されだしたのだが
「誰だ!」
シザールは怒りを露わにして叫んだ。
傍観していた貴族連中が一斉に私を見る。
それもそうか。私、つまり第二騎士団団長ベルツェは、世界トップの魔法の実力があるとされ、氷魔法を得意とする魔導師だからだ。さらに、アイリスの所属は第二騎士団であるから、私が彼女の味方をするのも当然だと考えたのだろう。
アイリスは、なんで!?とでも言うような泣きそうな表情をしているし、シザールはギロッと私を睨みつけた。
「貴様か。」
…困った。そもそも私は、帝国に帰還したばかりで状況も碌に把握していないのだ。
1年前、帝国は2つの戦線を抱えていた。うち1つは帝国の北に位置するガルート王国との戦線であり、この戦線が第一皇子が率いる第三騎士団の活躍により大幅に北上していた。帝国の拡大に危機感を覚えた諸外国は、帝国の南に位置するもう一つの戦線、リーヴ王国との戦線に戦力を分配させるためにリーヴ王国に手を貸した。
辺境伯家の所有する軍と分割された辺境伯の支持下にあった第一騎士団の戦力だけでは戦力不足となった国の幹部が第二騎士団に援助要請を出した。
魔物は森や山の中の洞窟や湖など発生源があり、第二騎士団は魔物を倒す事と魔物の発生源を聖属性魔法を用いて浄化することを仕事としていた。
近年魔物の数は増加していて、さらに魔物が凶暴化していたことにより援助要請の出た数ヶ月前に私の前の団長は亡くなっており、平民出身であるだけでなく、年も17、性別すら隠している(まだ誰にもバレていないが)私が団長職を賜っていた。
余裕があったのは、王族警護のための第一騎士団くらいなもので、我々も余裕があった訳ではないが、全団長の死の数ヶ月後に志願して第二騎士団に入っていたアイリスが聖属性魔法のかなりの使い手であったことや少数での魔物を避けながら発生源の浄化を進める方針をとるようになったことから、国内の魔物処理の責任者を一時的にアイリスに移し、第二騎士団の半数以上が南の戦線に赴いた。
戦争では、第二騎士団の指揮権は私にあったため、自由に指揮し、戦線を南下させ、約一年後に首都を征服した。辺境伯と相手国の幹部によっていくつかの条約が交わされ、リーヴとの戦争は終結した。同時期にガルートとの戦争も終結し、第二騎士団、および第一騎士団は首都に戻された。
首都に戻ってすぐに勝利を祝うだの何だのと着飾らせられ、城に呼ばれたわけだ。
なるほど、1年経てば優秀な部下が皇太子に斬りかかられたのを止めたら剣を首元に突きつけられるような事態になるのか。
後ろで部下達が殺気だっているのがわかる。
「殿下!おやめください!」
アイリスが声を荒げる。
「…皇太子殿下は、第二騎士団に喧嘩を売りたいのでしょうか?この1年間、本来の業務から逸脱して国のために戦った私どもや、殿下と同じ歳でありながらに妃教育と魔物処理のために殿下のように自身の時間を取ることも出来ずに働いていたアイリス嬢を蔑ろにするのであれば、我々は正式に皇帝陛下に抗議させて頂きますがね。」
いつでも腰の剣を抜けるぞ、と腰の剣に手をかける。
「そこまでにしておけ。」
張り詰めた空気が流れる中、第三者の堂々とした声が響いた。
「あ、兄上…!」
私と同時期に帰還した、第一皇子、エミール・ブランダールだ。




