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塔のこぼれ話  作者: 炯斗
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弓使いとその後の話

神殺しの弓を持つ、孤高の秀才。

それが彼の称号。成績は優秀で、誰と群れる事もなく、よく一人で塔の最上階に居る。それ以外の事はよく知る者はいない。そんな人物。人を避けているわけではなさそうだが、積極的に関わらない。であれば塔では独りになるのは必定だ。取り分け珍しい事でもない。

ただ彼は同期だった。塔の中でも飛び抜けて優秀な同期生に、やっかみ半分、何度かちょっかいをかけた。それだけの仲だ。

声を掛けると彼はいつも面白そうにこちらを見た。からかわれているようでこちらとしては面白くなかったが、それでも何度も話し掛けた。会話を長く続けられた試しはない。毎度短く端的に、しかし無理なく自然に打ち切られてしまう。

比較的長く応酬が続いたある日。彼は最後に「お別れだ」と言った。

「よく話し掛けてくれたろ。なんだかんだ、同期の中では一番喋った。だから一応伝えとこうと思って」

「………そうか。行ってらっしゃい」

そう返すと、彼は短く笑った。


それが最後だ。

「お別れ」の意味するところは解ってしまった。だから、「元気で」とも、「生きて戻れ」とも言えなかった。

こんなものが、嫉妬するほど優秀だった同期の…憧れてしまった攻性魔術師の最期。

今でも握る手が震える。未だこんなにも狂気の色濃い地だ。当時は如何程だっただろう。

「…先生?」

握り締め過ぎて白くなった手に気付かれてしまっただろうか。

「いや、何。ちょっと感慨深くてね」

結局、玄霊を倒したのは弓を引き継いだこどもたちだったという。一度塔でも『演習』を見せて貰ったが、弓の担い手は彼とは毛色の違いすぎる人物だった。

「美味しいところを頂いちゃったみたいで…」という申し訳なさそうな挨拶は我々の心の深くを細かく引っ掻いた。「クッソ強かったけど、あれでも、これまでの積み重ねでかなり弱っていたと聞いています。弓もお借りしてます。だから玄霊退治の功績は、皆さんのお陰です」。その言葉に反感を抱いた者も少なくないだろう。だが結局、その後の演習を見せられれば、誰も彼も納得するしかなかった。弱らせていたとしても、それにトドメをさせるだけの実力が。彼らにはあって、我々にはなかったのだ。

お陰で皆気持ちに整理が着いた。その後持ち掛けられた緑化計画にもこうして協力出来るくらいには。

「先生、弔いをしましょうか」

「いいですね」

この地で、漸く我々は、時代の変化を受け入れられる。

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