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GUN to the Fantasy  作者: ガス
8/15

Ⅷ BULLET

「くそっ……何と言う事を……」


 マクシードが手の届かぬ悔しさに、奥歯をギリギリと鳴らす。


 その間も、朱莉は冷静に戦況を見極めようとしていた。


「……お前はそのまま前線まで突っ込め、出来るだけ揺らさずにな。それ以外の事は考えなくて良い」


 コルト・パイソンはあくまでも拳銃。銃の中でも小型で射程は決して長い方ではない。


 しかも相手が魔物となれば、ダメージを与えられる有効な射程距離も未知数。可能な限り近付く必要がある。


 朱莉はワイヤーを取り出すと、マクシードに捕まりながら起用に自分の両足を結ぶ。


 更にワイヤーを鞍に引っ掛け、簡易的な鐙を作り出した。


「おい! 何をやっている! 落ちるぞ!」


 マクシードが後ろを振り返り仰天する。


 朱莉はか細いワイヤーで作り出した鐙を頼りに、馬上で立ち上がりリボルバーを構えていた。


「他は考えるなって言っただろ、良いから出来るだけ揺らさずに走れ」


「わ、分かったよ! 落ちても知らんぞ!」


 マクシードが巧みな手綱捌きで白馬を前線へ誘導する。


 前線まであと少しと言う所で、一体の翼竜が朱莉達に気が付いた。


「ギュゥアアアア!」


 甲高い叫び声をあげ、一体の翼竜が朱莉達に向けて突進。後ろ脚の巨大なカギ爪を馬上の朱莉に向けた。


 先程の様に、空中から落とそうとでもしているのだろう。


「爬虫類が……」


 朱莉は激しく上下する馬上で、翼竜に照準を合わせる。


 急接近する朱莉と翼竜。


 朱莉は翼竜のカギ爪が届く少し前に、胸部を狙い二発の銃弾を撃ち込んだ。


「ギャァアウ!」


 翼竜は短く鳴くが、勢いは止まらない。


 そのカギ爪が届く寸前、朱莉は馬上で素早くしゃがみ込む。


 鋭い爪先が、僅かに頬かすめた。


 朱莉とマクシードを乗せた白馬は翼竜とすれ違い、そのまま駆け抜けていく。


「外したのか!」


 急旋回する翼竜を見てマクシードが叫ぶ。だが、朱莉に焦りの色は見えない。


「心配すんな」


 空中で向きを変えて身構えた翼竜が、不自然に翼をバタつかせたかと思うと、全身を痙攣させながら徐々に高度を下げてきた。


「おい! ジジイ!」


 朱莉が、戦場に門番のキオウの姿を見つけた。


「奴等を落とす! 止めは任せた!」


 一瞬怪訝そうな表情を見せたキオウだが、すぐに朱莉の意図を理解した。


 高度を下げてきた翼竜が己の射程に入った瞬間、キオウは金属鎧を装備しているとは思えない速度で接近。手にした長剣で翼竜の腹部を斬り割く。


「グギャァアアアア!!!」


 激しい断末魔と共に、巨大な翼竜が大地で息絶えた。


「エロガキ! 次はアッチだ!」


「エロガキじゃない!」


 朱莉の指示で、マクシードの操る白馬が向きを変える。


 今度は二体の翼竜が、朱莉に狙いを定めた。


「もうちょい手前でも良さそうだな」


 朱莉がリボルバーを構え、今度は余裕を持った距離で二発ずつ撃ち込む。


 翼竜達は朱莉達に爪先を届かせる前に銃弾を受け、慌てて急上昇をする。しかし先程の翼竜と同様、やがて全身を痙攣させながら落ちてきた。


「貴様……何をしたんだ?」


「別に、普通に心臓を狙ってるだけだ」


 頭部を打ち抜ければ一番なのだが、頭蓋骨は強度がある上に丸みを帯びている為、表面で弾丸が滑る可能性がある。


 羽を狙っても、銃創が一つ二つ付いた所で、飛竜の飛行に影響が出るとは思えない。


 その為、朱莉は心臓付近を狙った。


 どんな生物でも、心臓付近には重要な血管が集まっている。そして、隙間のある肋骨で覆われている場合が多い。


 心臓の正確な位置が分からなくても、例え直撃させられなくても、ダメージとしては十分だろう。


 剣では相手の懐まで飛び込む必要があるが、銃ならその手前で対応が可能だ。


「残りは9体か」


 朱莉が結界を抜けた翼竜を数えながら、素早くリボルバーのリロード(銃弾の再装填)を行う。


「一気に決めるぞ、エロガキ」


「だからエロガキじゃない!」


 朱莉を脅威と認めたか、翼竜達が一斉に襲い掛かる。 


 しかし有効な間合いを見極めた朱莉にとって、もはや翼竜は問題にならない。


 銃弾を受けた翼竜達が、血を吐きながら次々と高度を下げていく。


 やがて何度目かのリロードを終えた時、上空を羽ばたく者は存在しなくなっていた。


 全ての翼竜が大地に落ちた事を確認すると、朱莉はリボルバーをホルスターに戻す。


「良し、帰るぞエロガキ」


「ちょっと待て、まだ翼竜の処理が……」


「後はジジイ達だけで十分だろ」


 翼竜は全て撃ち落とされているが、未だ息のある者も居る。その翼竜達をキオウを始めとした警備兵が止めを刺していた。


「いやしかし、僕は領主の息子として……」


「じゃあお前だけ降りろ、アタシは帰る」


 朱莉はそう言って、マクシードを馬上から突き落とす。


 突然押し出されたマクシードは、顔面から地面に落ちた。


「おい! 何をする貴様!」


「じゃあな、後は宜しく~」


 朱莉は片手をヒラヒラと振り、後始末をマクシードと警備隊に任せて、その場を後にした。

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