将来の話
就職支援課から借りてきた様々な職業が載った本を眺め唸り続けるソーマに、ハトは遂に声を掛ける事にした。
「何を唸っているの」
「あ、ごめん」
咎めたつもりはなかったが謝られてしまった。
「就職を考えているの?」
「ええと…うーん、ぼんやりね」
直にケイナは講師として戻ってくる。ピノは環境局で局員として就職したらしい。ルカはレンジャーの訓練施設に通っていて、恐らくそのまま入隊するだろう。ネレーナは元々稼ぎが良い。今でも芸事で稼ぎながら学生を続けている。ユークは続々と特許を取って今は世界中を歩き回っている冒険家だ。エトラはまだ塔に籍を置いているが、自分の薬局を持っている。ユグシルは音波や磁波を使った診察を行う技術医師として活動しているらしい。
「目指すところはあるの」
「…彫金師とか宝石鑑定士とか、石と関わる仕事はどうかなぁと思うんだけど…」
「なるほど『ぼんやり』ね」
「うん…」と力なく肯くしかない。
「そういう組合や組織に伝手はあるの?」
珍しく質問の多いハトにソーマは内心少し驚いた。
「まあ、バイトとかを通して多少は…。でも付き合いとか苦手だし、組織に所属するよりは個人で、とか」「やめた方がいいわ」
「えっ」
被せられた否定の言葉に一瞬思考が止まる。
「ソーマは、少なくとも信頼出来るマネージャーを雇ったほうがいいと思う」
「…そう…かな」
ハトは深く肯いた。
「なんにせよ、ソーマの就職活動は塔を通した方がオススメ」
そう言ってハトはうーんと唸るソーマに背を向けた。
「…ハトは?」
声を掛けられ、ハトは立ち止まって振り返る。少女の域を脱した顔で優美に微笑んだ。
「私は金銭に困ってないから」
大国ティアラに領土を持つ貴族の子女は、労働をする気は更々ないらしい。




