061 嵐に舞う花
花が散る。嵐の中に、花が散る。
晴れ模様は裏切られた。
先ほどまでが嘘のようにあたりは暴風が吹き荒び、嵐はたちまちエインを覆う。プラクト山からエインまで、かなりの広域にわたっての範囲を嵐は飲み込み、その広範囲を暴風が埋め尽くす。
暴風の中に雷が鳴り、空は暗く、視界は良好とはいえない。
ただ、巨大なだけの平凡な嵐だった。
こんなものからあの魔獣の大群は逃げてきていたのか?
一体どうしてそんなことが起こるんだ?あの程度の嵐、魔獣にとっては別に珍しい事でもなんでもないだろうに何であれほどの魔獣たちによる逃亡劇が引き起こされたんだ?
…これが、前座?
でもだとしたらそれにしては規模も大きいし、風も強い。
しかしタイミング的にこの嵐が魔獣たちの逃亡の引き金になったことは間違いない。分からない。
本当の原因が出てくるまでは俺には何も分からない。
だから今は何もせずに静観しておくか?無駄に魔力を消費していい段階じゃない。
「この後何が来るんだい?」
「誰に聞いてるんですか?」
「リーダー」
「聞かれても分からないんじゃ…」
「分からん、周りの様子を見ていると彼等も何が何だか分からないという顔だ」
「そうだ、広すぎる。とは言ってましたよね」
「ああそうだな、しかしそれは嵐の規模の話だ。この事態の異常性の究明にはつながらない」
「確かに…」
「でも、確かに何かがまだ来そうな予感はする」
マリアナさんが言うなら間違いない…って断言できるほどマリアナさんって勘良かったっけ?
そこじゃないか。
「早く出てこないかな、このままだと神経が張り詰めたままで疲れるだけになっちゃう」
「確かに疲れるだけなのは避けたい」
「急かすために嵐の中に攻撃してみます?」
「嵐は広いらしいからこの周辺で攻撃しても意味ないかもしれないですよ」
「そうなると動かない方が良いんすか?」
「多分…」
ダメだ!出来ることがない!かといって臨戦態勢を緩めて雑用をしていられるような状況でもない。こんなにもったいぶるならさぞ強い敵が現れるんだろうな!どこから来るかもわからない、魔獣が逃げてきたため南の方から来そうなのは分かっているが、それ以外は分からない。それに加えてどこに来るかもいつ来るかもわからない。
早く!このままだと張り詰めた緊張の中で段々と意識が崩れていきそうで怖い。
探しに行くか?でも戦力が分散されることは避けたいし、魔獣がそろって逃げ出す相手に一人で勝てるわけがない。
待つ以外の選択肢を見出したいが、相手の強さや姿が未知数な以上慎重にならざるを得ない。
困ったな、このままだと相手の思うつぼ…かどうかも分からないが、曲論だとずっと待っているうちに内側から崩れるので負けてしまうだろう。
後ろから怒鳴り声が聞こえてくる。
この声は…
ああそうか、全く厄介だ。
「その強敵はいつ来るのかね!」
「黙っていなさい、和が乱れます」
「いいから儂の質問に答えんか!」
「黙ってくださいと何度言えばわかりますか?皆次に襲来する強敵に勝利するために、この町を守るために我慢して不安を押し殺しながら待っているのです。ただでさえ極限状態の今、周囲をいらだたせるような言動は避けて下さらない?」
その口げんかも不和と亀裂の元なんだよなぁ。
「素直に答えれば済む話だ!さっさと答えろ!」
「分かっていたらとっくに共有しております、自分で調べる気もないくせに人を頼って人を罵倒して、少しは人間としての価値があると判断できるような行動をお取りください」
「ぐぅぅぅ…!」
これ、もう止まらないよね?無理だと思うけど穏便に終わってくれないかな?
「分かった。私が指揮を取ろう、この町を守ることに尽力する!」
この爺何を言い出すんだ?自分の直轄の兵士すらも訓練すらしないような馬鹿帰属に緊急時の指揮が務まるとでも?
