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毒と浄は輝玉に宿る  作者: 狐池
旅の始まり
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067 二人の望むもの

精霊は少女の願いを叶えられなかった。

少女の願いと精霊の認識は食い違っていた。

かみ合わないまま願いを叶えようとしていた。


精霊と少女は荒れ地で出会った。

少女は魔術を使えなかったが、その魔力量と魔術適正は群を抜いていた。

精霊はそれに目を付けた。

少女は追われていた。魔物の軍勢だ。

精霊は魔物を討伐した。そして少女と精霊が出会った。


少女の願いは花園を静かに眺める事だった。

戦火の中でも燃えない強い花ではなく、花が燃えない戦火の無い世界を彼女は求めていた。花園だけでなく、平和な世界も彼女は求めていたのだ。

それは、彼女が戦によって両親も友人も失っていたからかもしれない。

彼女の中で、花園は平和の象徴のように映った。

精霊の願いは自身の存在を維持することだった。

精霊はその攻撃方法から大量の魔力を常に消費しており、魔力が不足していた。精霊は、自分が消えないための依り代が欲しかった。

二人の願いは共有された。

精霊は少女に花園を見せると約束し、少女は精霊に自信の体を依り代とすることを了承した。

そして契約は結ばれた。


精霊は、少女の願いを分かったつもりだった。精霊は世界全体に平和をもたらすことは自分だけの手で行えることではないと知っていた。

だから、少女と自分が住む地域だけでも、いや、少女の周りだけでも平和にしようとしていた。

けれど、精霊の獲った手段は少女の意に沿わない行動だった。

精霊は「和」をもたらさなかった。けれど精霊は「平和」をもたらした。

自分たちの住んでいる地域の周りとの協力の道ではなく、武力による干渉の拒絶を行った精霊は、少女と共に確かに平和を手にしたのだ。

精霊と少女は新しい花を作った。精霊の能力に合わせた、嵐の中に舞う花だ。

しかし、その平和は長くは続かず、その代償は周囲からの攻撃だった。

人々は彼等を災厄と呼び、封印しようとした。

彼等に襲い掛かったのはそれだけではなく、魔物もだった。

彼等は封印された。

精霊は抵抗できただろう。

精霊の敵ではなかっただろう。

精霊は自力で封印から抜け出せただろう。

しかし、彼には考える時間が必要だった。

道をたがえたと気づいた時にはもう戻れなかった。

少女の体は衰弱していて、封印による完全休止状態でないと回復することもままならない。封印された精霊は外界からの魔力が供給されなくなってしまった。有限の魔力を少しずつ消費して、精霊は少女の体を回復させていった。

自身の誤りであったことにはとっくに気付いていた。

平和を守ろうとしたつもりが、一時の平穏のために未来の不和を呼んだ形になったのだ。

精霊はすでに少女の事を最優先に考えていた。

少女の身を守る。そのために力をつける。

でもそれだけではだめだ。

少女の願いは、今だ叶っていないのだ。

精霊は長い時間考えて、答えを出そうとした。

少女と二人で作った花を改変し、改良し、改善していった。

ただ一本の花からでも一瞬で増え、戦火に焼かれても、再び増やすことが容易な花。少女の願いを叶えるために、行ったことだった。

けれど、ずれていた。

花はやがて植物ではなくなり、生物とすら呼べない者になっていた。

でも、それにすら気づけなくて


永い眠りから精霊は起きた。

理由は自身にも不明、心当たりはあるが確証はなく、けれど自分と少女の平和を脅かすことは明らかだった。

精霊は、この機会に少女の願いを叶えようとした。

その精霊が最初に目にしたのは、戦闘態勢になっている冒険者の集団だった。

精霊は考えた。彼等と戦うべきか。無視すれば彼等も襲ってこないのではないか。傍から見たら一瞬で、精霊からしたらとても長い間考えて、

答えを出した。

「面白い、準備運動だ。嵐の力も使わずに魔術のみで潰す!」

少女が死ぬことだけは避けなくてはいけないのだ。



『黒曜の堅牢』は最低限の働きはしてくれた。おかげで私の命は守られた。でも他の人たちは無事とは言えない。

ほとんどの人間が瀕死だった。手や足が使えなくなった人だって何人もいる。私はこれのおかげで助けられたが、結果としてだれも守れてはいないのだ。おそらくあの精霊はあの場にいた龍と本気で戦える場があれば互角の勝負をしていただろう。そういう意味では試金石だったのだ。

でも、結果として歯が立たなかった。相手は被弾を極度に恐れ、慎重を期した戦いをしていた。だから、結局まともに攻撃が当たったのは大砲の一撃と最後の落下中の集中砲火だけだ。でも、不思議だ。なぜか殺されていない。何があったのだろう。

寝かされていた寝台を降りる。窓の外を眺めると、雲一つない晴天が広がっていた。私は防御しかできなかったけれど、嵐は過ぎ去った様だ。



俺は勝てなかった。実力差を考えれば当然のことだが、それでも悔しい物は悔しいのだ。俺にはもっといろんなスキルがあった。もっと多彩な攪乱で相手に隙を作れた。今考えれば、もっとやりようはあっただろう。

