063 嵐へ望む少女
相手が全力で来るというのなら正直勝ち目はないと思う。
でも、偶然とかのいくつかの要因が絡み合えばもしかしたら勝てるかもしれない。そのためにはまず相手の手の内を暴かないといけない。
とはいっても現状判明しているのは暴風を手に収束させて放つ攻撃だけだ。…いや本当にそうか?
何か…
「もういいか?」
ん?
精霊の右手に今までに見なかったレベルの濃密な暴風の収束が見られた。
威力がとんでもなく上がってそうだ…
「放たれる前に!」
弓杖が一斉に攻撃を仕掛けるその攻撃のすべてが命中して、
無傷で精霊が現れた。
どういうことだ?単純に聞かなかったなら勝てない気がするけど…
「受けてみろ、お前たちを見極める」
今までに以上の濃密な一撃が放たれる。
マリアナさんが前に出た。
「『黒曜の堅牢・盾形』!」
手を前にかざし、その手から黒く輝く霧が噴出される。
その霧が凝固していき、やがて黒い大盾が形成される。そこに嵐が衝突し、その戦いは、拮抗した。
しかし次第にマリアナさんが押されて後退していき…
「支えます」
「意味がないからやめて!」
意味がないってどういう事だろう?まあいいか。
それより、
「今だ!攻撃を」
「はいはい分かってる!」
「合流だ。叩くぞ」
「隊長ー届かなーい」
「お前はいい、魔術による遠距離攻撃しか目当てにしてねえよ」
「はーい」
「じゃ」
「撃ちます」
こちら側の魔術師陣営と遠距離攻撃陣営の攻撃の準備が整っていく、そして今まさに攻撃をしようというその時に
「風の、唸る音!」
「マリアナさんが耐えてる方じゃなく?」
「違う……右からっす!」
「!『発光石』」
再び発光石による盾を作る。右から暴風が視界の外を曲がりながら迫ってきていた。発光石の盾で防いだが、もうすでに半壊している。
魔力による補修も追いつかない。やっぱさっきのはよほど手を抜いていたのか!
「間に合った!時間稼ぎありがとう!『ロックウォール』」
発光石の盾が砕けた瞬間岩の壁が出現して嵐を防ぐ。
「こっちも、です『ストームブロッカー』」
無風の空間が出現し、岩の壁と合わせて嵐の攻撃を防ぐ。
「助かった」
「『フロストウォール』」
さらにその後ろから氷がせり出してきて壁となる。
「でも、どうして?」
「我が右手からしか風を出せぬわけが無かろう」
「そういう事ですか!」
「そのことも推測できぬ上に知らないとは…ますます別人か?」
「だったら見逃してほしいんですけど」
「あいつに似ているだけで勝利する価値はある」
俺のそっくりさんずいぶんとヘイト買ってるなぁ!
一体何をしたんだ…
三種の魔術による壁にもだんだんひびが入ってきている。
完全には止めきれないか?てかいつまで続くんだ?
気付けばマリアナさんもかなり後ろの方まで後退してきている。ジリ貧だ。
「ローシェさん、魔力量は?」
「結構減ってるよ、このまま堪え切れれば…!」
花弁が、精霊に集まる。
「嘘だ…魔力が、回復してる…?」
マジで!?
でもだとしたらまだマシだ。原因は分かりやすい。
恐らく【嵐の花】がため込んでる魔力を吸収しているのだろう。だが、分かったところで対策は出来ない。ひとつだけ、望みがあるとするならば…
地面を見る。明らかに【嵐の花】の量が減っている。このまま減らしていけば補充はされないだろう。
しかしその量が膨大すぎる。あのプラクト山からこのエインに至るまでの広大な領域全体に咲いているのであれば魔力切れを待つというのは絶望的すぎる。
「よし!」
「どうしたのマリアナさん」
「威力が下がった!」
「え!?」
嵐の花が減ったことが原因?それとも魔力が回復したことが原因?
