055 北上記三日目-2
毒の調整、方向性としては溶毒の先、もっと攻撃性を無くし、もっと直接ステータスに干渉するように。
今のあいつではおそらく<精神>が高すぎてまともに毒が通らないと思う。毒は耐性によってかなり防がれるが、<精神>でもある程度防がれる。さすがに毒耐性ほどの効果はないが。
でもおそらくデバフ用の毒は防がれづらいと思うのだ。
相手の動きはすでに何となく分かっている。スキルなどがない故の物理特化、しかもか力が異常に低いためそれに頼らないからだろうか?攻撃は大雑把だ。
「はっ!」
「ちっ、やっぱ攻撃が全然通らねえ」
「援護しましょう」
後方から弓矢と魔術の一斉攻撃が来る。
しかしそれらは全て受け止められ、その上で耐えられる。
「フェリックス君!」
「まだ全然できそうにないです!ごめんなさい!」
「そうか、まあ焦るな。任せろ」
「ごめんなさい」
魔物が学習した。俺たちが脅威ではないと判断した様で、一気に攻勢に転じてきた。<攻撃>的な火力では脅威にはなり得ないのだが、純粋な質量による攻撃が高威力なのはずるい。あの糞固ゴリラが!
「雑用ばっかに頼ってるってのも、良くないっすよね」
カイさんに何かがある様だ。
「ローシェさん、リーダー、魔物の動きを止めて欲しいっす」
「了解!」
「ギリギリっすけど、後輩に見せてやるっすよ」
「そんなに意気込んでるなら花を持たせてあげようかな!」
「ローシェ、罠を作れ、俺が押し込む」
「「了解」」
ローシェさんが魔物の背後で大量の岩出現させ、なだれ込ませる。
魔物の後ろの方を囲む壁が出来ている。
リーダーは剣を鞘にしまい、収納袋から二枚の盾を取り出す。
え!?あの収納袋ってあんなに口広がるんだ。
両手に二枚の丸盾をボクシングのグローブの様につけ、殴ることで盾で押し込めるようになっていた。
リーダーが魔物を盾の面で殴る。攻撃力は要らず、ただひたすらに殴ることだけが必要であり、何かの罠であることを察知して逃れようとしていた魔物を殴って体勢を崩し、後ずさらせ、罠の中に押し込んでいく。
魔物の抵抗もむなしく押され、押し込まれ、追い込まれて行く。
そして、
「今だ!ローシェ!閉じろ!」
再びの岩の出現、そして崩落するそれらの岩。
魔物は生き埋めにされ、見える部分は首から上だけになっている。
「『貫通矢』」
防御能力を貫通する一矢。それが、何発も。
一度では仕留めきれない。防御貫通能力という強力な能力がある代わりに威力の低い矢を何発も何発も打ち込み…
「矢がきれた…っす」
矢の連撃が止み、何発もの矢が魔物に刺さったまま魔物は動かない。
「どうだ?」
時が止まったように誰も動かない。そんな中、最初に動いたのは。
岩の山を崩すべく手を伸ばした魔物だった。
「ちっ、まだ動くぞ!攻撃続行して止めろ!」
「あ、そーだ。ぼく防御意味ないやつもってた」
「はっ?」
「あは いくよーー」
双剣を持ったけだるげな青年が飛び跳ねた。
剣にはなんか変なオーラが纏われており、その青年はそれで殴りかかる。
「やー、やー、やー!」
双剣の連撃にしては遅いな。そういう流派というかスタイルなのだろうか?
