070 野生の猿の群れ
眠いです。寝かけました。
石が飛んできていた。
そんな子供のいたずらみたいなこと誰が?
飛んできた方は後ろだ。
後ろをよく見てみると、深い森の木の上に何かが座っているのが分かる。
「ボアアアアアア―――――」
何だこの声!
「うるさい!」
どうやら魔獣か魔物かの襲撃であろうことは理解できた。
「相手の正体すら見えないのは初めてだ」
でもまあ、今のところ相手はいったいだけっぽいしそんなに脅威でもないのか?考えてみれば、木の上から石ころ投げてくるだけだし。
やーいやーい、お前なんて無視しても問題ないような雑魚魔獣なんだよー
「無視でよさそうですね」
「横」
「え?」
横?横に、何が?
森の木々が生えているだけだ。今日が曇りのせいもあってか結構暗い。
そしてよく見ると
「暗闇が膨らんできている?」
幾つもの暗闇が膨らんできている。そして暗闇が十分に膨らんだ後、
一斉に馬車に向けて攻撃してきた。
どういう攻撃かというと、単なる突進だ。しかし単なる突進でももし馬車が壊されたら結構な痛手だ。
「何こいつら!」
「迎撃するほかない」
「それはそうだけど」
影が動物のような形をとって突撃してくるのだ。怖い。これは恐らく相手方の魔術なんだろうな。
もしかしてまだ何かあるのではないだろうか?
「キイイいい」
「シイィィィ」
影の対処すら終わってないのに!
実際に相手はまだ何か隠していたようだった。
その何かが今こうして出てきているわけだが、相手は猿の群れだった。サルの群れが何匹も森から出てきてこちらを襲うのだ。
何だこいつら、もしかしてここってこいつらの縄張りなのか?この猿の群れが下っ端で後ろの方でどっかり構えてる奴が恐らく親玉。
魔獣の親玉なら自分が前に出てくるくらいの度胸は出せよ!
まだあの外道蜂の方が外道ではあったけど正々堂々してたぞ!
でもあの外道蜂も最初にミツバチ爆撃して来たから結局度胸はないのかもしれない。そう考えるとこいつとあいつは同類の様な物なのか?
いやいやそうではなく!
「マリアナ、上に上って猿の方の対処を頼む」
「リーダー、私たちは!」
「ローシェは右、フェリックスは左」
「リーダーは?前からくるのを倒してカイの護衛をする」
「つまり、それって?」
「ああ、そうだ。買い、走らせろ」
がたん
馬車が揺れる。再び馬車が走り出したようだ。
馬車が走っていると片方の森がなくなって視界が開けた。左側だから俺の方か。下をのぞくと少し足場があってその下がすべて崖になっていた。
落ちたらヤバそう。
てか今までの経験から行くと俺落ちそう。
高いところからは俺が落ちるっていうのはすでに流れとして出来上がってるから。さすがにその流れを踏襲しないという事はないだろう。
気をつけなきゃ。
「うわ」
陰が目の前を通り過ぎた。
俺はただでさえバランスが取れない。一歩間違えたら本当に落ちかねない。
「魔術当てずらい!」
「同じく、結構速いですね」
「そうなんだよね、だから突っ込んできたところを物理で殴るしかないのかな?」
「でもそれ結構大変そうですよ」
「でも魔術が当たらない以上仕方ない」
「俺は物理攻撃が使えないので魔術攻撃ですけど」
「頑張れ~」
「『結剣』さえ使えていれば!」
「確かにこういうときに便利だね」
数が多い。
躱したり攻撃したりで撃ち落としてるけど地面に着く瞬間に黒い影が地面に出現し、そこに飲み込まれて行ってしまう。
しかも恐らくそれらは後ろの方でまた出てきているようなのだ。実際に同じ傷の個体が何度も出てきている。
確実に1体ずつ殺していかないといつまでたっても終わらない。
それに何となくこの猿、手応えがないのだ。
聞いているのか怪しい。違和感は絶えない。けれど考えている時間もない。すべての攻撃を躱すか受け止めるかして捕え、1体ずつでも殺していかないといけない。けれどこの猿捕まりそうになると影の中に潜っていくのだ。おそらくこの影の中を移動できるようになっているのだろう。
追いかけて潜ろうとしたが、それもできなかった。かなりこの影の使い方がうまいようだ。手馴れている。
やはりどこかで追い越さないと勝利はないのだろうか?
「来たっす、リーダー」
「任せろ」
剣で影の動物を攻撃する。
しかし影は剣をすり抜けていってしまうのだ。そういう特性があるのか?
