クリスマスとタンポポぼっち
アンリ様主催の企画「クリスマスプレゼント企画」参加作品です。
寒い冬空の下にひっそりと咲くのは
季節外れのタンポポ
たった一輪だけ咲いているタンポポ
だからみっちゃんは
そのタンポポが咲いた時から
見守っていました
みっちゃんは
そのタンポポに
タンポポぼっちと
名前を付けました
タンポポの独りぼっち
だからです
タンポポぼっちは
冬の暖かい日に
どうやら咲いてしまった様です
でも
次の日はうんと寒くて
みっちゃんは赤い手袋とマフラーをして
タンポポぼっちに会いに来ました
タンポポぼっちはみっちゃん家の近くの公園の片隅に
ある日ぽつんと生えてから
みっちゃんがずっと見守ってきたんです
みっちゃんはお友だちがなかなか出来なくて
ずっと独りぼっち、なのでした
だから
タンポポぼっちが
みっちゃんの初めての友達でした
タンポポぼっちを見る
みっちゃんはとても優しい顔をしています
タンポポぼっちも冬の風に吹かれながら
ぷるぷると小さく震えていました
「さむいの?」
みっちゃんが聞いてもタンポポぼっちは答えません
クリスマスの日が近付いてきて
タンポポぼっちは段々綿毛になってきました
「白くてふわふわね」
みっちゃんはタンポポぼっちがもうすぐ居なくなる気がして
とてもとても寂しくなりました
そしてクリスマスの日
タンポポぼっちはすっかりふわふわの白い綿毛になりました
その日は雪がちらほらと降っていました
みっちゃんは
「お別れなんだね……」
と泣きそうになりました
『だいじょうぶ』
その時
タンポポぼっちからそんな声がした気がしました
『春になったらみっちゃんにクリスマスプレゼントあげるから』
春に?
クリスマスプレゼント?
みっちゃんが不思議に思った時
ふわっと綿毛は風も無いのに浮かんで散って行ったのです
白い小さな綿毛たちは
雪と一緒に舞って
踊るようにあちこちへと散っていきました
みっちゃんはそれを
ただただ見つめていました……
春
公園の片隅には
タンポポぼっちの子どもたちの
タンポポの花が
たくさん
たくさん咲いたのでした
小学校へと入学したみっちゃんは
たくさんのお友だちと一緒に
公園で遊んでいます
もうみっちゃんもタンポポぼっちも
一人と一輪ではありません
これは
そんな物語