俺でも数えられる遅い連撃が六回程ぶつかった後。
もう一度切りつけようとして魔物の体が傾き、その青年は魔物の体を蹴って離脱する。
「いぇーい」
消えていく魔物の体を見つめながら、なんだか変な気分になっていた。
「なんか恰好付かなかったっすね」
「いやカイさん凄い格好良かったですよ」
マリアナさんが激しくうなずいてる。
「ただ、あのへんなのが空気だいぶ壊しただけで」
「すまんな、うちの馬鹿が迷惑かけた」
「どうして使わなかったんですか?」
「どうやら本当に忘れていたらしい」
面白い人だな…
でも、なんか微妙な空気なのは全く変わらず。
まあでもその後に来たことはその微妙な空気を打ち破るというかかき消すというか、それに大きく貢献した。
「また来ましたよ、ご注意を」
「了解した」
「うわぁ、本当にあいつ戦います?リーダー?」
「え?何が相手だったの?」
「煙舞蝶です」
「あー、そっか。そいつか…」
「どうした?」
「みなさん!全力で逃げましょう、本隊に追いつくのを第一優先に!」
「しかし魔物が来ているのならば…」
「いえいえ、煙舞蝶は時間経過で死にます。ですが、時間経過で分裂していくんです。死ぬときは全員がまとめて死にますが、戦うだけ無駄です」
「範囲攻撃の魔術じゃダメ?」
「だめです、特に風魔術とかあいつらの増殖を促進させてしまいます」
「リーダー、逃げません?」
「そうだな」
号令がかかる。
「馬車に乗り込め!本体に向けて全速で駆け抜けろ!」
一斉にそれぞれの馬車に乗り込む。
全力で本体へと向かう馬車はとても揺れて人によっては酔いかねないだろう。実際俺は酔いそうだ。車酔いって一度なるとその後も酔うようになるらしいから酔わないで欲しい。
「そういえば、エステル、大丈夫だったの?」
「う、うん、魔物は血が出ないから、かな?あんまり、怖くなかったよ…」
「良かった」
「うわぁ、両方から煙舞蝶が包み込んでくる」
灰色の長の大群が隙間なく馬車のすぐ外でひしめき合っている。虫がそこまで苦手じゃない俺でもこれはきもいって感じるぞ。
集合体と虫っていう嫌われ要素の塊じゃないかなんだこの魔物。
「カイさん!大丈夫ですか?」
カイさんは御者席にいるため野ざらし状態だ。煙舞蝶に襲われていたりすると…
「周りが見えないっす!どうするんすか?動き止めたいっす」
正直止めていいと思う。あれだ、何も見えない状態での馬車の操縦って居眠り運転並みに危険だろうし。
主にどちらも周りが見えないという点で。
「カイ、それでいい。一度戻ってこい」
カイさんが御者席から中に戻ってきた。御者席への扉も閉めて完全に閉じこもった状態だ。カイさんが入ってくる際に数匹入ってきたが、すぐに駆逐された。やっぱ一体一体は脅威になり得ないタイプだ。しかし集まると厄介だ。それが何千何万となるとなおさらだ。
煙が、晴れた!
「雲もかかってるけど気分だけは日本晴れ!てかむしろあの煙と比べたら日本晴れでいいだろ」
「無駄な独り言は良いから早く周りの様子を」
「ごめんなさい」
「で?」
マリアナさんなんか怖くない?気のせい?
「まことに申し上げにくいのですが…誰も何にも全く見えません!」
「だと思った」
「どうせそうだろうな~って」
「次の休憩地点は決まっているからそれまでにそこに追いつけるように頑張らなければだな」
「それはまた夜ですよね?」
「そうだよ」
「もう昼過ぎだ。急がないと夜に合流できなそうだ」
「じゃ、御者台に戻って操縦を再開するんで戻ってくれっす、フェリックス」
「了解です」
馬車の屋根から滑り落ちて加齢に着地を決めて馬車に乗り込んで出発する。ちなみにこれは理想であって、現実は滑り落ちた後にうまくバランスが取れずこけた。やっぱ左腕が欠けたのがよくない。
ま、何食わぬ顔で合流するんですけどね。
「合流したっすね、じゃあ出発するっす」
ほらばれてない。
「フェリックスがこけたのは触れなくていっか」
「思いっきり触れてますね!」
「あ、ごめん口が滑った」
「仲がいいですね」
「まあ同じパーティですしね、当然と言えば当然だと思うんだ」
「まあ、そうかもしれないけど」
「姉弟なんですか?」
「こんな暴力的な姉はいぐへぇ…!」
久しぶりの大剣の柄での小突き。相変わらず痛い。
「あぁ…」
エステルさんが痛々しそうに見つめてくる。やめてくれ。
「仲よさそうで何より~」
「恐らくこれが最後の関門だ。突破するぞ」
リーダーは凄いな全くぶれない。俺も切り替えるか。
「今度は魔獣だ。気をつけろ」
「了解です」
「いいよ~」
「エステル、大丈夫?」
「うん、多分。頑張る」
「よし、じゃあ行こう」
名前・種・Lv
フェリックス・人・70
攻110/50 防222+45 魔163 精186+25 俊118+2 器118-10
HP273 MP269
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣 調合
装備 黒覆布 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装




