005 逃亡と落下
逃げる 逃げる
山を駆け降りる
けれど前世の車のエンジン音のような爆音の羽音は確実に近づいてくる
後ろから飛んでくる小石や岩は、俺の後方に落ちていたのが今は俺の前まで飛んでいくため、とても走りづらい。
何とか森まで着いたが、それでも怪鳥は追ってくる。
「あっ、」
背後からの暴風に俺の体が吹き飛び、転がる、そこでやっと俺は怪鳥をしっかりと見た。
まず大きさからして異常だ。
ダチョウすらもはるかにしのぐ巨体の、肩?両翼の付け根には目の無い嘴だけの鳥の顔が二つ、そして中央の顔には3対の目が並ぶ、
足はダチョウのように長いが、折りたたまれていることにより飛行の邪魔にはならない。
3対6つの目には赤い光が宿り、露骨に狂暴であることを示す。
何とか足止めだけでも試そうと思い、能力を知るために解析を試みるが、
失敗。
確か、これって大きく実力が離れていることの表れだったよね?
分かっていたことだけど、まずい。
でも何かしないことには始まらない!
「あれ、今なんか叫び声聞こえなかった?」
「ええ?気のせいじゃない」
「いや鳴き声のようなのが確かに聞こえたっす、かすかではあったっすけど」
「う、おい此処は何処だ!あのガキは!」
「君はもうちょっと落ち着きなさい」
今度は何の魔術もかかってない杖で済ましてあげよう
さっきは気絶するように魔術かけて殴ったからね、
あの子に若干引かれていた気がするのは気のせいかな?
「まあでも、何かあったとしてもあの子は大丈夫でしょう」
「俺らよりも先についてたってのは保証にならないと思う」
「いや、あの子のところって決まったわけじゃないっすけどね」
「だとしても、心配にはなるでしょ」
「どちらにせよ、我々にできることはないからおとなしく下山しよう」
「おめえら何の話してんだ?」
「そっか脳筋はまだわかんないよね」
「クラース、あれは羽の音だ」
「は!?」
「まあ、取り敢えず降りましょう」
「そうだね…」
我ながら声に凄い渋々が出ていたなと思う
だめで元々、当たればラッキー、下手な鉄砲数うちゃ当たる
それが今の俺の信条。
まあ数舜後には俺ごと消し飛んでいそうな信条だけどね
今俺は『毒針』を何発も射っている
体にはどこも効果が無かった、少なくともそう見える。そもそも聞く効かない以前に刺さらない。
だから今狙っているのは顔だ。
あの怪鳥は森の中に突っ込むことなく俺の上空から魔術?みたいなのを放っている、何とか躱せるのが幸運だ。
「高くて遠いんだよなー…あ!また外した」
これMPが枯渇するよ!
MPが枯渇する前に当てて足止めくらいはしたい、けど足止めになるかどうかすら分からない。
「よし、おおっ!よっし!」ここにきて二連続命中だ。
しかし、その喜びもつかの間、三面鳥の怒りが増幅しているのが傍目にもわかる、いや当事者なのは確かだけど。
そして怪鳥は今までしなかった行動に出た、木々をなぎ倒したり羽ばたきの風で吹き飛ばしたりしながら無理やり着陸したのだ。
体にいくつもの木のかけらや枝が突き刺さる物の痛みが無いとでもいうかのように平然と立っている。
ドンだけ頑丈な体してるんだよ、倒せる道のりが見えないんですが。
そして、当然怪鳥の羽ばたきによって吹き飛ばされた瓦礫は俺の方にも飛んでくる。
怪鳥は今はなぜか追ってこない、なのでこれが好機と思って少しづつばれないように距離を取っていたんだが…
「ばれた!」
そのダチョウのような足で怪鳥が駆ける。
俺は逃げる。
根や低く垂れた枝を時に飛び越え、時に躱し、時にぶつかりながらなんとか山を駆け降りていく、でもやっぱり向こうの方が速いのだ。
「え、ううぇぇ、おあ、うわぁっ!」やっぱあれだよな、アイテム袋が欲しいよな、見た目の割に異常な容量持ってる奴。
どうしてそう思うかというと…
背負っていたバッグを嘴で掴まれる、大きく振られる、下に振られ、上に放られる。
くそ、お父さんとお母さんからもらったバッグだけでは容量が足りないからと自作で雑なバッグを作っていたのが裏目に出た!まさか敵に利用されるなんて。
という事で現在飛行中、じゃなくて上昇中のフェリックスです。
怪鳥の投げ飛ばす勢いが強すぎてとんでもない高度まで運ばれている。
俺は自分でいうのも何だがきれいな放物線を描いて落下している。
何か飛べるようにならないかな、このままだと俺死ぬんだよ。
俺の体が加速する
さっきから絶望の色が強すぎて投げやりになってきてる気がする
俺の体が加速する
ただ、いくら投げやりになろうと、真顔になるようなことは起こりえるのだ。
俺の体が加速する
「嘘だろ!」
俺の体が減速を開始する
怪鳥の追撃が迫っていた。あのクソバード!投げるだけでは飽き足らず追撃まで加えて仕留めようというのか!
