玄獣学講師の話2
「先生、玄獣学の先生なのにフィールドワーク行かないって本当?」
「おかしいよねぇ。先生も行きたいんだけどねぇ」
生徒に問われ、クーシェは眉を下げた。
「なんで?」
「先生塔から出られないんだぁ」
「出られない??」
それほどに忙しい、という意味ではなさそうだ。今ものんびりとお茶を啜りながら生徒との歓談に付き合っている。
「そうそう。昔少~しヤンチャをしてねぇ、お外に出して貰えなくなっちゃったの」
生徒は「へぇ」と素直に感心する。人に歴史あり。今では落ち着いて穏やかな、のんびりしたこの講師も、若い時分には無茶をしたのだ。しかも、未だに続く罰を受けるほどの事を。
「反省してますって伝えたら?今の学長なら、もう許してくれるんじゃない?」
「定期的に打診はしてるんだよぉ。でもダメなんだってぇ」
「えー!先生何したの気になるー!」
クーシェは「恥ずかしいからナイショ」と人差し指を唇に当てて笑うだけだった。
「でも研究困るでしょ?」
「うん。だから生徒たちに代わりに動いて貰ってるんだよねぇ」
生徒たちを手足として使えるという利点の為だけに講師になったようなものだ。
「君も、たくさんフィールドワークに出て、たくさん現場の情報を教えてね?楽しみにしてるから」
「まっかせて!」
将来レンジャーを目指すその生徒は、胸を張って答えた。クーシェは目を細めて頷き。
「先ずは…その杖について教えてくれる?それ玄獣の意志で与えられた素材が使われているよねぇ!君随分と親しいのかい?どんな玄獣?生息地は…海?少なくとも水系だよね?呼び出せたりする?関係性についてを特に詳しく──」
「ちょ、先生、一個ずつ!一個ずつ!!」
ルカがクーシェから解放されたのは、日が沈みきった頃だった。




