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塔のこぼれ話  作者: 炯斗
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浮島 7

「おはよう。ネレーナくんのお陰で魔力の増幅に関してはどうにか出来そうだ。とはいえなるべく負担を減らす為にも引き続き情報収集をお願いしたい。何、明日には戻れるさ」



リーザは不整脈で倒れそうになっていた。

(ひぃぃ…な、何故。何故ガイ先生と二人行動…!?心臓が、心臓が保つ気がしない…っ)

「リーザ」

「ひっ、はぃ!!?」

ガイに名を呼ばれひっくり返った声が出る。心臓も同時に出て行くかと思った。

「この辺りで調査用に術式を展開する。知っての通り魔術が使い辛い状況だ。サポートを頼みたい」

「あ、はい!えーとでも恥ずかしながら、私の魔術は殆ど使えない状態で…」

おずおずと口にするがガイは気にした様子もない。

「何、指示した通りに動いてくれれば問題ない。まずはそこの砂地に陣を描いてくれ」

「解りました…!」

リーザは察した。

(どうも、端から魔術はアテにされてないみたい…!)


石柱の傍にしゃがみこみ、エトラは溜め息を吐く。

「はあぁ。まさかの長期戦とかホント勘弁」

幾らか不機嫌は和らいでいるが、代わりに疲れの色が見て取れる。ノルドは目当てのものを探して石柱一本一本を見て回っている。

「先生たちでも解明できないなんて、ここってなんなんだろうね」

「さあ。変な石柱…意味解んないし。調査って、先生たちが来た方がいいんじゃないかしら?」

「そうだねぇ。まぁ別の視点で見れるかも知れないし、構えずにいこうよ。閉じ込められたようなものだから、思いつめるとシンドイくなるよ」

のほほんとしたノルドにエトラも毒を抜かれていく。腐っていても仕方ない。ノルドを手伝う為、何を探しているか訊こうとした時だった。

「…あった」

「何が?」

ノルドが石柱の下の方に付いた傷痕を指す。

「これ、爪痕かな」

エトラに訊いている訳ではなさそうだ。まじまじと眺め回してみるがエトラには判らない。

「ただの劣化痕にしか見えないけど…」

「うーん、小型のドラゴンのマーキングの傷によく似てる気がするんだよなぁ」

最初に見付けた時から気になっていた。角を擦り付けた痕は特徴的な形になる。

エトラは一歩引いて身構えた。

「やだ。ドラゴンがいるってこと?」

「どうだろう。姿も見てないし、これだけではなんとも。他に痕跡があれば可能性も出てくるけど…」

排泄物や鳴き声、足跡等は今の処確認されていない。傷痕も新しい物のようには見えなかった。


オルクレアはワクワクとファズの後について歩く。

「今日は何処を調べるの?」

「オルクレア先生が手に入れた石柱の欠片は学長が分析中ですし、地質でも見てみましょうか」

ぱあっと顔を輝かせ、オルクレアは両手を広げた。

「ボーリング得意よ!」

ズゴンッ!と大きな音と振動を立てて地が隆起する。

「豪快ですね!」

魔術が使い難い状態でこれなのだから恐れ入る。


廃墟側の森の外れでルカは食料調達に精を出していた。

「いっちご、いっちご~。実が成ってる時期で良かったよね~」

「本来実が成る時期じゃないわよ」

「え、そうなんだ」

顔を上げるとエトラが立っていた。反対側の森から戻ってきた処らしいが、どうやら手伝ってくれそうだ。

「なんかちょっとキモチわるい」

そう言うエトラの顔色は確かに少し悪いように見える。

「うーん、無事に帰れるといいね」

「本当よ。やりかけの作業あるし」

元々休憩をしに休憩室に寄ったのだ。つまりは作業中だったのである。改めて思い出すとまた苛々してしまいそうで、エトラは摘みたての苺に噛み付いた。


「本当に澄んだ水ですね~、と」

「そうねぇ。………」

ネレーナの呼び掛けにぼんやりと答えるユーリカは思考中らしい。ネレーナは構わず続けた。

「うーん。考えるほど不思議な場所ですね。有翼種の秘境…とか?」

その言葉にユーリカは顔を上げた。

「ああ、『黄金の国』ね?ネレーナさんは博識ね」

ネレーナは「えっへん」と胸を張る。

黄金の国、楽園、天国、極楽浄土、理想郷。有翼種が語ったとされる『いつか往く場所』。とにかく美しい場所であるとされる。

「ピノに借りた冒険譚ライトノベルに載ってました」

「あらあら、今の子はどんなのを読むのかしら。私も冒険譚はわくわくして好きだわ。恋物語と同じくらいね!」


ソーマは空と地面を交互に眺めている。ハトはしゃがみ込んでソーマを見ていた。

「揺れてないし、安定してるよね。浮いてるなんて信じられないなぁ」

「多分、物理法則がしっかりしてないの。だから魔術も使い辛い」

「ん?」とソーマはハトを見た。

「魔術が使い辛いのは、従う精霊が少ないから…じゃないの?」

「それもあるけど。…たぶん、だから」

そう言ってハトは視線を落とした。

「ハトはひょっとして、何か解ったの?此処のこと」

ハトは静かに首を振る。

「ううん。思ってるだけ」

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