054 北上記三日目-1
さあ、護衛の三日目が始まる。
今回の旅の特徴だが、割と出発時刻が緩い。これが貴族の余裕!かな?そんな特徴がありはするが、朝の支度はいつも通りだ。
俺は朝食を作る、馬車の調整をする。俺の主なやることはそれだけだ。前はもっとあったのだが、片手だけだときついので他の人にも代わってもらっている。
昨日の一件から俺としては魔物や魔獣が奇襲を成立させるために後ろからくることを学習していると思うのだがどうだろう?
ただ、俺の予想は簡単に裏切られ、いつも通り正面からの襲撃ばかりだ。
だったら今日も今日とでスキル獲得に向けて頑張ろう。
獲得の方の目標は『結剣』、練習の方の目標は『魔力剣』を通しての異なる属性の発現。それ以外の目標は今の目標が達成が出来てからだ。
イメージは示されている。毒を抑える感覚。ただ、それがどういう感覚なのかが全く分からない。どうやれば毒を抑えられるのだろうか?浄化の方で中和するというのは一つの手だろうが、それをするともう一つの目標である異なる属性の発現が出来ない。魔腺の機能もめったなことでは停止しないだろうし…案が浮かぶまではひとまず放棄か?
でもなぁ『結剣』の方も手詰まりなんだよ。実質進捗がないのは嫌だけど何もできないからなぁ。それはちょっと困るんだけど、どうしよう。
『結剣』の解決策は圧縮の感覚を掴むことなのでそれさえできればいいんだけど。それすらも難しいから何とも言えない。
一体どうすればいいのだろう?一番いいのは毒針を使う感覚をそのまま転用できることなんだけど…工夫しないと難しそうだ。かといって工夫してもできるとは限らないが。
まず工夫其の一、毒針の長さをいじることでその感覚を掴む。
因みにこれは長くすることがスキルの自由度の中に含まれていなくて失敗した。
工夫其の二、長くできないなら繋げればいいんだ!
当然そんなことが出来るはずもなく、失敗。
工夫其の三、ダメもとで毒針の先に短剣をくっつけて獲得できるか挑戦、こういう形式上だけの真似でも獲得出来たりもするらしい。
因みに失敗。
とまあ、こんな散々な結果だったわけだが。
「難しいっすか?」
「はい、かなり…」
「じゃあ、他の雑用でやっていたことを紹介するっすけど、気分転換にどうっすか?」
「何をするんですか?」
「『調合』っす」
「調、合…!というと?」
「特殊効果のある薬を調合するスキルっすね、他の事もできるっすけどとりあえず基本のそれだけ覚えておけばいいっす」
おお!それはつまりポーションを作れるという事か!?
「凄いですね!」
「生産系はほかにも『錬金術』とか『鍛冶』とかもあるんすけどどちらも技量とかスキルの練度とかが重要になって来るっすからおすすめは『調合』っす」
凄い、鍛冶系統のスキルはありそうだとは思っていたけど錬金術系の奴もあったとは。調合をやってみたい!
と、そこまで思って一つ気付いた。
「あのぉ、どうやって獲得するんですか?」
いやな予感が。
「ああ、これっす」
これは
「いつか見た巻物、これを使うんですか?」
「そうっす」
「準備良いですね、さすがです」
「フェリックスが雑用に慣れたらッて思って買っておいたんすよ」
「想定済みだったんだ」
「所でカイさん馬車の方中途半端でいいんですか?」
「大丈夫っす、大したこと起きないっすから」
不安だ、完全にフラグが立ってるんですけど。
その後カイさんから調合セットまで貸してもらえた。お古らしい。
俺の方はしばらくこの調合の練習に打ち込むとしよう。
「来たぞ」
何が?と聞きそうになって寸前で踏みとどまる。もうすでに見えていた。
後ろからの襲撃だ。そして、今回も微妙なラインだが恐らく魔物だ。
雑魚敵戦での魔物との遭遇が今までゼロだったのにこの周辺で急に2回もきた。違和感はあるが魔物の出やすい地域などもあるらしいのでそこまで変な事でもないのだろうか?
