060 ド派手なご登場
朝を起きて、久しぶりの宿から風を楽しむ。
その予定だったが、どうも今日は風が強い、そのためすぐに窓は閉じた。
仕方ないんだ。
宿の一階に降りて朝食を摂る。
宿の食堂にいるほかの冒険者や旅人も心なしかそわそわとしていて落ち着きがないように感じる。昨日の魔獣の大群の襲撃の背景にありそうな強敵の事が伝わっているのだろうか?
でも、夜俺が平穏に寝られるほどには何も来なかった。思ったよりもそれは鈍間なのか
それとも地震の前に鼠が逃げ出す現象的な奴か?
なんにせよ不気味な静寂だ。
先に朝食を食べ終わったリーダーが城門の方を見ている、何かあったのだろうか?
「リーダー、何があったんですか?」
「外にまた魔獣が来ているかもしれない、討伐の手伝いをしに行こう」
「了解です」
全員で出来る限り急いで朝食を食べ終え、襲撃が発生しているという門へと急行する。昨日も魔獣の襲撃は南からだった。だから門も南向きの門だ。城壁の内部からその上に上り城壁の上から迫る魔獣を見下ろす。
さすがに昨日程の密度ではないが、広範囲にわたって魔獣が広がっている。その魔獣たちは昨日押し寄せていた個体よりも全体的に大柄な個体が多く、その動きは明らかに遅い。その足の遅さによって逃げ遅れてきた魔獣が今、時間差で攻めてきていることで時間差のある馬上攻撃のようになっているのだろう。この魔獣たちを退ければひとまずの安心が訪れる。
まあその先に正体不明の脅威が待ち構えている以上安心と化してる場合ではないんだろうけどね。
「この巨体、マリアナさんの出番じゃない?」
「そうかもしれないな」
「じゃあ行ってくる」
「分かった、昨日共有した陣形で行こう。俺がついていく」
「了解~私たちも援護に行くよ~」
「はい」
「分かったっす」
下へ降りて魔獣の群れと相対する。
マリアナさんが剣を消し、走っていく。
マリアナさんは雑魚魔獣と思われるものは大剣の一振りで倒していく。
マリアナさんの馬鹿力、じゃなくて怪力でどんどん魔獣をぶっ倒せ!
「援護も忘れないように」
「了解です」
観戦している場合じゃなかった。俺も援護しなくちゃ。
今、マリアナさんは一撃では倒せないが強敵とまではいかない敵にぶつかっていた。その敵と戦っている途中に他の魔獣に妨害されると厄介なのでそれを防ぐために周りからくる魔獣を俺たちが殺し、マリアナさんが出来るだけ早く今戦っている魔獣を殺せるようにする。リーダーはマリアナさんの攻撃の隙間を縫って合間から攻撃を差し込み、隙の無い攻撃を可能としている。
そしてその奮闘は長く続かず、マリアナさんとリーダーの勝利でその敵との戦いは幕を閉じた。
敵が城門へと走っていく。その魔獣を斬り捨て、さらに進む。
ザンッ
「リーダー、ありがとうございます」
「対処しきれない場所からの攻撃は俺が防ぐ、対処できる場所の敵を倒すだけでいい」
「分かりました」
「そして手の届かない場所の敵はローシェたちが防ぐ。そちらも対処しなくていい」
「了解です」
強敵と言えるような敵は出てこない。まして苦戦するような敵は出てきそうもない。魔獣たちを少しでも倒すことで、エインの被害を減らす。
そのために走り、魔獣を倒し続ける。
その足が、止まった。
「一撃じゃ、無理か」
「大丈夫、突破できるさ」
「実質的に新陣形での最初の戦い、勝ちます」
「ああ」
