表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GUN to the Fantasy  作者: ガス
5/15

Ⅴ BULLET

 朱莉がオークレイ男爵邸に招かれた翌日。


「ふぅあ~~~~~……良く寝た」


 久々に柔らかなベットで睡眠をとった朱莉が、大きな欠伸と共に体を起こす。


 既に昼前。朱莉は窓から差し込む光に目を細めた。


「一応警戒してたが、必要なかったかな」


 ココは言わば敵地。


 地球人を恨む異世界人の、また高額のギャラを請求している相手の住居。


 闇討ちも有り得ると警戒はしていたが、無駄だったようだ。


「オークレイ家は貴族様らしいプライドをお持ちなようだ」


 討ち取るのならば正々堂々決闘で。過去に朱莉も、そんな異世界人と命のやり取りをした事がある。


 何とも非効率だとは思う。しかし戦場に命を預ける者として、朱莉にも理解できる部分はあった。


「そろそろ昼メシかな」


 朱莉が腕時計を確認しながらベットから降りると、計ったかのように部屋の扉がノックされた。


「お客様、お着替えをお持ちしました」


「あ~こりゃどうも」


 朱莉が枕元の愛銃を後ろ手に構え、歩み寄った扉をユックリと開ける。


「お早うございます、お着替えの方は……」


 着替えを手にしたメイドが驚き、顔を赤らめる


 扉を開けて現れた朱莉が、一糸纏わぬ全裸だったからだ。


「し、失礼致しました!」


「いやいやお構いなく、あっ着替えってそれ?」


「は、はい! お客様からお預かりした衣類は洗濯中ですので、代わりの物をお持ちしました!」


「そりゃどうも」


 朱莉は空いた手で着替えを受け取る。


「それと、30分後には昼食をご用意いたしますので、宜しければ朱莉様も食堂にと、マーサ様からのご伝言です」


「はいはい、後で行くって言っておいて」


「畏まりました……」


 それだけ言うと、メイドは最後まで朱莉と目を合わせる事無く去って行った。


「なかなか可愛かったな……報酬が足りなかったら、あの娘に夜の相手でもして貰うか」


 朱莉は不穏なセリフを呟きながらベットに戻り、受け取った着替えを広げる。


「これは……ベストかな?」


 着替えに用意されたのは、白いブラウスと黒いベスト、そして黒いロングパンツだった。一応、女性用に仕立ててはあるらしいが、朱莉が着ると中性的になりそうだ。


「確かにスカート以外が良いとリクエストはしたけど、何時もより動きにくそうだなぁ」


 朱莉は愚痴りながら衣服を手に取り、隅々まで確認する。


「一応罠の類は無し……と」


 更に手にしたブラウスやベストを、折り曲げたり引っ張ったりしてみる。


 見た目に反してかなりの伸縮性があり、生地も丈夫そうに感じた。恐らく、使われている生地も地球にない素材なのだろう。


「フリーザ様の戦闘服みたいなモンかな」


 異世界人には理解不能な例えを呟き、朱莉は装備品と共に用意された一式を着込んでいった。


 足元がミリタリーブーツの為、ややアンバランスではあるが致し方ない。


 やがて着替えを終え腕時計を確認すると、丁度良い頃合いになっている。


 朱莉は、愛銃の弾倉を確認してから部屋を出た。


 朱莉に用意された部屋は2階、屋敷中央の大階段を下りると、控えていたメイドに案内され食堂へ通される


「お早うございます、朱莉さん」


 食堂に到着した途端、マーサが朱莉に声を掛ける。


「お早うさん、ってもう昼だけどな」


 オークレイ家の食堂は、貴族の屋敷としては質素に見える。しかし掃除等は隅々まで行き届いているようで、清潔感は抜群。ある意味で、生活感が感じられない程だった。


 純白のテーブルクロスが敷かれた食卓には、既にマーサ、ガルズ、マクシードが席に着いている。


 当然マーサ以外の挨拶は無く、マクシード等は恨みがましい目で朱莉を睨んでいた。


「地球人には、朝起きると言う習慣が無いらしいな」


「いやいや、お宅のシーツが上等過ぎてね。真っ裸で肌触りを堪能してたら、気持ち良過ぎて寝過ごしちまったよ」


 朱莉の返しに想像力が働いたのか、マクシードが一瞬で顔を真っ赤にする。


「ふ、不埒者め! 貴様には淑女の嗜みと言う物がないのか!」


「おっ何だエロガキ、何を想像してんだ?」 


「エッ!? な、何も想像などしてない! 勝手な事を申すな!」


「実物が見たけりゃ今夜部屋に来いよ。勿論、金は取るがな」


「き、貴様!」


 からかう朱莉にマクシードが喰ってかかろうとしたその時、ガルズがドンっとテーブルに拳を振り下ろす。


「マクシード、その辺にしておきなさい」


「は、申し訳ございません父上……」


「朱莉殿も、ココは食事を楽しむ場だ。場違いな会話は控えて貰おう」


「へいへい、失礼しました」


 反省する素振りも無く、朱莉はマーサの隣に座る。


「朱莉さん、あまり弟をからかわないでください」


「悪いな、売られたケンカは買う主義でね」


 悪びれる様子もない朱莉に、マーサはやれやれと肩を落とした。


 暫くすると、朱莉達の前に次々と料理が運ばれる。


 素朴な素材を用いているが、どれもこれも技巧を凝らした調理がなされ、見た目も味も三ツ星レストラン級。


 朱莉は最低限のテーブルマナーを守りつつ、フルコースに舌鼓を打った。


「ふぅ~……食った食った、流石貴族様は良いモノ食ってんな」


 デザートを食べ終えた朱莉が、満足そうにお腹をさする。


「朱莉さんのお口に合ったようで何よりです。それで、報酬の件ですが……」


 マーサが手にしたティーカップをソーサーに置き、朱莉に向き直る。


「そちらの貨幣価値で100万円分の金貨をご用意しました。残りは貴金属でお支払いする予定ですが、用意するまでもう少しお時間を頂けますか?」


「構わねぇよ、今は他に受けてる依頼も無いし」


「ありがとうございます」


「いやいや、こんな上手い飯が食えるなら願ったり叶ったりさ」


「ふふ、今夜のディナーも腕を振るうようシェフに伝えておきます。ところで朱莉さん、午後のご予定は?」


「特にないな、部屋で銃のメンテでもしておくつもりだ」


「では、必要な物があればメイドにお申し付けください。私も自室におりますので、何かございましたら」


「ああ、頼りにさせて貰うよ」


 食後の紅茶を一気に飲み干し、朱莉は食堂を後にした。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