082 大穴観察日記2
短めです。
二十一日目
ここに流れ着いて3週間になりました。ここにはどうやら2種類の生き物がいるようです。
一つは穴の中に住む魔物、もう一つは真っ白な動物たちです。
真っ白な動物たちは私に食事を届けてくれます。
今のところ見た動物は、鳥、熊の2匹で、それぞれ同一個体っぽいです。毛並みの模様が同じなので。
それと、その2匹に共通するのは額にひし形の模様があることです。
ただしそこも少しだけ色が濃い程度なので見にくいです。実際しばらく気づけませんでした。
今となってはこの子たちもかわいい家族です。
よしよし2人共。じゃなかった、2匹とも。
ちょうど今2匹ともいるので撫でてあげます。
二十二日目
大穴に空いた横穴の一つから小鳥の頭がのぞいています。魔物は繁殖を行わなかった気がするので新しく発生した個体でしょうか?
あそこの位置を記録しておきましょう。図で残しておくのはいいかもです。これからの成長を楽しみに待っています。
「いつになったら分かるんだ?」
「あなた方の言っていることは一向に起きません。あれは単なる伝承です」
「そんなわけがないだろ、白い肌で白い髪の子は災いの子。禍白の子って言葉はずっと昔からある常識だ」
「じゃあその災いはいつ来るんですか?」
「今かもしれないし、もっと後かもしれない。だから今すぐにその子を捨てろ。ちょうどいま海が目の前だ。さあ、早く!」
「嫌です」
「拒むな。この後が面倒になるんだ」
彼女は目線をそらさずずっと相手を見続ける。
「お前がたとえ周囲からの圧力をはねのけてもお前とその子が生き残れる打得kの物資は周囲の支援からしか得られない。お前が生き残り、その子が死ぬか、お前とその子が死ぬかの二つしか道はないんだ。冷静に考えろ、どちらの方が人が救える?」
「私が死んでも構いません。この子を生かす道を模索し続けます」
「お前がその一人を助けようとしたために災いによって何人が死ぬか!どれだけの被害が出るか!」
「そもそも、災いが起こらないかもしれないじゃないですか!」
「その可能性に賭けるのか、お前は!娘可愛さに民族全体に甚大な被害が出るんだぞ!」
彼女はその言葉の後黙ってしまった。
何日も何日も考え、やがて人と関わらなくなっていった。
その間にも、決断を急かす声は強まっていった。
移動組み立て式のテントの奥から石が投げられた。物資の遮断が始まった。日に日に彼女はやせ細っていった。
それでも、彼女はその子を守ることをやめなかった。
そして、その日が来てしまった。
朝から砂煙の濃い日だった。
太陽の光は見えなかった。そのためとても暗かった。
彼女はその日の朝早くにテントを出て外でその子をあやしていた。
彼女は祈っていた。その子に無事が訪れることを。
暗い雲が立ち込める空に負けないように祈った。
事実、もうその子の行く先に暗雲が立ち込めることはないだろう。
その子の道は純白に染まっている。
ただ、その道に至るまでには災いが必要だ。コウノトリが子供を運ぶ伝承のように、砂嵐は結界を抜け出せる子供を運ぶ。
極北の地へと。
多くの死人が出た。
通る砂嵐は人を運ぶための物。
必然的にその力は馬鹿にならない。
その砂嵐での死者は多かったが、行方不明者はただ一人だ。
その一人が今、極北で悪夢にうなされている。
その隣には彼女の様に純白の動物2匹が控えている。
今日も、悪夢を見た。
今日の夢は流される直前の夢だ。
そうだ、二十三日目
今日は朝から何やら2匹が騒がしいです。どうしたのでしょう?
どうやらどこかへ連れていきたいようですが。
取り敢えずついていきましょう。
とても長い事歩いています。
やっと見えてきたのは洞穴です。
切り立った山のふもとに空いた穴です。
熊はその中に潜っていきます。鳥は空へ飛んでいきます。
私は空を飛べないので穴を潜っていきます。
中は平たんな道です。上りも下がりもせず、ただ山の中心へ向かっていきます。何があるのでしょう?