四足歩行の魔獣の肩を大剣で斬りつけ、大剣を消し胴体を踏み台にして背中側へ跳ねる。背中側に回り込み、振り向こうとした瞬間にリーダーが攻撃を加え、体勢を崩す。もう一度魔獣側へと跳ね、懐に潜り込み、大剣を胴体の至近距離に出現させ、防ぎようのない位置からの斬撃を加える。
大剣を肩から振り上げ、胴体に振り下ろす。魔獣の体が地を撃って跳ね、その胴体には傷が刻まれる。
相手の皮膚が固いせいで両断することは出来なかったが、傷を作ることは出来た。さっきよりも動きは鈍っており、さっきと同じように機動力重視で動き回って攻撃を加えていけば、きっと追いつけない。
だったら、それを実証する。
再び大剣を消し、魔獣に駆け寄り、至近距離を高速機動で攪乱し、その目が追い付けなくなったところを背後から大剣を出して突き出す。
この魔獣は草食の目ではなく、肉食を目をしている。背後を含めた広範囲を見ることは出来ない。
大剣の突きは肩に入り、魔獣がもだえる。魔獣が攻撃を食らったにもかかわらず反撃をしてこようとするところをリーダーが攻撃をして反撃をさせないようにする。大剣を三度消し、魔獣の首に背後から肉薄、大剣を出現させて斬りおとす。
「ふぅ…」
「流石だ」
「ありがとうございます」
「この大剣の扱いにも慣れてきた」
「それは良かった、上手く使うといい」
「はい」
その後ももう少し魔獣を狩ったら、魔獣はここを抜けることは無理だと悟ったのか、だんだんと退いていき、やがていなくなった。門のところに戻ると他にもいくつかのパーティが集まってきていて、何パーティもで戦った結果だと分かった。その後聞いたことだが、東西の門の見張り番がエインの横を抜けて逃げていく魔獣の大群を見ており、結果的に北へ逃げたのに変わりはないようだ。
さあ、取り敢えずひとまずの脅威も過ぎ去ったことだし、恒例の町見学を始めようじゃないか!次の脅威が来るまでの間くらいは町を見学していても罰は当たらないよね?
この町はかなり整備された町で、道の舗装もしっかりされている。壁に囲まれた街自体も広く、演奏会を開く予定だったであろう建物も見える。
食べ物関連はそこまで発展しているわけではない様だが、それでも外の町から送られてくる食事はあるので(高いとはいえ)とても便利で住みやすい街なのだと思う。けれど住宅街はほとんど見ない。中心近くの一等地的なところに豪邸が何軒か立っており、それがほとんどという感じだ。
土地が高く、貴族とかしか住めないのだろう。
確か本で読んだところだとシューラッド東側で最も栄えていて、東側と北側を繋ぐ要所だとか。それは発展するよな…
一方でエインの近くにはダンジョンと呼ばれる世界各地に点在する謎の構造物の一つが存在していて、そこから漏れ出てきたり、集まってきたりする魔獣や魔物が危険という側面も持ち合わせている。
そのダンジョンの影響で挑戦する冒険者が多く集まり、結果的に冒険者ギルドの支部が大きくなったり儲かって領主がにっこりしたりするのもまた事実だが…
まあそんな巨大化するのに適している都市がエインだ。立地が恵まれている。そんなエインだが、今まで領主の屋敷とか気にかけたこともなかったが、
「目立つ」
領主の屋敷というか宮殿の様な物がすごい目立つのだ。
おいこの国の王様大丈夫か?エインの領主が増長してるぞ!とりあえず参勤交代2,3週させておいた方が良いんじゃないの?
