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FORCE OF VERTEX ―喪失の剣と創造の筆―  作者: ぶれいず。
Stage 11 Catastrophic Game
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勇士の結集

「はいはーい、お待たせいたしました! プレイヤーの皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます! 開会の進行を務めさせていただく、お馴染みユイです!」


 体感で時計が半周した頃、先程までミルナちゃんがいたステージにユイさんが姿を現した。通常とは異なる、夏らしい色で固めた服装になっている。もしかすると、このイベントのために新造されたフォースウェアなのかも。


「特別なイベントを開催する際に利用できる空間を作ろうというコンセプトで完成したこのエクストラフィールド、大半の方はお目にかかるのも初だと思います」

 彼女があえて大半という言葉を使ったのは、紛れもなく私たちの存在に気づいているからだろう。何を隠そう、ここはゼロ、ヒナタ、私の三人が招かれ、ゼロがゴウトさん・ジュウヤさんコンビを下したあの場所なのである。


「さて、このFOV・グランドサマーフェスが一体どんなルールなのか、皆さん気になって仕方がないですよね。なので、早速ルール説明へと参りましょう!」


「おおっ」


「……と、言いたいところですが」


「がくっ」

 そういうのはいらない……そういうのは。期待から突き落とされる私にはお構いなしに、ユイさんは続ける。


「まずは、今回の大型イベントを盛り上げるべく集まって下さった、運営メンバーの中でも特別な四名をご紹介したいと思います!」


「特別な……四名?」

 これまでにない規模のイベントなだけあって、辺りを凝視してみると見たことのない運営のメンバーらしき人の姿も会場の要所要所に確認できる。その中でも大きな権力や影響力を持ってる人たちってことだろうか。


「お気づきの方もいるでしょうが……上をご覧くださいっ!」

 言い放つと同時に、ユイさんは天空に手をかざす。誘導されるがままに視線を移すと、四人の人物が飛行物体に乗って上空を浮遊しているのが見えた。


「い、いつの間に……」


「ユイとほぼ同時に姿を現していたわ」

 隣のゼロはとっくに気づいていたみたい。流石5m離れて尾行していたヒナタの気配を察知して言い当てただけのことはある(実話)。


「四隅でビビッド・フライアに乗っているあの方々には、『グランドサマーフェス・スペシャルアシスタント』としてこのイベントを全面的にサポートしていただきます!」


 よく見ると、彼らが今使っているのは先日ユイさんが乗っていたものと同じマシンだ。あれはそんな名前だったのか……と私は一人で納得する。

 ここからだとあまり鮮明に見えはしないが、会場の端に陣取るようなその佇まいは、大型イベントの開催を祝すと同時に、この中に不届き者がいないか監視しているようにも見える。私は彼らをFOV運営四天王と心の中で勝手に呼ぶことにした。


「まずはステージ側のお二人から! 一人目は企画・開発部メンバー兼、ビルドアップインストラクター……アレンさんです!」

 彼女が指名すると同時に、ステージの画面にもその姿がアップで映し出される。多くの視線を下から受け取っても全く表情を変えず、彼は無言で小さく一礼した。

 ビルドアップインストラクターという単語も気になったが、それ以上にグレーのウルフカットをしたその風貌からして、私は全く冗談が効かなさそうという強い第一印象を受ける。ゼロとは違う鋭さを持ったその眼光は、下手に茶化しでもしたら無言で殴られそうな威圧感を醸し出していた。


「続いて二人目! 企画・開発部メンバー兼、メディカルインストラクター……ソフラさん!」

 ユイさんの手の示す方向が動くと同時に、画面に映る人物も切り替わる。

 薄水色の長い髪をシニヨンにまとめた女性は、紹介を受けるとアレンさんより深くお辞儀した。メディカルインストラクターってことは、メディカルルームに関わる仕事に就いているのは間違いないだろう。ゼロとヒナタはメディカルル―ムに行ったことがあるって言ってたから、今度聞いてみようっと。

