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塔のこぼれ話  作者: 炯斗
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攻性術と30年分の10年前の話

樹歴 868年

「フィアちゃんさぁ、そんなに攻性術に興味あったっけ?」

頬杖をついて、先輩は私を見つめている。

「うーん…」

そう言われると少し返答に困る。

多分、先生たちと競い合える、肩を並べられる技能がそれしかないからうっかり嵌ってしまったのだ。それも30年分のズルがあってこそで、もう既に貯蓄が切れて置いて行かれつつある。だから余計に勉強熱心になっている。

先輩の何気ない一言でそんな事を考えてしまって少し落ち込む。ただ、

「楽しくて」

それは本当だ。

「そうなんだ。フィアちゃん呪術取ってたっけ。あれも一応攻性術だよ。呪術なら教えてあげられるんだけどなぁ」

そういえば呪学は担当講師が変わって、今は名称も『呪術学』になっている。それに伴いウイユ先生は生体錬金一筋になってイキイキしている。まあ今となっては担当がウイユ先生だからと避ける理由もないのだが。なんとなく未だにあの人は苦手だ。

「新しい呪術学講師も結構癖のある人だけどね」

「先輩取ってるんですか?」

呪学は修了していた筈だ。

「どんなものかなーと思って、一度ね。やっぱり教える人が違うと得るものも違ってくるから」

ルルイエの魔女と同じことを言う。

そういえば魔女も呪術が得意だった。

「呪術か~…でも多分、多分向かない…」

「ふふ。うん。そうだと思う」

なんで勧めた。



「君か。私から攻性術を習いたいというのは」

テンプレートでもあるのだろうか。既視感を誘うセリフに一瞬気持ちが揺さぶられた。

私が訪れたのは治安維持部隊から出向している攻性術講師・オブシディマス先生の元。塔の体制変換時から変わらず『見張り役』として機能しているらしい。

特待の期間は入学後6年。特別授業を受けられるのもその間だけだ。私は5年も前に切れている。だからこれは個人的なお願いなのだが。

「ルルイエ師から聞いている。君から望みがあったら通せと」

お願いのつもりだったのだが、命令だったらしい。申し訳ない。

「君が何度か学長と術戦を行っていたのを見た事がある。私は基礎攻性術を教える身だが、何を望む?」

「ぇぇと…ルルイエさんから、先生なら『そちら』の戦い方を教えてくれる、と」

「了解した。では場所を移ろう」

その長身の背を追う。身長はスナフ先生と同じくらいだと思うが、やたらがっちりして大きく見える。堅くて固い。噂通りだと早々に理解できてしまった。



クドルだった。もう完全にちょっとよく喋るようになったクドルだった。いやクドルより更に少し融通が利かない。立場的に言い包めが使えない所為かもしれない。

「あいたたたたた…ッ、ちょ、痛い痛い!」

「あぁもう…普段身体動かさない癖にいきなり動くから~。もう若くないんだからね?」

部隊式の戦闘訓練を受けた私は打ち身の痛みや筋肉痛に襲われている。呆れ顔の先輩は完全に介護者だ。でも私はまだ20代だから。私はまだ20代だから!

「だって魔術…魔術は筋肉なんて使わないだろ…!」

「攻性術やるならそうとも言い切れないよ。身体が資本だから」

ぐぬぬ。スナフ先生は現状の身体での体の動かし方、捌き方は教えてくれたけど、鍛えろとは言わなかった。実践魔術を教えているワケじゃないからということだったのだろう。考えてみれば先生自身は意外と鍛えられたいい体格をしている。パッと見は判り難いけど。

「ウイユ先生もあれ多分筋肉ついてるんだよなぁ呪術士の癖に」

先輩がぼそっと呟く。前体制の塔は基本身体も鍛えさせられていたのだろう。実戦に向けて育てられていたのだから当然といえば当然だ。そうだった。

そこへ、ノックが響いてマキちゃんがやってきた。

「あれ?マキちゃん?どうかした?」

「いや、笑いに来た」

「帰って」

ギチギチと痛む筋肉を無理矢理動かしてマキちゃんを押し返す。意に介さず、まぁまぁとか言いながらしれっと入ってきた。

「ディマス先生にボコボコにされたって聞いて」

相変わらず耳の早い事で。

「はいはい、年甲斐もなくってんでしょ」

「年甲斐?今更だろそれは」

「なんだと」

マキちゃんだってひとつしか変わらない癖に!

「そうじゃなくて。なんで近接系に行っちゃったの。旧体制で学びたいんだったら遠距離系のマツリ先生の方にしたら良かったのに」

「遅いよ!?」

やはりおかあさんには相談した方が良かったか。しまった。

「いや…いやいやマキちゃん。マツリ先生は…」

「? 何かある?」

「かなり厳しい人だから。筋力体力付くまでは本題教えてくれないだろうし、そもそも多分授業外では教えてくれないと思うかな」

それにマキちゃんは「あー」と納得の音を漏らした。

「それもそうか。じゃあ妥当だったな」

「…っふ!」

「フィアちゃん?」

いや。なんか笑ってしまった。懐かしい気もするけど、ずっとこんな感じだ。10年経っても何も変わってなくて。成長の無さは笑い事じゃない気もするけど、でもなんか、うん。

「あはは!ッたたたた!」

腹筋が!

笑った拍子に腹筋が痛んで、マキちゃんに指をさして笑われた。

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