でも、勝てなかったのだ。

その場で使えないものは自分の手札に数えられない、結局俺はほとんど何もできなかったのだ。リーダーとして、まだまだクルトさんには及ばない様だ。いつかあの人のような立派なリーダーになる。

その目標はまだまだ遠いようだ。



私のユニークは多くの相手に使う事が出来る。それは分かったし、実際祖霊酔って相手を打ち落とすという快挙を成し遂げた。けれど、あれはその前のスキルがあってこそだ。

あのスキルがないと当たったところで防御がより硬くなるだけだ。

相手のスキルによって削られていたのが偶然にも耐久方面だったので、あの一撃で流れが変わったのだ。正直今回の戦いで自分のユニークに自信を持っていいと言われても、むしろ自信がなくなるだけだろう。魔術師として、伸ばせるところはいくらでもありそうだ。



何も、出来なかった。

一撃の威力を捨てた多様な種類の矢による攻撃が自分の持ち味だ。

それが全く何にもならなかった。

一撃一撃の威力が弱いと攻撃の意味はなかった。

けれど、自分にはどうすることも出来ない事なのだ。

雑用の役割をフェリックスと交代すべきかもと思ったりもした。

頭の片隅では、全く真逆の性質を持っている以上比較などできないと分かっている。フェリックスは毒という一種類のみしか攻撃手段を持たない。対して俺は攻撃手段こそ多彩だが、威力は多くない。

今回は俺が何の役にも立たなかっただけだ。頭の片隅ではわかっている。

でも、それらすべてよりも強く、だんだんと取り戻してきていた自身の崩れた後に鎮座する不安が、埋め尽くしているのだ。

足を止める。

散歩中に誰かに会う事なんて初めてだ。

エステルだった。

「どうかしたっすか?」

「どうしたの?」

何かを見抜かれているらしい。

「こちらは何でもないっす、そっちはどうかしたんすか?」

「戦いが終わったみたいだから、様子を見に…」

「ああ、皆が寝かされてるのはあっちっす」

「分かりました。ありがとうございます」

「どういたしましてっす」

「それで、何があったんですか?」

見透かされていたらしい。

「何でもないっすよ」

「…」

「分かった、話す」

エステルにあまり強く印象に残らないように軽く自分の中の自身の無さを語った。

「そうなんですね」

「それだけっす、行きたいなら早くいくっす」

「あの」

「?」

「大丈夫です、きっと取り戻せますよ」

言葉には、妙な説得力があった。

エステルは、それだけ言うと去っていった。



「マリアナちゃん」

「?あ、エステル、どうしたの?」

「お見舞い」

「ありがとう」

「大丈夫だった?」

「私は大丈夫、でも大丈夫じゃない人もかなりいる」

「やっぱり…」

「でも、エステルがいたらエステルも無事じゃなかったかもしれないから、嬉しいよ」

「そう?」

「そう」

「じゃあ、良かった」



目が覚めた。

両手に変な感覚がある。

見ると、包帯の様な物が両手の切断面からその少し外側を覆うように巻かれている。てかこの包帯よく耐えてるな、普通『腐食』で消滅してるぞ。

あ、そうだ籠手!

自分の寝かされている少し硬いベッドの脇に籠手が置いてあった。

誰かは知らないけどありがたい。

でも装備が出来ないんだよな…

あ、そうだ

「『装備装着』」

籠手が装備できた。ずり落ちてしまいそうだけど、もう片方の手を添えていれば止めることは出来る。ならば何も問題はない。

「こんにちは」

この声は!

「どの面下げてきてんだ!」

流石にお前が見舞いに来るのは嫌だよ、せめて反省するか眠ってろ!

「ほら言っただろう」

「そうだけど、私とあなたのずれを合わせてくれたんだよ。あなたの方が感謝はしているんじゃない?」

え、感謝?相変わらず身に覚えがないのですが…

「………分かった」

「ありがたい、このままでは、我は願いをずっと誤解したままだった」

「どういたしまして?」

あれ?そういえば精霊が独立して動いてるし、声も違う。

そのことについて聞いてみたら

「我は憑依していただけだ、彼女の口で喋っているのだから彼女の声になるのは当然だ」

そしてどうやら精霊は人間でいうところの男であったようだ。

まあ精霊に性別はないから人間で例えると、なんだけど。

それが何よりの驚愕だ。

外道蜂と下の前例のせいで一人称我に違和感を持てなかった。

少女が花を取り出した。

あ、本物の方だ。

「私たちの創った花が残っていることがうれしかった」

「我の花に対する改良は間違っていた様だが、この花に対してだけは間違っていなかった」

「だから、もしこの花の花園を知っていれば教えて欲しい」

「ああ、ありますよ、この町を南に行ったところにある小さな町と山です。行ってみてください、花園を見るのが、「願い」なんですよね」

「ええ、そうです」

「では、見に行ってみるか」

「はい、行きましょう」



名前・種・Lv

フェリックス・人・72

攻113/50 防228+45 魔167 精192+25 俊121+2 器121-10

HP281 MP276

スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣

装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣

耐40 80 40(35) 重+17

装備スキル 開放 閉鎖 武装


一章第三篇あと一話です。

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