どっちか分からないけど、どっちの可能性も考慮に入れておいて今はとりあえず保留。
「マリアナさん、押し返せそう?」
「やってみる」
マリアナさんが足を小さく上げた。
そしてそれを前に運び、下ろす。
「いけそう」
「防ぎ切られたか、消耗戦の様だ。」
「花の量が減ってるぞ!魔力には限りがあるんじゃないのか?」
「…そうだとしたら?」
「さっさと諦めてください」
「まだまだ余裕があるのになぜ諦めなければならぬ?」
まあそうなあるよな。
「まだまだだ。我の本気を見るがいい」
右手を突き上げる。
「『嵐を統べる者』第一制限解除」
その手からいくつもの収束した暴風の弾が打ち上げられる。
その弾を目で追う。やがて上昇を止めたそれらの弾は、その後急激に降下を始める。
でも、
「この程度なら!」
「そんなわけがあるまい」
左手に巨大な暴風の弾が収束していく。
「潰れろ」
全員が一度に防御の魔術を起動し、多重防御結界を完成させる。
当然俺も発光石で多少の補強はする。
そこに降下してくる小さな暴風の弾より先に巨大な暴風の球が着弾する。
着弾と同時に暴風の弾は収束を停止、そして一瞬で拡散され疑似的な爆発を再現する。火気はないけど。
その爆発により、展開していたすべての魔術障壁が破壊される。
風が拡散されるだけの爆発は視界を塞がず、その後に迫る細かな暴風の弾という脅威を見せつける。
幾つもの弾が迫り、着弾し、爆発し、
「こk…ろ…」
痛みで意識が薄れていく…
体が動かない。どうやら大分大きなダメージを食らった様だ。
視界は真っ暗で、目は開けない。手足を動かそうとしても反応しない。
だったら今できることをやろう。
今できることといえば…
相手の情報の整理か。
じゃあ相手の攻撃パターンとかから推測も含めて手の内を解き明かしていこう。
まず、【嵐の花】と嵐と精霊の魔力の関係についてだ。
精霊は【嵐の花】を魔力に変換することで戦っている。それ以前に精霊自体の魔力所持量もけた違いだそうなので【嵐の花】だけが頼りではないだろうけど。そして、そして精霊の魔術の威力だが、そちらは魔力量に反比例とも【嵐の花】との比例とも違うのではないかと思っている。
最初は嵐の風速も早く、嵐自体が異次元の脅威だった。しかし今は強い嵐ではあるが、まだ常識の範囲内に収まっている。そしてあの一連の攻撃はすべて嵐を手に収束させたもの。つまるところ、あれらは結局嵐なのだろう。そう考えると嵐が弱くなったことで威力が低下したという事もうまくつながるしあり得そうだ。まあ、ギミックとしてあり得そうという程度だけど。その次だ、嵐が弱まった原因は何かについてだ。俺はこれこそ【嵐の花】が原因ではないかと思っている。これも何となくでしかないんだけどね。で、次の問題はその嵐の規模を維持するのに【嵐の花】の魔力が使われているのかという事だ。もし使われているのなら持久戦はより有利になる。しかし使われないのならさすがに持久戦は無理になるだろう。
肝心のどっちなのかだが、俺は分からないとしか言えない。それ以外との比較がないと正直分からない。でもまあ最悪を想定しておく方が良いだろうから。嵐の規模は【嵐の花】の量によって決まり、魔力は消費しないと考えよう。
一旦今までに考えたことを纏めよう。
【嵐の花】と嵐と精霊の魔力の関係については例えを用いると、
精霊が銃、【嵐の花】が銃弾、そして嵐が弾丸の中の火薬量だろう。
そしてこの例えだと銃弾が減ると火薬の量も減ってしまう事になるな。
細かいところは気にしなくていいか。
もう一つ考察材料がある。それは精霊の発現の一つだ。
『嵐を統べる物』それは確かにそう発言した。
それのリミッターを解除したところで威力が上がったように思える。
あの巨大な球をシールドで防ぎきれないのはおかしいと思うんだ。
今まで使ってこなかったのは反動化でメリットがあるんだろう。しかし追い詰められて贅沢も言えなくなってきたと、
…どっちかっていうとやっと本気って感じだったか?
ともかく、最低でもこのスキルは攻略しなければならない。
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/50 防228+45 魔167 精192+25 俊121+2 器121-10
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装




