047 北上記零日目
戦いが終わり、カイさんの連れてきた馬車に乗り込み北上していく
ペールさんがローシェさんの事を師匠と呼ぶようになったという変化はあるけどそれ以外は何の変化もなく、山を越えた先の小さな町へと到着した。
のだが、何かがおかしい、様な気がする。
というのも、なんか町のそばに豪華な馬車とそれを囲むように並ぶ馬車群があるのだ。
「これなんだろう?」
「千車旅団?」
ちょっと違う気もするけど…なんだろう?
「旗の模様から判断すると違います」
「なんでしょう、この馬車」
「すまない、少し聞いてもいいだろうか?」
「え、ええ何でしょう」
「この馬車群は何だ?」
「知らないんですか?」
「ああ、教えてくれ」
「噂の大音楽家が演奏に向かうための護衛を集めて旅してるらしいのよ」
話し方がゲームのNPCっぽく感じたのは気のせい?
「つまり今はその旅の途中で補給とか休憩とかをしているという事っすか」
「そのようです」
少しその演奏を聞いてみたい気持ちはあるけど、まあ関係ないか
「あ、そうだ」
あの後しばらく歩いて宿にたどり着いたんだが、そこでローシェさんが何かを思い出したようだ。
「報酬」
「?」
「?」
「ああ、プラクト山の依頼の報酬の事か」
「そういえば」
「あ!」
おや?雲行きが怪しい?
「そうだ、忘れていました…」
「…なるほど」
「千車旅団の僕の馬車の中に貨幣の袋があるんです…」
「つまり千車旅団に合流してそれを取って戻ってくるってことかい?」
「もしくは次の千車旅団の停止地まで馬車で送ってもらってそこで受け渡すのでもいいですけど」
「でも、それだと時間が間に合わないこともあるからな~」
ローシェさん!?何を言い出してるんですか!?
「それなら僕は一人で急いでその街に向かって、その土地で合流することもできますが」
「その方法はあるのかい?」
「はい、多分」
そういうとペールさんは馬だけが止まっている場所までやってきた。
その中の一頭を見つけ、
「この馬が僕の馬車を引く馬の片方です。この馬に乗っていけます」
「先に行ったときはこういう風にしてもらえるのかい?」
「はい、何があるか分かりませんから」
「でも…それって…」
いいぞ、マリアナさん。言ってやれ!
「彼が払わずに逃げてしまう可能性はあるが…ローシェ、そこはどうする?」
「どうするもこうするも、私は私の弟子を信じるよ。まあ、裏切ったとしたら…分かるよね?」
「!」
ペールさんがすごい怖がっている。
ローシェさんが悪い笑みを浮かべているけど、ローシェさん、それ何かを企んでるタイプというかいたずらっ子いたずらする時の様な悪い笑みです。
「で、その街ってどこっすか?」
「エインです、シューラッド東側最北の都市にして最大の都市です。」
「了解、ではそこに向かう」
でも、ローシェさんは割と本気で信じていたらしく、普通に送り出した。
何だったんだ、あれ?
「ローシェ、本当に信じていたのか?」
「ん~~どっちかって言うと信じたい、が正しいかな。私の事を師匠と慕ってくれる彼の事を信じたい。だから信用を作るために前科を作る機会を与えた」
「前科って悪い方じゃ」
「…細かいことは気にしな~い」
絶対細かくないね
「というか、ほんとに弟子って認めたんですね」
「うん、この先何回も会う事は無い気もするけど」
「それならあまり意味ないんじゃ…」
「気分的な問題だからね~」
「そういえば、あのへんな笑顔にはどういう意味があるんですか?」
変な笑顔って…
「へ、んーーー。あれはからかって見たかっただけだよ」
マリアナさんの言葉にローシェさんも一瞬ひきつった顔をしたがすぐに調子を取り戻した。マリアナさんの天然?
