088 洞窟で見る晴れの空
大分間が空いてしまいました。申し訳ないです。
落ちる俺の体を救い上げるようにナナの髪の毛が巻き付く。
不真面目な方の兵士は地面に着地し、何本もの短剣を投げ今度はそれで俺を落とそうとしている。
実際命中精度はかなり高く、何度も何度も髪を断ち切られている。
ただナナも物量作戦で行くようで、何本も髪の毛を飛ばしている。
ナナの顔を見ると歯を食いしばって切れた髪の毛を斬れたそばから伸ばしている。ナナは髪の毛を平気で酷使しているようなイメージがあったが、
流石にここまで斬れたそばから伸ばすという事をしていると痛みがあるのだろうか?ナナの負担を少しでも減らさなきゃいけない。
でもここから攻撃するとなると難しいのかな?
相手の妨害をするとなると…
毒を撒くか。
たとえ防具に耐性があったとしても短剣の方まで耐性があることはないだろうし、毒で溶かしてしまおう。
ただひたすら量を増やす事のみを考えて毒を撒く。一つ一つ狙うのは無理でも短剣の数を少しでも減らす。
自分と少し離れたところを狙えばナナの髪を溶かすこともない。
毒のおかげで髪を断ち切る短剣の数が減り、かなり切迫した戦いだったが、それでも何とか俺は上に上ってこれた。
横に立つナナは疲労困憊といった様子で、これ以上続けば俺を持ち上げるのもかなわなかったかもしれない。
「まだ歩けそう?」
「全然余裕」
という事なのでナナを信じて洞窟から出ることにしよう。
ここを出ればとうとう国境越え間近だ。
「大丈夫かよ」
「ああ、心配ない。だが、しばらくはそこまで動けそうもない。この壁を登るのなんてなおさらだ」
「じゃあ、俺に任せろよ。へへ、機動力には自信があるんだ」
「すまない」
「お前がどうしてだ?」
「さっきの毒を受けてしまった。防具の限界が来ていたのに気づかなかった。私の過失だ」
「へへ、情けないな」
「そういうお前もボロボロだがな」
「それは仕方ないだろ、毒の罠を無視してあいつらを探したんだぜ。へへ」
「そういう執念に関しては頼もしいな、では頼んだ」
「へへ、それは褒められた気がしねえな」
返事がない
休息状態に入った様だ。長い付き合いだからこそ分かる。
特にスキルを使っているわけでもないし、寝てもいないのにもかかわらず、まるで死んだかのような休止状態に入っているのだ。
休めるときに休む、を徹底するために編み出した彼なりのやり方だ。
「へ、吉報を待ってろよ。相棒」
歩みは遅くとも、確実に外に近づいている。
その証拠に光がさしている。
ふらふらしながら歩いているナナの背中に手を当てて支えながら
洞窟の出口をくぐる。
目の前には前に逃走した関所とはずいぶんと様式が異なるずいぶんと巨大な関所がある。反対側に目を凝らすと自治区側の兵士が待ち構えているのが分かる。そこに人が走っていっている。そしてその人が何事か伝えて、
彼等の背後の洞窟の入り口に何名かが走っていった。
情報が伝わった様だ。でも、一歩俺たちが速かった。
これもナナのおかげだ。
「ナナ、君の頑張りのおかげで何とか関所までたどり着いたよ」
「それは良かった」
関所の内部に入るまでは何も言われなかった。
内部では椅子がベンチのように並んで配置されてあって、さらに兵士が警備をしていた。
「君達、どうしたんだい?」
「あの森を抜けてくる最中で」
「ああ、そういえば【竜斬り】殿からの情報で森からくる二人組がいると伝わっていたな。その二人は信頼しろと言われていたな」
アルトさんとても働き者だ!感謝しなくちゃ。
「そういう事なので君たちを歓迎しよう。このままここを通るか?それとも休んでいくか?」
「どうする?」
「水が欲しい」
「らしいので水を頂けると嬉しいです」
「分かった。用意しよう」
「椅子に座ってたら?」
「そうしようかな」
椅子に座って水を待つ。
静かに何も話さずに。
その静寂を破るのはさっきの追っ手だ。もうシューラッドの領地内に入ったはずなのに、まだ諦めていない様だ。
しつこいというか執念深いというか。
「どちら様でしょうか」
兵士が対応している。
俺はこの場合その場に出た方が良いのかどうなのか
判断が出来ない。
さっき水を頼んだ兵士が戻ってきた。
「なんか来てるみたいですけど、自分たちも出ていった方が良いですか?」
「いや良い、むしろ先に行った方が良い」
「分かりました。じゃあ先に行かせてもらいます」