 大きく開かれた瞳からは情熱が感じられ、公式ユニフォームの着こなしも一段上を行っている。一言で言うと、めちゃくちゃ仕事できそうな人、である。


「お次は奥側のお二人! 三人目、データ管理部メンバー代表、セリさん!」

 データ管理部というワードにはピンと来たが、私には名前も顔もみず知らず。どうやらユイさんやリラさんとは別のデータ管理部に所属しているみたいだ。

 透き通るような淡い浅紫をした肩まで伸びたヘアと、それまでの二人とはまた一線を画す垂れ目は、どこか浮世離れした印象を与えてくる。

 彼女は下げていた頭を戻すと、華奢な手を私たちに向けて軽く振った。


「四人目、広報部メンバー代表……もにもにさん!」


「……ん?」

 スクリーンに映し出された、それ以外の三人とは明らかに異なるその容姿に、私は強烈な違和感を覚える。


 なんか、他のメンバーより丸っこい体形で肌の色も人間っぽくないような……


「あれ、着ぐるみだよね……」


「着ぐるみね」


 当の彼 (彼女?)は訝しむような視線をした私たちのことなど気にもせず、無言で太い片手を上げる。きっと、挨拶してるつもり……なんだろう。


「もにもにさんは恥ずかしがり屋なので、人前にはいつも着ぐるみで出てくるんですー……あ、ちなみに女の子ですよ!」


「な、何それ……」

 着ぐるみだとかえって目立つと思うけど、そんなに姿を見せたくないのか……ぬいぐるみは割と好きな私だけど、あれは正直……あんまり可愛いとは思えない。


「広報担当で階級の高い人ってことは、CMとかに出てくる人なの?」


「いえ、どちらかというと――」

 ゼロによると、広報担当というのはいわゆるメディアに出演してPRとかするわけじゃなく、SNSでの文言などを考えて投稿するお仕事であるようだ。

 現に、私も今日ここでもにもにさんの存在を知ったわけだし、前面で情報を発信するのはDさんがもうやっているし。

 しかし、彼女の言う通りであればいよいよ着ぐるみである必要性がない上に、デフォルメにデフォルメを重ねた怪獣のような見た目がFOVの世界観にマッチしているかと問われれば、首を横に振らざるを得ない。


 失礼かもだけど、そんなに慕われてる人なんだろうか……


 あのアレンさんって人に「だが奴は四天王の中でも最弱……」とか言われてそう。

 いや、でもああいうのが意外に強かったりするのか……?


「なんていうか、FOVにはまだまだ私の知らない謎がいっぱいあるんだね……」


「……」

 いつぞやのTVアニメを思い返しながら口に出す私にゼロが苦い顔をしているのは、サングラスを外さずとも分かった。


「おや……なんでしょうか?」

 紹介が終わった直後、もにもにさんはビビッド・フライアに乗ったままユイさんの傍まで降下すると、耳打ちするように何かを彼女へ伝えている。

 飛んだまま叫ぶにしても着ぐるみの中からでは聞こえないと思ったのか、そもそも喋らないキャラという設定なのかは分からないが、ここでしたいことがあるみたいだ。

 ユイさんの方はというと、その話を聞いた途端、目を丸くしてアナウンスする。


「な、なんと、もにもにさんから皆様に参加賞の贈呈だそうです!」


「!」

 参加賞が貰えるという事前告知自体はされていたものの、まさかこのタイミングで、なおかつ彼女から受け取ることになるなんて。

 私含むギャラリーが盛り上がっている間にもにもにさんは自分の立ち位置 (いや、飛び位置か?)に戻り、自分の眼前に画面を出した。俊敏な動きでコマンドが入れられるとその手元に雅な光の塊が現れ、彼女は上空からそれをばらまく。

 一つの光が幾つもの粒に分裂し、飴ほどの大きさをしたカラフルな灯りがこの場全体に降り注いだ。


「これは……」

 落ちてくる光の一つをゼロが掬うと、それは彼女の手のひらの上で浮かび、横長のカードへと変化した。


「それって……FOVライセンス⁉」

 紛うことなき、FOVへのログインに必須なライセンス実物だ。しかも、このイベントのロゴが入っており、縁も金色となっている限定デザインである。

 私も同じようにして目の前に落ちてきた光の粒を一掴みすると、やはりライセンスになった。ちゃんと私の写真が入っている。

 単純に二枚目として今のライセンスと取り換える形で使っても良いし、予備としても持っておけるってことだ。


「すごい……特別感マシマシじゃん……参加して良かった~」

 その両面を確認すると、自動でメニュー画面が現れ、ライセンスはそこへ吸い込まれるように消えていく。

 きっと通常のライセンスと同様に、イベントが終わって現実世界へ戻る際にもう一度現れる仕組みになっているはずである。

 思い出と共に手元に残るであろう、素敵なプレゼントをくれた彼女に対し、私の中での好感度は少し上昇していた。


「ありがとー! もにもにさん~!」

 ゆらゆらと揺れる手に、私も力いっぱい手を振り返す。よく見るとちょっとかわいいかも……と、手のひらを返したのも束の間。


「これをもちまして、スペシャルアシスタントのご紹介は終了させていただきます! 続きまして、皆さんお待ちかねの――」


 ユイさんが言い終わらないうちに、それは起こってしまった。


「――ゼロっ!」


「!」


 後から思い返してみれば、それは間違いなく崩壊の序章だった。

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