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GUN to the Fantasy  作者: ガス
3/15

Ⅲ BULLET

 詰め所には備え付けのテーブルとイスがあり、朱莉はテーブルの上に自らの装備品を並べていった。


 リボルバーに予備の銃弾、短時間で弾の装填が可能なスピードローダー、大型のサバイバルナイフ、その他トラップ用のラインやフック等の小物、カード類や通信機器等々。


 いったいドコに隠していたのかと思う程、朱莉は次々と商売道具を取り出して行く。


「コイツはコルト・パイソン。アタシらの世界じゃハリウッド映画やテレビドラマにも出てくる超有名モデルだ。中々の骨董品だがちょいと弄ってあってな。人間でも魔物でも、急所に当たれば一発さ」


 まるで自分のオモチャを自慢する子供の様に、朱莉は相棒(銃)を誇らし気に解説する。


「人を殺す為の道具か……地球人の凶悪さが武器にも表れておるわい」


 キオウが憎々し気に吐き捨てる。


「ジジイが腰にぶら下げてんのは、人殺しの道具じゃねぇのか?」


「剣は騎士の魂であり、己を映す鏡。相手を殺す為ではない、己の教示を護る為に振るうのだ」


「それで相手が死んでるなら同じ事じゃねぇか」


 朱莉とキオウが再び睨み合う。


「二人とも、その辺で……」


 マーサに宥められ、狂犬と猛虎が距離を取った。


「取り合えず後の登録はキオウに任せます。それでは朱莉さん、参りましょう」


「はいはい」


 朱莉はテーブルに広げた所持品を手早くしまい、朱莉の後を付いていく。


「じゃあな、ジジイ」


「……ふん」


 最後まで憎まれ口を叩きながら、詰め所を後にする朱莉。


 キオウは二人の後ろ姿を眺めながら、言いようのない不安を感じていた。


「私の住居は町の中央にあります。そちらに参りましょう」


 詰め所を出た二人は、暫し草原に挟まれた石畳を歩く。やがて建造物が見えてくると、馬車を拾い町の中央へ向かった。


 町の景観は、ヨーロッパの田舎町と言った所。壁を白く塗られた木造の平屋が並び、道路に点在する屋台からは活気のある声も聞こえてきた。


 当然、電線や外灯等は無く、庭先の井戸や洗濯用のタライ等から、住民の生活様式が伺える。


 しかし、異世界の住人には地球人にはない技術がある。実際の生活水準は地球の先進国とあまり大差はないかもしれない。


「朱莉さん、こちらです」


 マーサの指示で馬車が止まる。朱莉はマーサに倣い馬車を降りると、とある建物の前で立ち止まる。


 この町でも一際大きな建造物は、他には見掛けなかった二階建ての屋敷。


 赤茶けたレンガ造りで、如何にも洋館と言った佇まい。


 庭も広大で、明らかに他の建造物と規模が違った。


 当たりだな……朱莉は心の中でほくそ笑む。


「それでは、参りましょう」


「ちょっと待った」


 門を潜ろうとしたマーサを、朱莉が止める。


「何か?」


「いや、お嬢さんがやけに素直なのが気になってな。どっちかと言えば、さっきのジジイのリアクションが正解だろ? 助けられた相手とは言え、アタシなんかをホイホイ家に連れて行って良いのかい?」


 朱莉の率直な疑問に、マーサは薄く笑う。


「私が朱莉さんを罠に嵌めようとしている……と」


「……そこまでは言わねぇがな」


 微笑むマーサの瞳に、朱莉は微かな寒気を覚えた。


「以前、朱莉さんと同じような人に会いました。彼は地球人でしたが、お金さえ払えば実に信頼できるパートナーでしたよ。朱莉さんも彼と同じなのでしょう。彼と同じ、プロの仕事人……違いますか?」


「いや……違わねぇよ」


「それが朱莉さんを信用している理由です。ご納得いただけましたか?」


「あぁ納得だ、ミス・オークレイ」


 マーサは「それでは」と、改めて朱莉を屋敷に案内する。


(割と肝の座ってるお嬢さんだな)


 朱莉は心の中でマーサの人間像を修正しつつ、彼女の後に続いた。


 マーサが、屋敷の外観に相応しい彫刻入りの豪華な扉を開ける。


 すると、屋敷の中から慌ただしい足音が鳴り響き、数人の男女が玄関に駆け寄って来た。


「マーサ!」


「お父様!」


 マーサが父と呼んだのは、黒髪で口髭を生やした紳士風の男。マーサは、父親と玄関で熱い抱擁を交わす。


「バカ者が! 勝手に町を出るなど何と危険な事を!」


「お父様、ごめんなさい……」


 奇跡の帰還、感動の再会と言った所なのだろうが、朱莉には全く興味のない事。 


 小指で鼻をほじりながら、二人のやり取りが終わるのを待つ。


 すると何時の間にか、父娘の後ろで控えるメイド服姿の女性達から、軽蔑の眼差しを一身に集めていた。


 朱莉が何となく気まずくなり、小指を上着で拭う。メイド達は一斉に眉をひそめ、何やらヒソヒソと囁き合った。


「マーサ、そちらの方は?」


 その異変に、ようやく父親が朱莉の存在に気が付く。


「こちらは朱莉さん、プロの傭兵さんです。朱莉さん、こちらは私の父、この町を治めるガルズ・オークレイ男爵です」


 朱莉を紹介された父親のガルズは、老兵キオウの時と同じような表情を見せる。


「お父様、朱莉さんに関して少しお話があります、まずは広間へ」


 マーサはメイドにお茶の用意を頼むと、朱莉を屋敷の奥へ案内した。

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