領主の人となりも知らずに言うのも失礼か。結局は関係のない人種だし、気にしない方が良いのかな。
「フェリックス」
「どうしたのマリアナさん?」
「演奏会が中止になったって」
「どういうこと?」
「どうやら来る脅威が判明したらしい、それで」
「既知の脅威なんだ」
「いや、反応としては既知だけど未知、そんな感じだった」
「で、その脅威が来るならライ…演奏会なんてしてる場合じゃねえ、みたいな?」
「そんな感じみたい」
「それだけ?」
「違う、そのことで揉め事が起こった。取り敢えず護衛としてついてきた冒険者全員召集されたから来て」
「何様だよ、そんな大掛かりなことをする奴」
「…来れば分かる」
領主様でした。
呼ばれた先で俺が目にしたのは件の大音楽家さんと太った男の人が激しい口論を繰り広げる場面だ。どうやら領主様とやらはすぐにでも来る可能性のある脅威が何なのかを知らず、一方で件の大音楽家さんの方は知っている。そのことにいら立った領主様が、都市を守るためという大義名分を掲げて件の大…長いな、件の大(以下略)さんから脅威の情報を聞き出そうとしているらしい。詳しい事は知らない。
「教えればそれで済む!さっさと教えんかこの下民が!」
口悪
「教えてもらう側にはそれ相応の立場があるでしょう?」
「そんな悠長なことを言ってる出ない!」
「ご自分で調べたらいかが?その情報程度すぐ判明しますわ」
「この…!馬鹿にしておるのか!」
「あなたみたいな短期で自分の自尊心と世間体を守るために、権威を誇示するために情報を無理矢理聞き出そうとするお方を馬鹿にしないでどうするというのです?」
うわぁ、元依頼主さんもなかなかに毒舌だぁ
「黙っておけば本性を現したな!この毒舌女」
「さっきまで活発に罵倒を吐いていたお方が何を言っているのでしょう…あなたが黙っていたところを私は知らないのですけど」
「こいつをひっ捕らえろ」
何でこんな場所に呼ばれたんだろう?
「皆さん、私をお守りください」
「仕方ないな~、追加報酬は貰うって事で」
「良いんだよね?」
「もちろんです」
魔術による壁が現れ領主様の身辺警護の兵士の攻撃を防ぐ。
てか今見て思ったけど兵士の練度低くね?素人が言っても説得力ないけど…実際『解析』してみるとステータスとレベルの関係を見ると確かにかなりの高ステータスだ。だけどスキル関係も充実してないし、そもそもの武器を操る技術もあまり高くない。魔術を使うようなやつはいないので(いたとしても)マリアナさん一人で全員倒せそうだ。1対1なら俺でも勝てそうな兵士もちらほら。
…これさ、領主様絶対賃金ケチってるよね?
「なぜ、私の直属兵が!」
「ステータスが優秀な才能あるものを集めるだけで強いなんて粋がらないことだね、僕らは実践経験や、スキルの発動、連携、幾つもの技量を高めている。訓練しないと才能しかない人間だよ?そこに優秀な兵士はいない、当然だと思うけど」
「ぐぬぬぬぬぬ…」
改めてこの国の王様大丈夫か?結構な要所の領主が割とダメ人間みたいだけど、今すぐ見直した方が良いんじゃない?
その時突如一陣の強風が吹いた。
くだらない口論などしている場合じゃなかったのだ。
「わあぁぁああぁ!」
城壁の上から悲鳴が聞こえる。
城壁の上に上って外の様子を確認する。
周りの草原の草が吹き飛ばされていた。奥に見える森の木々の上に雲が集まっていた。
「こ、こんなに大きいのかよ」
大きい?
「広すぎだろ…!」
広い?何の話だ。
「フェリックス、下だ」
草原の草が強風によって吹き飛ばされ、その下が顕わになる。きっかけは照らした日光か吹いた強風か、それは分からないが、確かに今、芽吹いたばかりの草が急速に成長し、
「花が、咲いた?」
青緑色の花、【嵐の花】
俺はペールさんに言われた言葉を思い出していた。
「【嵐の花】の性質はそれだけではありません、【嵐の花】は嵐の直前になると近くに新しい花が生まれ、どんどん増えていくんです。」
【嵐の花】が嵐を呼ぶのか、嵐の前触れが【嵐の花】を増やすのか。
ただ一つ、この地域の誰もが知っている。【嵐の花】の増殖と嵐の大きさは比例する。そして、エインは今まで、嵐に飲まれなかった。
名前・種・Lv
フェリックス・人・72
攻113/50 防228+45 魔167 精192+25 俊121+2 器121-10
HP281 MP276
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 調合 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
1章3篇もうすぐ完結




