048 北上記一日目
朝だ。
窓を開けて空気と景色を少し楽しむ。
そういえば、あの少女は仲良くなったらしいマリアナさんの部屋で眠ってる。正直マリアナさんが仲良くなるっていうのは意外だった。
でもこの思考は多分失礼。
だから、
窓を閉め、ドアを開け、部屋を出る。
「絶対言わないようにしよう」
「何を?」
「え、いやマ…」
あっぶね、マリアナさんじゃん。
口を滑らしそうになった。もし口を滑らしたら大剣の柄でドスンとやられること間違いなしだからね。
「?」
「おーい、聞こえてるー?」
「何でもないですよ?何でもないですから」
「そっか」
「そうそう」
「あ、おはよーマリアナちゃん」
「おはようエステル」
おお、昨日のうちにずいぶんと仲良くなったようで。
あまり話さない方が良いかもしれないな。黙ってよ。
「今日の朝は宿のご飯を食べるの?」
「そうだよ、食べたら出発」
「君の名前はなんていうのかな?」
「フェリックスです」
「よしよし、フェリックス君、よろしくね」
くそ、俺の方が生きた年数は長いのに!なんか釈然としない。
「ぐぅ」
雑談しているうちに階段を下りきり、宿の食堂に着いた。
「おはようございます」
「よろしくお願いします、ビルトの皆さん」
「あれ、今朝は普通に話せてるね」
「エステルは現魔術を使うと心臓の魔腺と連動して心臓の鼓動が速くなって緊張状態になっちゃうんだって」
「ああ、それで昨日はだいぶ緊張してたのか」
「そうだ、聞きたいことがあるっす。昨日の現魔術の精度の村について聞きたいんすけど」
「あの、私、集中すると精度がすごく高くなるらしいんだけど、とっさに発動したりするとむしろとても精度が低くなっちゃうらしいんです」
「それで…納得がいったっす」
雑談の後、一人加えた六人で馬車に乗り込み、北へ向けて出発する。
…俺は忘れていたけどカイさんはしっかり覚えていた様で、馬車は
「噂の大音楽家」護衛一行に加わり、中心の豪華な馬車を囲む馬車の一つになった。
「護衛とはいったけど、平和だね」
「まだ始まったばかりでは?」
「周りにも幾つものパーティがいて全体の速度が落ちている。本当にこれでいいのか?」
「分からな~い、でも大音楽家様が良いならいいんじゃない」
「そういえば名前すら知らないんですよね」
「そうだね」
「どんな楽器を演奏するんだろう」
「何か知ってるっすか?えーっと」
「エステル」
「エステルさん」
「歌も、歌うらしいです。それと、楽器は新しいのをよく取り入れてるらしいです」
「そうっすか~」
新しい楽器ってもしかして例の発明家由来かな?
って考えすぎか?
日本を懐かしみすぎてる?
う~ん、帰りたいとは思わないけど確かに向こうの生活の方が便利ではあったからな確かに懐かしいって思いはあるな。
その発明家の人とかはどんな境遇なんだろう。
一度会ったら話を聞いて見たいな。
ま、そんな色々と作ってここまで広めているってことはお金持ちだったりするんだろうし、なんか東の方の大陸だか列島だかに国かなんか作ってるっぽいからそんな気軽に会えないんだろうなぁ。
まあ、会えなかったとしてもいつか東の方にある島国に入って見たいな。
「止まったっす」
「何が?」
「行軍が?」
「軍ではないね」
確かに
「前見てみるっす」
「どうやるんですか?」
「前まで行って来るっす」
「それなら、私が、見ます」
「現魔術ってそんなこともできるんですか?」
「えと、色々と、工夫して…」
凄いな、現魔術
目を閉じて瞑想をしている。瞑想じゃない可能性もあるので、瞑想っぽい事をしている。
深呼吸の音が聞こえる。
「…あの、分かり、ました…魔獣の、解体を、しています。」
なんか術を発動する前も若干緊張しているような気がしたけど、やっぱり魔術を使用した後の方が顕著だ。
それと…顔が少し青ざめている?緊張以外にも何かあったのだろうか?
緊張度が全然違う。
「にしても、もう終わってたんすね」
「出番なさそうですね」
「そうだね~後ろから強襲されない限りはね~」
言い忘れていたが、俺達の馬車は護衛の中でも比較的後ろ側に配置されている。そのため、正面からの襲撃はすべてこの馬車まで役が回ってくる前に終わってしまうのだ。
「これは道中の素材系統にも期待は出来なそうだな」
そうだ、素材といえば!
