077 僕の名前
「そういえば名前聞いてなかったですね、教えてください」
「僕も聞いてないな…」
「じゃあどっちから?」
「君からがいいかな」
そういえば…
まあいいや
「俺の名前はフェリックス、です。そちらは?」
「…ごめん、言ってなかったけど名乗るような名前持ち合わせてないよ」
「だったらきみ「から」って表現しないでよ」
「いやー本当にごめんな」
「じゃあ今名前決めてよ」
「え、そんな無茶ぶりするのか!?」
「いや、こちらが名乗った以上名前は聞きたい」
「むー、でもどう決めれば」
「自分の特徴というか…無いの?」
「えーいうなれば辺境鍛冶師」
「え!?鍛冶師なんだ!?」
「ん?そうだよ」
「じゃあお願いがある」
「何?」
「この黒覆布の修理を」
「これ装備できないでしょ」
「出来ない」
「そもそもなんで腕ないのさ」
「それには深い理由があるんですけど、話すと長くなります」
「ふーん、治す方法はあるのか?」
「自然治癒」
「ん?人外?」
「その可能性が最近否定しきれなくなってきてる」
「話がだいぶそれたね、僕に任せていいよ。これでも本職は鍛冶師だからな」
「頼む」
「その短剣とか強化しなくていいのか?」
「え?してくれるんですか?」
「うん、いいよ」
「じゃあしばらく待ってて、あ、そうだ。その間に僕の名前考えておいてくれると助かるな」
楽しみだ。
君がどんな名前を付けてくれるんだろうなって思うよ。
僕はずっといろんな人に嫌われてきた。それも当然だ。僕の見た目はたとえ獣人だとしても醜すぎる。僕はどちらかというと人獣だからな。
だから、この森に闇魔術を使った暗闇の結界を張ることで隠れた。
シューラッド王国とジスタ自治区の狭間の地帯でどちらも鑑賞しにくいところに隠れてしばらくの安寧を得た。
それも最近は暗闇を利用した強盗の場になったりと悪用が多くなってきた。何度倒しても同じようなことをする輩は絶えなかった。
よし、だんだんと作業も進んできたぞ
留め具のところがぶっ壊れてるようなのでそれを取り付けるだけでもよさそうだ。そして肝心の短剣に関してだがこれは大きく改変しようかな。
いやあ、ぜひとも驚いてもらいたいなぁ
さて、君はどんな名前を付けてくれるかな
名前思いつかないな…
どうしよう
意味を意識してつけたいな。
でもなあ、人に名前を付けるとかしたことないからなー。
どういう名前を付ければいいのかも全く分からない。
…そういえばそもそもあいつの性別ってどっちだ?
思い返すとどっちとも取れるようなことが多かった。
鍛冶師、鉄を打つ、武器を鍛える、他には…
…よし、決めた。
「出来たよー」
「ありがとう」
「これと、これだな」
「おおー」
黒覆布のほうはあまり変わっていない。というよりも、元に戻った。
ステータスは
黒覆布
防+20 精+10
耐40 重5
完全再現ではないけど、ステータスの強化の振れ幅がなくなったて汎用性は増えたんじゃないかな。金具の部分の材質は黒くなっているが気にするようなことじゃないだろう。鱗鉄短剣に関しては、強化という感じではないが俺に会うように作り直されている。例えば、装備のスキルに『定鋲』という一度刺したら抜けにくくなるスキルが追加されていたり、『投擲補助』という投擲時にわずかに狙いの方向に軌道が修正されるスキルが追加されていたり、という風にだ。その代わり攻撃力補正値が減っているけど。ステータスは
黒鱗短剣
攻30
耐35 重7
装備スキル 定鋲 投擲補助
名前も変わってる
まとめると『結式・滑り蹴り』を使う時により無茶な動きが出来るようになった代わりに攻撃用としては使いづらくなった感じだと思う。
にしてもこいつよく見てるな。俺がこいつに見せた戦闘は一度だけだぞ。
そのことについて質問すると
「侵入者の情報を素早く正確に入手することが僕の延命につながるんだな」
と言っていた。
そして鱗鉄短剣の見た目の変化だが、刀身が黒くなった。こう見るとすべてが黒くなってるな。こいつの趣味か?それとも加工の過程でやむを得ずか?まあどっちでもいいか。
「ところで…僕の名前の事…」
「ああ、大体決めた。けどその前に聞きたいことがある」
「?なんだよ」
「お前の性別って男?女?」
「さあ、どっちでしょうな?」
「…はぐらかされると困る」
「何で?」
「名前は男の場合と女の場合で場合分けしてるから、決められない」
「それは困ったねー」
「だったら明かしてくださいよ」
「それはやだね、僕にも矜持ってもんがあるんだよ」
「どんな矜持ですか」
「とにかく、おとなしくどっちにでも適用できる名前を考えるんだな」
どっちにも適用できる名前?
ゆうき、かえで、あおい、とか?