しかしそれなら魔術で攻撃すればいいだけの事。
しかし、その予想すらも外れた。
魔力化した斬撃を放ち、影に攻撃するが影にはそれも効いていない様だ。
影には何の攻撃も効かないのか?いやしかしそんな無敵の様な技能があるはずがない。この影に攻撃を与える方法はこれから探していかないといけない。
「リーダー!どういう事っすか?」
「分からん」
取り敢えず攻撃を防ぐために盾を構える。
しかし、剣をすり抜けた影が盾をすり抜けられないわけがない。
影が盾をすり抜けて突っ込んできてしまった。
しかし影は俺の体をすり抜けていく。無害なのか?
その答えは一拍遅れてやってくる。
少し遅れて痛みが到来し、あの攻撃が無意味なものだったわけではないことを知らせてくる。さらにほかにも続々蜥蜴の動物が増えてきている。
速いところ逃げ切らないとまずい。
対処法が見つかったらもう少しましになるのだろうが、現段階では逃げるしかない。
「フェリックス、ローシェ!こいつら影は物理攻撃も魔術攻撃も効かないぞ!注意しろ!」
「マジですか!」
「それはもう逃げるしかないな~」
「それだとどうしようもないですもんね」
マリアナさんは何でそのこと言わなかったんだろ?もしかして
「マリアナさん!そっちは影居る?」
「いない」
上には出てこないんだ。多分地面を通さないといけないのかも。
そして使いどころが制限された代わりにあの半分無敵のような状況なのか?
でも、攻撃してみない事には分からない。一応自分でも試しておこう。
ん~じゃあ今日は気分を変えて『魔力剣』にしよう。昨日の夜から使ってる『結剣』もどきも利用して反遠距離攻撃として使おう。
右手から『毒小蛇』を出現させ、その先に短剣を結びつける。
このやり方やってればいつかは『結剣』が獲得できると信じている。
魔力剣が影に向かって飛んでいく。
そして魔力剣が影に刺さった。
「あれ?全然攻撃できますけど」
「何を使った?」
「『魔力剣』と『結剣もどき』です」
「『魔力剣』は物理攻撃と魔術攻撃の特性を持っている」
「そうなんですね」
「ああ、2種類の攻撃が同時に訪れるからな。」
「でもそれで効くならどういう事なんですか?」
おっと、魔力剣ちゃんと当たってるなあ。
攻撃が聞かないことが取り柄の影の動物に攻撃が届くとなるとただの黒くて脆いだけの雑魚になっちゃう。でもそんぐらいでいいでしょ。どうせ他にも猿とかいう増援がいるんだから。
「じゃあ、物理攻撃と魔力攻撃の同時攻撃ならきっとこれらを仕留められるって事でいいんですね?」
「そうだと思う」
「よーし、それなら大分光明が見えてきた。さあ張り切ってやるよー!」
「じゃあ俺は『魔力剣』を使えばいいか」
リーダーも『魔力剣』使えるんですね。
影の数が少しずつ減っていく。リーダーたちの力はやっぱり凄い。
上ではマリアナさんの奮闘している音が聞こえる。
大丈夫、乗り切れそうだ。
と、フラグを立てたわけですが
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/50 防228+45 魔167 精192+25 俊121+2 器121-10
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
向こうも善戦してきている様だ。どうやら攻略法を見つけたとかなんとか、それなら私の方が足を引っ張るわけにはいかない。こちらもどうにかして攻略法を見つけたいのだが、まだ大剣の力を十分に使いこなせていない。それに他のスキルも使用不可能状態が長く、使えない。
こうなったら力押しするしかない。
偶にはいいでしょ、何も考えずに力押しするの。
ビルトとして戦う前は基本的にこうやっていたし。
足場は狭いし、戦いづらいけど。
それでも押し返す。サルの攻撃を防御せずに食らい、無理やり大剣による一撃を通す。後ろ側に吹き飛んで行かないように下に向かって打ち付ける。馬車はそんなに簡単には壊れないそうなので多少は乱暴にやらせてもらおう。そして打ち付けた猿を最後に突きで止めを刺す。
やろうと思えばできる。しかし問題はこれが一匹じゃない事だ。
何匹もいるという事が非常にこちらにとっては厳しい。
でも、手札が少ない以上選択肢は力押ししかないのだ。
やはり自分もスキルなどの攻撃手段を増やした方が良いのだろうか?
でもやっぱり魔力がない自分では厳しいなあと思うのだ。




