076 辺境鍛冶師
「む、黙っているのならもう一度聞くぞ。して、誰だ君は?」
「若干語順が変わってる」
「うるさい、僕の質問に答えるのだ」
「こっちもたくさん聞きたいことはありますけど…答えますよ、俺の名前はフェリックスです。シューラッドから来たので近くの町に入れなくて歩いていたらここに着きました」
「…真っ暗な森だから帰ろうとか思わなかったのか?」
「いえ、別に」
「な!」
「え?」
「変なハイエナに住み着かれるわ部外者は追い出せないわで僕の結界が機能してないではないか!」
「いや俺に言われても…」
「ふんだ!じゃあさっさとこの暗闇から出ていけ、僕だって暇じゃない」
「あ、こっちも聞きたいことが!」
「…なんだ?」
そんな睨まなくてもいいじゃないか
「何でそんな見た目なんですか?」
あ、地雷だったみたいだ。
睨みつけが一層強くなる。
突然現れた人語を話す謎のシルエットだけなら獣人に見えなくもない生き物は俺の問いかけで気分を害した様だ。
この人の見た目はとても不思議だ。
まず頭には大きな耳が生えている。
そしてその耳が通せるようなヘルメットをかぶっており、そのヘルメットは顔の上の部分だけ材質が異なり黒色だが、他の部分は灰色だ。
目はいわゆるオッドアイで、右は全て真っ白で、左は虹彩が灰色、同行が白色だ。人間にしては虹彩と瞳孔の部分の比率が大きい。髪はヘルメットによって完全に隠されていて分からないが、横髪だけはヘルメットの隙間から垂れて顔の横を覆っている。
鼻の一番上には黒い小さな奴がついている。動物の鼻についている者の様だが、小さすぎて普通の人の肌と同じだったらほくろと見間違えそうだ。
そう、この人の最大の特徴は普通の肌じゃなくて、動物の毛皮のような肌だという事なのだ。それは全身を通して変わらない。
肩には小さなマントをかけていて、右肩から左肩へ向かうにつれて面積が増えている。手には何も付けていない。しかし手の指?は黒くて硬い爪のようになっている。まっすぐで関節もなさそうなので物をどうやって持つのか分からない。腹から腰までは金属のプレートで出来た鎧の様な物を着用している。そして足の外側はその鎧の下から同じく金属のプレートで出来た鎧の様な物が出ている。腰の方は大きなプレートを前、横、後ろに会うように加工してつなぎ合わせた感じだが、足の外側を覆う方は、小さなプレートを張り合わせて作った感じになっている。
下半身の服装は、ぶかぶかだが、裾のところに留める金具の様なものがあるため動きに支障はなさそうだ。
「何をじろじろと観察する様に眺めているのだ!」
「ごめんなさい」
「とにかく!さっさと出ていくんだな。」
睨みつけと共にしっしっと手を振る動作。
じゃあ仕方ない、出ていくか。でもお礼はしておかなくちゃ。
「ありがとうございました」
「何のお礼だ?」
「さっき変な三人組に襲われてたのを助けてもらったお礼です」
「それか、お前を助けたわけではないが、結果的に助かったのなら僕のこの恩を忘れるなよ、そして出ていけ!」
出ていけを忘れない。
仕方ない。せっかくの情報収集チャンスだったけどまた別の人を探すか。
「…ん?そこのお前、どうした?なんかおかしいぞ?」
え?
おや?なんか急に眠気が…
ああ、あれか。最近よく来る唐突な眠気か。
あの人の迷惑になるからせめて暗闇の外ま…で…
あ
「寝やがった、こいつ僕の結界の中で寝やがった」
暗闇の中で一人の人間?が少年を前にしてうろたえる。
「いやでも、あの状態なら仕方ないか…でもどうしてそうなるんだ?」
少し上を向いて目を瞑り考える。
「押し出すか?でも人里に近づくのはリスクが高い」
首をかしげる
「放置するか?でも目覚めた後にここの事を言いふらされたりしたら困る」
反対側に首をかしげる
「じゃあ回収するか?でも口止めをちゃんとしないと放置するよりもリスクがある」
そこで目を開けて
「でも、回収すれば研究できる。どうしてこういう状況なのか聞きだせる」
はあ、とため息をつく。
「仕方ない、回収するか」
少年の体を軽々持ち上げて担ぎ、人間?は自身の住処に運んで行く。
その顔は興味津々といった様子だった。
「むう?魔力の流れは正常だ。でもなんか変だ、何が原因なんだ」
腕やらお腹やらを押されたり硬い物でつつかれたりする感覚で起きた。
「口止めのためにも解剖して殺しておくか?そうすればわかるかもしれない」
「何物騒なこと言ってるんですか!」
「ちっ、起きたか。今いいところだったのに」
「何をしようとしてたんですか?」
「そう焦るな。ただ単にお前の体の異変の原因を突き止めようとしていただけだ」
「それならいいんですけど」
「まあその手段が解剖なんだけどね」
「それは良くない!」
「お前は受け答えが面白いなぁ」
「取り敢えず早く本題に戻ってください」
「分かった分かった。では改めて」
お、雰囲気が変わった。
「君の体の異変の事だ」
「異変って何ですか?」
「お前のその唐突な眠気の事だよ!よくなるんでしょ」
「そうです」
「だからその原因を調べたんだよ」