楽園でした!かわいいが溢れています!
あ、白い動物のたくさんいるところです。どうやら山の中心は山がないようで、その内側が広い空間になっています。相変わらず真っ白ですけど地面には草も生えています。そしてそこには何匹もの動物が棲んでいます。
ただ、熊や鳥と違うのは額にひし形がない事です。
何が違うのでしょう?
熊や鳥が何かをアピールしています。何でしょう?
分からないのでかわいい動物たちと遊ぶことにします。
二十四日目
昨日はこの楽園に泊まりました。大穴観察をしないことも増えてきたので日記の名前を改めないといけないかもしれません。
でもとりあえず今は良いでしょう。
昨日半日と今日の朝とで何匹かの動物と仲良くなりました。
まずは犬です。そして猫。さらには羊に兎。そして最後に梟。
鳥が2匹になってしまったけど両方かわいいから良いのです。
名前でも付けてあげたいです。
でも今は思いつかないのでとりあえず今日は大穴のところに戻りましょう。
付いてきました。当然なのかもしれませんが合計七匹が私の後を付いてくるのはかわいいです。
よく見ると新しく仲良くなったほか5匹の額にひし形が出てきている。
もしかしたら私と仲のいい動物には額にひし形が出るのかもしれません。
…どうして?
帰ってきました。
なにやら落ち着きます。これからはこの土地で七匹と一人生活です。
私の生活はこれから変わるのでしょうか?
二十五日目
また少し仲良くなりました。この子たちはいったい何を食べるのでしょうか?そもそも私に食事を持ってくることはあってもこの子たちが食べているのは見たことがありません。聞いてみたのですが、当然この子たちが言葉を話せるわけがないのです。なので仕方なく撫でるだけにしておきましょう。よしよし
この子たちは大人しく撫でられています。だんだんと距離感も縮まってきている気がします。
二十六日目
大穴の横に空いた穴に住んでた小鳥が飛べるようになっています。
今日飛び立って大穴の中を飛び回っています。
今日の出来事はこれぐらいです。
二十七日目
今日朝起きたら七匹が寄り添って私にくっついて寝ていました。
とても嬉しいです。
この子たちは本当にかわいいです。
撫でる手が止まりません。よしよし
さて、今日は少しだけ特別な報告を日記に書き留めておきます。
鳥二匹がいなくなったと思ったら水晶を持ってきたのです。
それに触れたときにある…お告げ、というのでしょうか?天啓というのでしょうか?とにかくそういう物が来たのです。
でも、その詳細をここに書くことは出来ません。
告げられるときに禁じられてしまいました。どうやら私がここにいるのも偶然というわけではないようです。そして敵がいるようです。
上手くつながってなくて分からないかもしれないですけど、こうするしかないのです。もしこれを読んでる人がいるのなら、許してください。
こうするしかないのです。
でも、その日までにはしばらく時間があるので日記は全然続けられます。
四十二日目
この子たちはあんまり変化がないですね。
成長が遅いのでしょうか?それともこんな短期間で変わる物ではないのでしょうか?短期間で変わる物ではなさそうですね、仕方ない。
成長が楽しみだったのですが
四十五日目
遂にこの日が来ました。
このことは知られても大丈夫そうなので言いますが、私はこれからあの神殿に行きます。何かの儀式をするようなので、この7匹は連れていけないかと思ったのですが、どうやら連れて行けるそうです。
もしかしたらこの先もう日記は書けないかもしれません。
だから、最後にお別れの言葉でも書きますか?
いえ、辞めておきましょう。
またかけるとなった時に気まずいですしね。
じゃあ最後はこう締めましょう。
行ってきます。またいつか。
未だ誰にも気づかれていない。
勢力は傾いていた。
しかし、やっと均衡へと向かい始める。




