093 船旅1
大丈夫、きっと寝てはない。うとうとしている間は会ったけど多分あの時も寝ていたわけではないはずだ。
まあ眠かった気分はやけにすっきりしているがそこは考えないようにしておこう。
ナナはまだ寝てる。もし寝ていたとしてもそこまで長くはないだろう。
まだ日は高いし。
甲板に出る。船は結構揺れるものだと聞いていたけれど余り揺れていないのは船が大きいからだろうか?
海の上から海の中を見ようとしたが、なかなか見ることは出来ない。
仕方ないのでちょっと遠くを見ると水中に大量の小魚の魚影が見えた。
ぼーっとその魚影が泳いでいるのを眺めていると静かに大きな魚影が忍び寄っていった。
「あ」
小魚たちはその影に気付けなかったのだろうか、大きな魚影はその群れに食いつき散り散りになってしまった。
自然界は海でも厳しい。
空にはカモメが飛んでいる。あ、カモメは嘘で名前は不明。
ただカモメっぽいってだけだ。カモメは確か魚を食べるんだっけ?実際海の中へ一瞬潜って出てきた。口には小さな魚をくわえていて、潜った位置は気のせいかもしれないけどさっきの小魚の群れの少し外側だった気がする。あの群れ散々だな、気のせいかもしれないけど。
海を眺めてその生態系に思いを馳せていたらナナも起きてきた・
「何してるの?」
「海を眺めて魚を憐れんでた」
「本当にまっ平だね」
「そんなに地平線とか水平線とか好きなの?」
「そういうわけではないけど一番すぐに目が行く」
「物好きだね」
「だから好きな訳じゃないってば」
「そっか…」
「どうしていまいち納得してなさそうなの」
「あ、それより鳥が飛んでるよ」
「…そうだね」
「さっきまであれが魚を捕るさまを眺めながら自然界について考えてたんだよ」
「水平線に目が行く私よりも特殊な趣味してると思うよ」
「そうかもしれない」
「あ、そっか」
「ん?」
「海にも魚がいるのか」
「その言い方、ひょっとして川魚しか知らなかった?」
「海と川だと違うの?」
「味覚がそこまでよくないから味の違いとか俺はよく分からないけど、結構特徴が違うみたいだよ」
「そうなんだ、食べてみたいな」
「食べよう食べよう」
そういえば東の方の大陸にある国はヤマトとかいうんだっけ、明らかに日本っぽそう、島じゃなくて大陸の様だけど。習慣的にも日本から来た人が作った国だよな、もしくは全く関係ないけど似てしまったのか。
「ね」
「ん?」
「いつか食べようね」
「そうしよう」
しばらく話してると日が傾いてきた。
空がだんだんと赤みを帯び始め、海も日差しを反射してより一層キラキラと輝き始めた。
目的地は遠いのだろうか?
遠くに陸地が見えた気がしなくもないけどそっち方面に行かないあたりきっと目的地ではないのだろう。
というかあの陸地氷じゃない?ひょっとして極地が近い?
でも遠くにうっすら見える程度だしなお遠ざかっていくしよく分からない。気にしなくていっか。
「暗くなってきた」
「この船って明かりあるのかな?」
「分からない、だけど」
「あ、そうだね自前で用意できるじゃん」
発光石を作る。
落とさないように気を付けて発光石を持っておく。
おかげで暗くて不安になることもないだろう。ナナが
「ね」
「ん?」
今度は立場が逆になった。
伝わらないのも当然だ。というよりも、分かっていて訊いた。
ナナは訝しんでいたが俺の態度から理解できなくていい物だと気づいたようだ。
カン、カン、カン
甲高い足音が近づいてくる。誰だろう?
「こんばんは、ずいぶんと珍しい宝石をお持ちのようですね」
顔の向きからも俺に話しかけていることは確実だろう。
「この石ですか?」
「はい、出来れば私に譲っていただけませんか?」
綺麗な服を着た背の高い男性だ。手にはランタンの様な物を持っていて、その中には火…のように見える石が入っている。
「それは良いですけど」
「ありがとうございます」
「でもこの石時間経過で消えてしまうかもしれませんよ?」
試したことはないけど。
そういってみると、男性は石をじっと見つめて
「いえ、構造がとてもしっかりしています。これなら消えることはないでしょう」
「良かった」
「ですが」
「ですが?」
「この宝石、魔力で出来ているのですね」
「そうです」
「土属性魔術系統の派生スキルでしょうか」
「分かりません。でも自分は土魔術使えませんよ」
「分からないのなら仕方ありませんね。人工の物でも美しい物はやはり美しい。これは頂きますね」
「はい、どうぞ」
発光石を手渡す。
「そうです。代わりにこれをあげましょう」
その男性はランタンから火の力がこもっているであろう宝石を取り出した。そういえばこのスキル石食べて獲得したなあ。
「ありがとうございます」
「いえいえ、それでは私はここで」
そういうと男性は船内に入っていった。
「あったかい」
いつの間にかナナに取られてる。
石の温かさが無意識のうちに恋しくなった事でずいぶんと寒くなっていることに気付いた。
「船内に戻ろうか?」
「確かに寒いね、戻ろう」
このあたりが特別なのかは分からないが、海の上はどうやら寒いようだ、風も強いし。
船内に戻り、部屋に入る。
「ナナ床で寝ていいよ」
「いいの?」
「うん、俺はやりたいことがあるし」
「それは何?」
「言ったら引かれそう」
「…分かった、じゃあ訊かない」
「ありがとう、お休み」
「お休み」
さて、ナナも寝たことだし、
試したいことがある。
さっき貰った火の石を取り出す。でもなんか食べれなさそうなんだよな。
あの時が空腹の極限みたいな状態だったからこその可能性がある。だからまだ判断するには早い。
勇気を出して齧りつく。
かちん
あの時はかみ砕くことこそできなかったが、何故かいい感じに吸収することが出来た。でも今は吸収することもできないから諦めるのが得策だろうか。いやでもまだ諦めない。
しばらく奮闘したけどどうやら無理そうだ。まあ仕方ない、今日は寝よう。部屋の隅で座り込む。眼を閉じたら段々と眠くなってきた。
にしてもこの姿勢で寝れるなら交互に寝る必要なかったな。
明確な思考はそれを最後に途切れてしまった。
眠るとは言ったものの、そんなにすぐに寝れるわけでもなく、結局フェリックスが宝石と格闘しているのをずっと眺めている。
宝石に噛みついて吸収しようとしている。それを見ながら眠りに落ちていく。うん、納得がいった。それじゃあ今度こそ寝よう。
見覚えのない場所を、低い視点から眺めている。
そこは暗くて、俺は全く動かないで、もう一人別の誰かの声が聞こえる。だけどその姿はみえない。声の内容までは聞こえないけど、この声は聞き覚えがある。確か…そうだ、スキルを獲得した時の声だ。
これは夢だ。もしかすると見知らぬ誰かの、それは凄く不気味だ。だけどやっぱり興味があるので見てしまう。
もう一度夢に埋没する。