俺の体が減速する
「放り投げたらそれで満足しろよ!」
俺の体が減速する
ほんっと執念深いなこの鳥
俺の体が減速する
体を捻って避けようとするも、向こうは空中を自在に動け、こちらは落ちるしかないとなれば結局当たるしかないわけで…
「!?」
怪鳥の嘴が空を挟み、俺の体が再び加速を開始する、
俺の体が加速する
加速する
加速する
怪鳥はやはりさすがこの周辺での最強魔獣だけあって一瞬の戸惑いの後に
正気に戻り再び俺への追跡を開始する。
怪鳥は下方へと加速し、
俺は下方へと落下する。
落下に加え、飛翔による加速も合わさっている怪鳥の方が当然早く、見る見るうちに怪鳥が追い付いてくる。
このままだと喰われる、何か打開策はないか?あいつの動きを止められればいいんだ、だとすれば…
目を狙うべきだろうな。今のところ一番効いてるっぽいのが目だし。
ぐんぐんと近づいてきた怪鳥はもう目と鼻の先まで迫っている。
「さすがにここまで近ければ外れないよな?」
俺の体の落下速度はどんどん上昇していく、一方で怪鳥の体はどんどん迫ってくる。
右手首を左手でつかみ、安定させる
「でやぁっ」
よしっ、ちゃんと当たった。
「ギエァァァァァァァァァァァァァァァ」
けたたましい鳴き声と共に制御を失って怪鳥が落下していく、怪鳥はこの高さまでほとんど高さ軸の移動しかしていなかったため、俺と平面で見ると位置にずれがある、そのため俺に激突することなく怪鳥と一緒に俺も落下する。
怪鳥は何度も羽ばたこうとしているが、なかなか立て直せないようだ、うまく力が入っていないようであるし、思ったより目をつぶせたのは大きかったかな?
「窮鼠猫を噛むってね」
出来れば噛んだ後も保障してほしかったなぁ。
多分俺も死ぬだろうなあ…
ああ、人生が短すぎるよ…体感2年しか生きていないし。
来世こそは長生きがしたいよ。
俺はゆっくり目を閉じた。
ズンッ!ガサゴソガサ
ドドズン!
「いった」
全身に細かい無数の切り傷が刻まれる、落下中特有の浮遊感が失われたことから落下が終わったことは分かる。
だけど何故生きてる?
ゆっくりと目を開けて辺りを見回した俺が見たものは辺り一面の濃い緑だった。
加えて周囲には何本かの茶色く太い筋、おそらく期の中に突っ込んだのか、恐らく前世の世界に在った木では出来ない事だろう、この世界の木は丈夫さや柔軟さが段違いだと思われる、だからこそのあの高さから落ちても無事だったのだろう。
ただ、その代償は当然大きく、木の枝派の中を通る過程で全身に細かい傷を負ってしまった。
それに加えて全身に鈍い痛みがある。
やっぱどの世界でも落下の衝撃を吸収して登場人物を助けてくれるものっていうのは水か樹って決まっているんだろうか。
それは良いん。、とにかくこの場を一刻も早く離脱せねば!いつ再びあの化け物に襲われるかわからない。
とにかく体勢を…
「おわぁっ」
少し体を動かした拍子に紙に枝に引っかかっていた部分が外れ、下に落ちる。
勢いよく腰を打ったため腰が激しく痛い。
この若さで腰痛に悩む日が来ようとは、
前世でもあまり腰の痛みには悩んでいないのに!
まさかの事態だが、何とか立ち上がってできるだけ急いで山を下る。
当然これまでの戦闘による痛みで駆けることはかなわず、しかも転ばないように気を付けて慎重に進んでいるため歩みはとても遅い、幸いにしてまだ追っては来ていないようなのでさっさと降りる。
「急げ急げ」
思ったよりも先が遠い、急がなくては
そう思い大分痛みも引いてきたので急ぎ足で駆け降りる。
それが悪かったのか、木の根に躓いてしまう。
「あっ」
勢いを止めるために出した足が体のバランスをより崩してしまい、それが何度も続くことで…
坂を転がり落ちるような事態になる。
転がる転がる
目が回る
転がり転がり
痛みが増し
転がった末に……
こんにちは浮遊感、さっきぶりだね!
出来ればもう2度と会いたくはなかった。
大地の切れ目に真っ逆さまに落ちていく。
どすっ
俺は二つの山の頂の間に空いた渓谷に落下して、下が落ち葉がかなり積もった所であったために助かったものの、痛みで意識が遠のいていく。
冷静に考えるとまずいのだ
だって冒険者ギルドの会員に給金があったりするわけではない、つまり冒険者としての収入はどんなにすごい冒険者であっても、依頼の報酬と採取した素材だけなのだ、そして依頼の期限を源を守れないと違約金がすごい事になる…らしい。
よってここで気を失うと次にいつ目覚められるかわからないために本当にまずいのだ。
けれど、
ああ、意識が遠のいていく…
名前・種・Lv
フェリックス・人・15
攻37 防60 魔52 精46 俊45 器45
HP86 MP90
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性