収納袋の一つを開き、魔獣の死体(主に虫)を取り出す。
そして解体を始める。
だいぶ溜まっていたからここで素材にして、次の町…えーそう、エイン、エインで売れるようにしておこう。
ちょんちょん
肩を叩かれる感触。振り向く。
マリアナさんだ。
「どうしたんですか?」
「エステルの方を見て」
顔が青ざめていた。
「…すいません、全く気付かなかった」
死体を片付け、死体の下に引いていた布もしまう。
マリアナさんが背中をさすっている。
悪い事をしてしまった。そうだった、必ずしも自分の常識というか日常になったものがほかの人にとっても常識であり、日常とは限らない。簡単で当たり前のことであるはずで、しかも容易に想像できたような事柄なのに失念していた。
それに、さっきの現魔術で遠くを見たときの反応からも察せられただろうに…思えば、むしろなぜ俺はこんな簡単に順応しているのだろうか?
少し考えて、分かった。
お父さんが結構外で魔獣を狩ったりしてたからだ。
家で魔獣解体することもよくあったし、それで結構前から慣れていたんだなぁ。
お父さん、なんか昔はすごく強い冒険者だったらしいからなぁ。
持ち前の炎でごうごうと、その姿を見たことがある兄さんはそれにあこがれて剣術を練習しているらしい。
そういえば兄さんが成りたいのも冒険者だろうか?次に会ったとき覚えていれば聞いてみよう。
話が脱線している。現実に戻ろう。
エステルさんは魔獣の死体を見たことがあまりないらしく、においと光景の両方にやられている様だ。
申し訳ない。
少しでもにおいを消すために『浄化』なども活用しながら、カイさんの操縦する馬車が進む。
夜だ。
夜は進むのを止める様で、他の馬車の冒険者たちも野営の準備を始めてる。
火をつけて焚火をし、その火で料理をする。
今日はカイさんがまた別の料理を教えてくれるようなので楽しみだ。
カイさんの料理は本当においしく、ローシェさんが褒めるレベルだ。
…もしかしたら、ローシェさんが不満の声を上げるのは俺のレベルが低いからかもしれないが。
料理の工程もだんだん複雑化してきている。そのことに自分の成長が感じられ、とても嬉しい。ローシェさんはカイさんの料理の味と比較しているからあまりおいしくないと感じるだけだという事と、リーダーとマリアナさんは美味しいと言ってくれているのでエステルさんもおいしいと感じてくれることを願っている。
「で、出来たー」
殺気も行ったが、すでに料理がだいぶ複雑化している。そのため料理を作るのも大変なのだが、その分無事完成した時の喜びもひとしおだ。少なくとも見た目は良い。だからとりあえずは満足だ。
味はまあ、まずくはないだろう。
試食。
うん、不味くはないし、むしろおいしいともいえると思う。
自分が作った料理であり贔屓目に評価していることや、初めて作る料理でカイさんの手伝いがあったことを除いても、十分うまく出来たと言えるのではないだろうか?
完成品を夕食として他の人たちに出すと、ローシェさん以外は美味しいと言ってくれた。
カイさんの料理と比べるとまだまだだけれど、これは成長と言えるだろう。
食後は茂みの中で、人目を忍んで匂いをあまり漏らさないように解体を行った。こういうアイまでやっていかないと処理が追い付かなくなる可能性があるからな。これは仕方がない。
「昼間の緊張も収まった?」
「うん、ありがとう」
「緊張が長引く出来事があったけど、もう大丈夫みたいで何より」
「うん、おかげさまで、えへへ」
「これからは戦闘とかがある可能性もあるけど、その時もエステルには見せない方が良いかな?」
「そ、そんな気遣わなくてもいいよ」
首を横に振り、両手も振っている。
「うん、頑張って…慣れる、から…」
「無理しなくても良いからね」
「本当に、ありがとう、それは、覚えておくよ」
名前・種・Lv
フェリックス・人・70
攻110/50 防222+45 魔163 精186+25 俊118+2 器118-10
HP273 MP269
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇 病原十蛇
装備 黒覆布 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
現魔術は把握と置換の二つの大きな機能の区分が出来ます。
遠くを見る奴は把握の方の少し応用。