日本っぽい名前だから変えた方が良いだろうな。
「武器黒くなってるのはどうしてですか?」
「僕が加工するのが一番得意な素材が黒いから」
「そうなんだ」
じゃあ、黒っていう要素から名前を付けたいな。
でもクロじゃ猫みたいだから黒の頭のK、もしくは名前っぽくしてケイ、
うーん、しっくりこない。
鍛冶師らしく金属の要素も入れて鐵?そこから一部抜き取ってロガとか、安直すぎるかな?
「ロガでどう?」
「何をどうしたらそんな名前が思いついたのかは分からないけど響きは気に入ったからそれでいいよ」
「良かった、それなら嬉しい。ところで候補としてはクロってのもあるんだけどどっちがいい?」
「シンプルさで言うとクロだけど…ロガっていう不思議な響きを気に入ったからロガにするよ」
「結構気に入ったんだね」
「こんなへ…おも…不思議な響きの名前だとは予想してなかっただけにね」
変?面白い?
「馬鹿にされてる?」
「そんなわけないじゃないか!感謝してるよ」
少しだけ話をした。ロガがこの土地に暗闇の結界を這って隠れている理由が少しだけ分かった。
そして、ここを出発することにした。
ビルトを探して戻らないといけないからな。
「それじゃあ地図を持っていきなよ、冒険者を追い出したときに落としていったものだけど地名も書いてないし僕では使えないから」
「くれるの?」
「あげるよ」
「じゃあありがたく」
「じゃあ、またね」
「君の体の謎は気になるから解明されたら報告に来てなー」
「分かった」
手を振って外に出る。暗闇の結界は外からはあることが分からない仕組みになっているようだ。
さあ、引き続きここがどこだか調べよう。
で、
「これどこが何処でここは何処だ?」
地図の向きも書いていない。国境がないのでシューラッドの地図だと思うのだが…もしかして別の国の地図って可能性もあるのか?
そうだ。知ってる地形を探そう。
あ、この特徴的な湾の形、これビットだ。
じゃあライベは…
どれだ?いくつかの候補があって一つに絞り切れない。
サーター山とトラドを探してそこから探すか?
この地図は町のマークと山のマークが記され、川が二重線で、主な街道が一本線で表現されているだけだからとても見にくい。
それでも何とか少しずつ解明していった。
「これがもしかしてレイヴンとプラクト山か?じゃあその大分北にあるこれがエイン?エインってこんな北の端だったのか」
俺の通ったルートを指でたどる
「で、中央を川が通っていて…この表現って崖か?だとしたらこの辺で戦ってて、落ちて、」
その先が分からない。竜の住処、みたいな表記は見当たらないし、
この辺の地形をあまりよく理解してないからっていうのもあると思うけど
地図を見ながら歩いていたら話声が聞こえてきた。冒険者のパーティらしい。ラッキーだから質問してみよう。
「もしもし、ここってこの地図だと何処に当たるんですか」
「お、冒険者、凄く若いな。見せてくれ」
「あ、固まった。これわかんない時だ。頭悪いのにかっこつけんなよ」
パーティのリーダーっぽい人が部下っぽい人に辛らつな言葉を浴びせられてる。
固まったその人から地図を取り、自分で眺め、教えてくれた。
「ここだと思いますよ、頑張ってください」
「ありがとうございます」
「じゃ、ぼくらはここで」
いまだに地図を持っている形で固まったリーダーっぽい人を引きずってパーティは去っていった。
にしてもそこか。意外と離れてるな。
そして地図によると山地の様なものがある。そこまで大きくはないが、この地図では高さが分からない。超えられるかは不明なのだ。
「ん?もしかしてここってあの竜の住処があった所じゃないか!」
離れていたとは
まあでもどっちに行けばいいか分かったのは朗報だ。
早速そっちへ向かおう。
魔獣に出会った。そこまで強力な魔獣ではなさそうだが、相手は複数いる。果たして勝てるかな?
でも、アルトさんに自信のできる下地を作ってもらったんだ。
そこに結果を植えていこう。そして咲いた花たちは俺の事をきっと後ろから照らしてくれるから。
結果から言うとあっけなくなっちゃうから嫌なんだけど、勝ちました。
魔獣たち四匹は全員倒れてる。でも正直短剣が改良されたおかげだ。魔獣に刺して巻き戻して体を引き寄せて間合いを詰めるっていうのが出来るようになったのは大きい。まずは一つ、種を植えられた。
喜び勇んで解体していると
「オオオオオウ」
遠吠えのような鳴き声と共に、仲間と思われる魔獣が来た。最悪のタイミングだ。『結剣』は手に短剣を固定するのに使っちゃってるから一度解除しないといけない。だから
「『結剣』解除、そしてもう一回『結剣』」
でも、ここまでだ。間に合わなかった。もう、牙が迫って…
「今日の、獲物!」
…ビルトとはぐれてから、出会いが絶えないな。
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/30 防228+45 魔167 精192+20 俊121 器121
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣 結剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装 定鋲 投擲補助




