未来へ繋がる話
軍服のような格好の人物が、つかつかと塔を登っていく。止める者も居らず、彼は塔の主の元へ辿り着いた。
「お久し振りです、ラツィー」
王佐の地位に据えられた彼は少し疲れた顔をして、嘗ての主に礼を取った。
「おう。ちょっとやつれてねーか?今日はどーした」
「陛下、来てらっしゃいませんか」
「今度は何があった」
はあ、と盛大に溜め息を溢し、王佐は勧められた席を辞退する。
「いえ…そろそろ身を固められては、と進言しているのですがその度逃げられてしまって」
「あー。次見たら話をしてみる」
「ええ」
現王ももう適齢期を超えている。のんびりした性格は知っているが、流石にそろそろ…と周囲は気を揉んでいた。
「多分あいつ一緒になりたい奴が、 居んだろ」
「でしたらその方で構いませんので、紹介していただきたいですよ」
疲れた王佐は妙な間も気にすることなく。暫しの雑談後、一礼をして踵を返した。
「 だってよ。噛むなよ」
退室を確認して一声掛けると、当の現王はラツィーのローブからもそもそと這い出してきた。
「余計なこと言うからだろ!」
親の脛を齧るを物理でやってのけた30歳児を適当に宥める。
「反対しねーってよ」
「解ってないからだろ!?」
王が想う相手。それが誰かを王佐は予想もしていない。
「ま、おれさまも『30年も育ててきた子が遂に結婚か』なんて感慨に耽ってみたいもんだがな」
王は「む…」と唇を尖らせた。
「孫、楽しみ?」
「曾孫くらいまでは見て逝きてーな」
「……うーん、じゃあ仕方ないなぁ!」
少しだけ勇気を出してみるのも親孝行だ。
「陛下、そろそろ伴侶を決められては?」
「うぇー。気が乗らないー。君がずっと一緒に居てくれるから、もう君でよくないか?」
流れなく発せられた話題に、王は顔を顰めるでもなく淡々と返した。
「血が絶えますよ」
宰相もまた王のプロポーズをサラリと受け流す。
「聖霊の血なら、塔が継いでるから良いんじゃない」
「残念ながら遅れをとりましたね。あちらはもう無性体を伴侶に選んでしまったようです」
「嘘。絶えるじゃん」
「ええ。ですから私ではダメです」
この男が明確に「ダメ」と言うのは珍しい。
「ふふ。僕か君の性別が違っても、似たような断られ方をする気がするなぁ」
恐らく我らが聖霊は血が絶えることを気にしないだろう。元々北方の民は血の繋がりを重視しない。それでも800年続いてきたこの血脈を自分の代で絶やすのは忍びない。
「仕方ないなぁ。いいこ選んでよ」
「仰せのままに」
その代々すべてを見てきた竜は、彼の血を繋ぐすべての縁に祝福の息吹を贈る。