「おお!じゃあ教えてください」
「簡単に言うと、体が成長してない」
「でも短期間に体が成長するわけなくないですか?」
「あー、語弊があったか。えー分かりやすく言うと体が変化していない」
「つまり?」
「え?分からないの?」
「煽りにしか聞こえない」
「じゃあそんな君に詳しく解説、例えば剣を振り続けたら腕に筋肉がついていく。ひたすら走れば足が逞しくなっていく。でしょ?」
「ですね」
「だからつまるところそれが君には起きていない」
「つまり体がずっと同じ状態で変化してないと?」
「そうそう、だけどそれって結構変なんだよ。分かる?」
「んー、あ、もしかしてステータスが上がるはずがない?」
「そうそう、でも君ってステータス上がってるんでしょ?」
「はい」
「本来、体の変化に合わせてレベルが上がり、ステータスが伸びるんだよ、だけど」
「俺の場合はステータスは伸びてるけど体の変化がない?」
「そう、逆転してる。だから体の本来の性能よりも大きな働きをしなければならない」
「え、体が発揮する性能がステータス以下になるんじゃないんですか?」
「…今から説明するから黙ってて」
睨まれた。楽しい時間を邪魔されて不快に思ってるような顔だ。
「ごめんなさい」
「分かれば良い。君の体は今本来の働きよりも過剰に働いてる。だから体への負担が大きく、疲労がたまり、回復が追い付かなくなって、急に眠くなることが多い」
「でも体本来の性能よりも性能を発揮するなんてことあるんですか?」
「本来ない」
「え?」
「そこらへんはよく分からないけど一つだけ言える」
「それは?」
「君の体はその謎を解明しないと成長することもないだろう」
「マジか…」
「でも、ここで君に救世主が語り掛ける」
大げさに手を広げてポーズをとっている
「何言ってるんですか?頭おかしくなりました?」
所に水を差す。
「…調子乗らせてよ」
手が閉じて、睨まれる。
「ごめんなさい」
「まあともかく、僕は君のその状態を一時的に直す事が出来る」
「ほんとですか!?」
「嘘な訳ないだろ」
「僕に媚びてくれれば直してやらなくもない。はーっはっは」
「名前分からないけど、ほんと凄い人だなー」
あれ?反応が変わって真顔になった。まあいいや、ふざけるの続けよ
「侵入者に対しても優しさを見せるってほんとにいい人だなー」
笑いをこらえてる顔っぽいぞ?なにが面白いんだろう?
「しかも助けてもらったしなー、ありがたいな―」
「もういい、半分冗談のつもりだったけど意志は固まった」
あれ?声色が変わってる。おかしいな、不機嫌にするようなこと言っちゃったかな?
「そこに横になって」
「硬そう」
「贅沢言うな―!!」
「はいー!」
怒鳴られてしまったのでそそくさと横になる。さっきまで寝かされていたところだ。
「じゃあまたね」
「え?」
顔の上に黒く硬そうな爪の生えたモフモフしてそうな手がかざされ、視界が埋まっていく。
そして視界の八割が埋まった時、
意識が落ちた。
「お休み、僕の事を人って言ってくれた君」
その人は嬉しそうな顔でつぶやく。
「お礼に直してあげよう」
硬そうな寝台に背を向けて、魔術に使うであろう道具を取り出す。
「痛いかもしれないけど、起きないでね」
道具を寝台にかざす
「『調整』」
足元がふらつき、手で顔を抑える。
「ううわあ、情報量多いよー。僕これ苦手なんだけどなー」
その人の前にはいくつもの厚さがなく、四角い微妙に光ってる板が現れる。フェリックスが起きていたらディスプレイだ!と言うだろう。
もしくはウィンドウだ!だろうか?
「えー、ここを、こう?そしてこっちをこうする」
そこで不審な点に出会った様だ。
「おやあ、さっきまでのはステータスに能力を合わせる過程だったと思うけど、これって…」
そこにはコップの様な物が映し出されていた。
そしてそのコップは空っぽだった。
「成長のための素材がない?なら単なる栄養不足?それを聞いてみるか。素材補充は外からできないのに…」
さらに少しずつ各所を調整していく。
時間が過ぎていく。
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/50 防228+45 魔167 精192+25 俊121+2 器121-10
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣 結剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
「起きろー」
ん?
「刺すぞー」
!?
「もしくは頭突くぞー」
「最後のでお願いします」
「それはどういう意味だい?」
「頭気持ちよさそうだなーって」
「ちなみに帽子の硬いところで頭突こうと思ってる」
「それは勘弁」
「じゃあさっさと、ってもう起きてるじゃん」
「そうですね」
「君成長のための素材がないらしいけど」
「おかしいな、食事ちゃんととってるんだけど…」
「じゃあ、それ以外の物なんじゃないかな」
「そんなことあるのか?」
「冗談だよ」
「おい」




