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塔のこぼれ話  作者: 炯斗
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字の話

「先輩、字キレイだよね」

「うん?」

机に肘をついて先輩の紡ぐ文字を眺める。

癖のない丁寧な書体で読みやすい。

「頭良さそう」

実際良いわけだが、体現していると思う。

「ああでも、所謂『天才』の人達は特徴的な字を書く人が多いよね」

「そうですか?」

スナフ先生もキレイな字だし、学長も少し癖はあるけどカチッとした字を書く。ケミオ先生の字は流麗過ぎて少し読み辛いが…他にあまり思い浮かばない。

「ダリの字は読み難い」

マキちゃんが苦い顔で言った。

「錬金術は基本式だからそんなに困らないけど」

清書された論文とかならともかく、普段の字は読めたものではないらしい。板書は式だけだから気付かなかった。

「あとネコの字も読めん」

それは解る。ジユウのノートは暗号文書だ。本人に言葉で教えて貰わないと読み解けない。

「あれは種族的な文字なの?」

「そんなもんないと思うけど」

ただの強い癖字らしい。しかも雑なので読めないだけだ。

「逆にキレイなのは?」

「あー、購買の」

「ああ。お手本みたいだよねぇ」

購買員の字は相当キレイらしい。丁寧で型通り。

「曰く、『仕事柄』だそうだけど」

キレイな字を書くのは受発注の際のミスを減らす為だそうだ。どちらかというと難癖を付けられないようにするためだろう。

可もなく不可もない自分の字に目を落とす。

「いいなぁキレイな字」

「練習したら?字は変えられる」

「うーん」

そこまでではないな、と思った。



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