訂正。
雑魚的戦でもなかった。あの海魔たちほどではないけれどいわゆる中ボス戦くらいの強さはある。しばらくここに足止めされそうだ。
後方の護衛の他のいくつかのパーティと共にこの魔物との戦闘を開始する。
「戦闘、参加した方が良いですか?」
「ああ、頼む。結構強敵の様だ」
「了解です」
因みにこの魔物との戦闘に参加するパーティは我々ビルトを含めて3パーティ、これで勝てないという事はないだろうが万が一が怖い。
相手はこの前と同様に人型。しかし今回はより異形、さっきの魔物の2回り程度大きい。
「協力しろ!そっちの奴ら」
「分かった」
「じゃあそっちは援護を頼む。俺たちがひたすら突っ込んで攻撃する」
「なるほど、そちらのやり方に異は唱えない。そのやり方はこちらにも好都合だ。我々は慎重に攻略する」
「好きにしろ、こっちは一刻も早くこの戦闘を終わらせる」
「了解だ」
1パーティ真っ直ぐ突っ込んでいった。方向性の違いでちょっと連携は難しそうだけど、これも一つの共闘の形。
「えーと、援護なら、お手伝いできますよ?」
「ああ、頼む」
「さっきの話を聞いてました。慎重に行くんでしょう?」
「ああ、せっかくだから彼等の戦いから魔物の力を推し量る」
「なるほど」
魔物とせっかちパーティの戦いは派手だった。
彼等はさっ
きから急いでいたからそれもあるんだろう、とても威力の高そうな攻撃を連発していた。一方魔物の方はびくともしなかった。
何度もの爆発やら暴風やらの攻撃の嵐を受けてなお、砂塵爆煙水蒸気、視界を遮る物が晴れたときにはまるで聞かないとでもいうかのような顔で現れるのだ。いや顔は人間の物じゃないので表情は窺えないんだけども。
「魔術と物理両方に耐性があるのか?」
「はい、見たところ魔術攻撃と物理攻撃を織り交ぜてかなりの密度で攻撃しているようですが全く効いていませんね」
「だな。何かからくりがあっての物なのか、もしくは純粋なステータスなのか…」
「純粋なステータスだったらどんだけ強いんでしょうね、戦いたくないなぁ」
『解析』
出来た!
妖面巨人・魔物
攻31 防732 魔13 精725 俊18 器10
HP600 MP20
スキル 防御加増 精神増強
防御加増と精神増強の二つはいわゆるパッシブスキルという物らしい。
問題はこの異常な<防御>と<精神>のステータス値が強化された後の物かどうかだ。強化される前の物であった場合、この値よりもさらに強化された値という事になる。ただ、少し安心できるのは二つのステータス以外が圧倒的に低い事だ。それは救いだ。
それに<俊敏>も低い。これなら振り切って逃げることも可能なんじゃないか?でも…なぁ
あ、情報共有。
「『解析』通じました」
「どうだった?」
「<防御><精神>の二つが730ぐらい、他は10~30程度、HPは多少あるけどMPは全然です」
あ、そうだ。でも数値で言っても伝わらないかも…
「730…化け物だな」
「あれ?伝わってる?」
「ん?ああ、鑑定の術式を発動できる使い捨ての魔道具がある、それを使えば自分のステータスが把握できる」
「そうなんですね!」
意外と自分のステータスを知る手段ってあるんだな…
「結構値は張るが」
それくらいが妥当であれ!俺の数少ない長所が…
「けど、敏捷が低いなら逃げれば大丈夫じゃないかな?」
あ、別パのリーダー格さん
「いや、放置しておくとどんな被害を出すか分からない。最低限無力化はする」
「へえ…」
「ん?どうした?」
「いや、君たちはそういう人たちなんだなって」
「つまり?」
「君たちの思考は英雄的だ。僕たちみたいな単なる仕事、金を稼ぐ手段と考えている人たちとは大違いだ」
「だが、変えるつもりはないんだろう?」
「当たり前ですよ、僕たちは僕たちで自分の生き方に自信を持っていますので」
「盛り上がっているところ水を差しますが悲報です」
マリアナさんだ。
「どうしたんですか」
「本体はとっくに先の方へ行ってます」
「はぁ!?」
「え、ま、え!?」
だめだ、言葉にならない
「…そうか」
「まさかの置いてけぼりですか!?」
「そうみたいだよね~」
「どうしましょうか…」
「解決策が一つしかないのは分かっているんだろ」
「そうだね」
「ああ、さっさと倒して追いつくぞ」
「防御貫通が欲しいですね」
「毒作るの頑張れ~」
「唐突に無理難題を…」
でも、一体どうして置いて行かれたんだろう?先を急ぐ理由でもあったんだろうか?
考えても分からない、諦めて俺は防御貫通の毒を作ることを早急の目標にして頑張ろう。
「すまないが、悠長にしている暇はなさそうだ」
「え?」
「あいつらの危機だ」
「はは、この人たちとは絶望的にそりが合わなそうです。楽しいですね」
「行くぞ!ローシェ、吹き飛ばすのを重視の魔術で」
「了解了解大丈夫~」
ローシェさんの風魔術が炸裂する。俺は恐らくあるであろう防御デバフなどが出来る毒の生成を模索する。
さあ!みんな頑張れ、俺は後から参戦する。
名前・種・Lv
フェリックス・人・70
攻110/50 防222+45 魔163 精186+25 俊118+2 器118-10
HP273 MP269
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇 病原十蛇 魔力剣 調合
装備 黒覆布 聖銀長籠手 国亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
魔獣と魔物の違い
・魔獣…魔力という万能パワーがある異世界で魔力を生態に取り入れるように長い年月の中で進化した方の動物、単なる動物もいるにはいる。つまり魔獣の方が元の世界の動物に近い。
・魔物…物質化した魔力で形成されている生物。素材を残さないタイプが多く、冒険者からはあまり好かれてはいない。