それとも案外人望は高いのか?誰も巻き込まれないように口げんかに関わらないだけでこの町では人気の領主とかの可能性もあるな。だとしたら任せるべきだ。人を纏めるのにおいて人望は一番大事だろうし。
でも大略さんが反論しないのには驚いたな、この領主相手だと迷わず反抗するって感じだと思ってた。
「いきなり何を言い出しているのでしょう?」
いやそんな感じだったわ。もしかしてこの場にいるほかの冒険者たちの反応というか表情をうかがったのだろう。こいつは気に食わないが、こいつが指揮を執ることを冒険者たちが喜ぶのなら任せる価値はある。みたいなそんな考えだったのかもしれない。
「こっちのセリフだ!」
「自分の兵士の訓練すらまともにできないような馬鹿な領主に任せられるほど平和に包まれた場所だと思わないでくださいな」
「自分の務めを果たそうとしているだけだ」
「従うつもりのない相手の指揮を聞かされて何になるのです?人を纏めることは信頼されるもののみが行えることですよ」
「貴様が私のやることなすことに文句をつけたいだけだろうが!」
「だとしたら聞いてみたらどうですか?直接。ご自分の人望の無さを思い知るのが怖くて実が引けるか、そのことにすら気付かない鈍感か、あなたはどちらなのでしょうね」
領主様がかわいそうになってくるほどの毒舌。同情するなぁ。
でも考えてみればこの前に少し話したときはそんなに毒舌じゃなかった気がする。よほどこの領主が不快なんだな。
「貴様は…!」
「まずはご自分の役割を再確認なさいませ、あなたにはここの指揮以外にやることがあるでしょう?」
「貴様が私の何を分かる!」
「領主として当然のことだと思っていましたが」
「はっきりと言わんか!貴様の言う緊急事態なのだろう、いちいち手口が陰湿であるぞ!」
「領主の役割は民を守ること、そうだと思っていましたが…私腹を肥やすために領主になったような無能には難しすぎたようですね」
あれ?なんか温度がまた一段下がった気がする。何か因縁がおありのご様子?
「白熱している所に水を差す様で悪いが、変化だ」
「何もない膠着は終わったって事かな?何が来てもきっと勝てるけど」
「それも分からんがな」
全ての花が歓喜する。青緑色の輝きはより一層強さを増し、満場を埋め尽くすような喝さいのごとく花弁が舞い踊る。
そのすべてがそれを迎え入れるため。
ただそのためだけに、
全ての花が喚起する。彼等の主を
嵐を統べ、彼らがそのすべてをささげるにふさわしいと判断した主を。
嵐はより一層勢いを強め、万人を圧するかのごとき重圧と共に神々しい輝きが収束する。魔力が、形をとる。
魔力によって呼び起こされたはるかな過去からありしものが、再び目覚めた。災厄の気配をかぎ取って、さらなる量の魔力を求めて。
そこに現れたのは、
光の衣で全身を包んだ、神々しく輝く少女だった。
その顔には幾何学的な模様が刻まれ、それがひときわ強く発光している。
その目は虚ろで人であることを感じさせず、、何を見つめているのかは分からない。
「久方ぶりに、目が覚めた」
「なぜ今目覚めたのか、我にも分からぬ」
「ただ」
「祝え、我が目覚めたぞ。祝え、我は目覚めたぞ!」
咲く全ての花をそれのために、大増殖したのはそれのためだけに。
「久しぶりだ、魔力が足りぬ。もう少し魔力を集めねばならぬ」
「さあ、どこから行くか」
「勝て、ないでしょ」
「それほどか?」
「魔力の所持量がおかしい、この町に住むすべての人の魔力を足してもきっと届かない」
「精霊…」
「は?」
「多分、精霊です。確証はないですけど、そんな感じがします」
「ほう」
声が、掛けられた。
全員が精霊と思われる少女に目が釘付けになる。
「その構え、抗戦の構えか?」
「面白い、準備運動だ。嵐の力も使わずに魔術のみで潰す!」
「「防御!!」」
「そうか、耐えるか」
「久方ぶりの顕現で、我の腕がなまったか、我の相手を見極める目が鈍ったか…その両方か」
「どちらにせよ、お前たちはが生き残ったことは称賛に値する。時代が進歩して、戦士の水準も下がったと思ったが…ちゃんといるのだな」
「あの火力が、防がれても動揺しない程度?」
「さすがに冗談だと思いたいんですけど」
「何重にも魔力の壁で防いで、その末に防ぎ切ったと思ったらその程度のものでしかなかったとは」
「これは、想像以上にきつい戦闘になりそうだ」
「仕方ない、嵐の力も使おう。特に理由はないが…お前たちを殺す、恨むな」
「上等だ!」
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/50 防228+45 魔167 精192+25 俊121+2 器121-10
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装