「そうしてくれ」
「ナナ、水は飲み終わった?」
ナナが頷く。
よし、じゃあ出発だ。
外に出たらもうシューラッド、きっとライベもすぐそこだ。
口論を背後に歩き出す。元気を取り戻したナナと一緒に。
「ここに二人組の冒険者が来たはずだ。その二人を渡せ」
「何でですか?」
「その二人を追っている。我等の都市の王城を破壊したからな」
「なあ、俺らいる必要あるか?」
「お前は黙っていろ、あの二人組を追うのを任されたのは我らなのだから」
「そうだけどよ、向こうの領地まで追いかけたらさすがに正当性主張しきれねえぞ」
「それはともかくだ」
「もう帰りたいんだけどなあ」
「少しは真面目になれないのか?」
「生憎相棒のようにはいかねえよ」
「誰が誰の相棒だって?」
「へへ」
「そもそもその話に会う用紙の二人組はこの関所にいません」
「そのはずはない。確かにこちらへ来たと彼らが言っている」
「マズイ、話振られた。相棒頼む」
「はぁ、確かに彼等はこちらへ来た。けれど本当にいないのなら、もう関所を発った後なのではないだろうか?」
「そういう事か!汚え」
「それ俺たちがいえる事か?」
「なんだ?傭兵のくせに!」
「へへ、こいつ…」
「落ち着け、そしてお前は不和を呼ぶな」
「へへ、相棒。こいつだけは」
「だから落ち着けって…部隊長、今回は一度撤退しましょう。この様子だともう追えなさそうです」
「くっ、あの【竜斬り】のせいで!」
「へ、むしろこの前救われてるんだから感謝してもいいぐらいだろ、死人出てないうえに被害も最小限だし」
「この!」
「だからお前は本当に…」
両側で騒がしく口論する二人を何とかなだめながら彼は陣営に戻る。
その顔はわずかに悔しそうだ。
今までの殺伐とした旅路とは打って変わって牧歌的というか平穏というか
そんなのんびりとした帰り道だ。
「水分足りてる?結構日が照ってるけど」
「今はもう大丈夫だよ、さっき結構補給したから」
「良かった。攻撃に水分を消費するの?」
「そうだよ、魔力そこまで使わないのはありがたいんだけど」
「お腹は空かないの?」
「そっちはそこまでかな?なんでかは分からないけど結構少食って言われた」
「水袋とか常備しておいたら?」
「それも考えたけどお金がなかったから」
「じゃあ今後の戦力強化のためも兼ねて水袋買っておくか…多分それくらいならねん出できるはず」
「その手を治すのは買わないの?」
「あ」
「お金足りる?」
「足りないかも」
「なら別にいいよ、今でもまあ十分活動できるし」
「でもさっきみたいに倒れるかもしれない」
「これからもあれほど酷使すること前提であることに驚きを隠せない」
「そういう意味ではなく!」
「でも、そういう意味でしょ?」
「違うよ!でもなんでか俺は異常に強い魔獣とかに遭遇することが多いから、苦戦しない戦いばかりっていう状況が想像できなかっただけだから」
「ずいぶんと大変な道のりだったんだね」
「大変だったよ、でもそれと同じくらいとんでもなく強い人たちにも出会えたよ」
「良かったね」
「うん」
「あれは?」
「お!」
ライベの城壁だ!遂に到着!
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/30 防228+45 魔167 精192+20 俊121 器121
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣 結剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装 定鋲 投擲補助
「おーい、皆さん。もうそろそろ彼等、帰ってきますよ」
「!」
「良かった、じゃあもう今日からずっと休んでいいね~」
「ローシェさん最初に浮かぶ感想がそれなんすか」
「彼等とは?」
「あ…いやなんでもない。忘れてくれ」
「忘れるのは無理だ」
「じゃあ帰ってきてからのお楽しみ、で」
「そもそもどこに行っていたんですか?」
「シューラッドの中の自治区」
「それは大変そうだな~」
「ああ、でも彼等はちゃんと帰ってきたようだよ。関所からの情報によると」
「誰だろうな~」
「さすがに知らない人だろ」
「それはそうだけど!」
「ま、今心配しても仕方ないですし」
「じゃあそういう事でまだしばらくここに居させてもらいます」
「はいは~い」
1章ももうすぐ終了です