それと、ローシェさんがこうしたのにはもう一つ理由があった様だ。
それが本当に想定していたものかは定かではないのだが、まあその選択が功を奏したのは確かだ。
宿へ戻っていく途中宿に入るか入らないかくらいのところでカイさんが足を止めた。俺が気付いたのは中に入ってからなわけだが、
「カイさんどうしたんですか?」
「いや、誰かの気配を感じただけっす」
「気配?」
「足音も効い他っすから多分間違いはないんすけど…」
「どこにいるかは分からないってことですか?」
「そっす」
どこだろう?気配とかよく分からないからあてずっぽうになってしまうが、
「あそこ!」
「にいるんすか?」
「適当です」
「どうした?」
「リーダー、カイさんがなんか人の気配を感じたって」
「なるほど、それでフェリックスはなぜそこにいると思ったんだ」
「なんかあそこに空間がありそうだな~って」
「よく分からないが、確かに何か違和感があるな」
「俺もっす」
「普通に建物が並んでいるだけじゃない」
「うん、完全に現魔術が使用されているね」
「現?幻ではなく?」
「そう、幻を見せるわけじゃなくて使用者の都合のいい現実に誤認させるから現魔術」
「幻魔術もあるにはあるけど、あれはどっちかっていうと対象を指定してその対象に幻を見せるから、コスパは良いけど利便性は現魔術の方が高いね」
「つまり、幻魔術は相手にかける物で現魔術は自分や環境に掛ける物ってことですか?」
「その通り」
つまり狐につままれるとか狸に化かされるとか、あれはこっちの世界で言うと幻魔術になるって事かな?
後恐らくだけどイカの使っていた毒は毒魔術と幻魔術の複合みたいな感じの物だと思う。
「話しているうちに現魔術のほころびがなくなったね」
「あ、ほんとだ」
「でも、あそこには空間があるように見えたけど、今それが見えていないという事はあそこに隠れているわけで」
「じゃあ探って来るっす」
先ほど違和感のあった地点に向かう。
しかし、その地点を見てみても今や何の違和感もない。
かなり高度な魔術である様だ。
でも、ならば先ほどはなぜ違和感を覚えるほどの練度の低い魔術だったのだろうか。先ほどの場所へ訪れたのだが、これほどの至近距離でも全く違和感がない。
何もないように感じる。どうすれば出てきてくれるだろうか?
呼びかけてみるか
「そこに誰が隠れてるんすか」
一瞬魔術が揺らぎ、人影が見えたような気がする。
「姿を見せるっす、後ついでについてきた理由も」
諦めた様に魔術が解かれ、一人の少女が姿を現した。
「ごめん、なさい。話が、聞こえてしまって…」
「何のためについてきたんすか」
「…ごめんなさい」
「あ、いや責めているわけじゃないんすよ。理由が聞きたいだけっす」
「…」
だめだ、自分では彼女と上手く話せない
「何か話があるのなら聞く、だから宿についてきて欲しい…っす」
「は、はい。ありがとうございます」
宿に彼女を連れていき、リーダーたちを呼ぶ。
「リーダー、彼女が何か話あるらしいで…っす、俺じゃきついので話を聞いてあげられないっすか?」
「分かった」
リーダーが少女に向き直る。
「君は何の話があるのだろうか?依頼でもなんでも少なくとも聞こう」
「あ、あの…」
リーダーは沈黙している。リーダーとしては多分相手が話し出すのを待っているつもりで、多分それは気づかいとか優しさからなんだろうけど…辛そうだなぁ。
緊張してるというか圧倒されているっぽい。
「リーダーじゃ無理なんじゃないかな?という事で私が話を引き継ごう」
「ローシェさんでも無理だと思います」
「まあまあ見てなさいって」
ローシェさんが少女のもとに歩み寄り、かがんで目線を合わせ、話しかける。
「我々ビルトに何か用かな?」
「は、はい、あの、依頼が、あって…」
お、順調か?
「ほうほう、それでそれで?」
ローシェさんが話を促すように相槌を打つ。
ローシェさん、リーダーの松作戦が失敗したからせかし促す作戦って事か?でもそれ緊張しそうだけどな~
「うぐ、固まっちゃった」
「…あ、あ、ご、ごめんなさい」
トッ
マリアナさんが前に出た。
少女の手を取って連れていく。
「え?え?」
「ついてきて」
「う、うん」
マリアナさんの宿の部屋に二人で入っていく。
確かにマリアナさんとなら何となく似ているような気がしないでもないから適任かもしれない。
頑張ってください。
「……」
「…あ…」
「…」
「ご、ごめんなさい…緊張してしまって」
「大丈夫」
「…ふぅ、はぁ…よし」
彼女も話せるほどに緊張がほぐれたのかもしれない?
「あ、あの、依頼があるんです」
「うん」
「私、行きたいところがあるんです。それで…」
話がまた詰まってしまった。
「大丈夫」
「ありがとうございます。それで、話を、聞いてしまったんです」
「うん」
「あなた達が、エインに行くって、だ、だから、だから、連れて行って、もらいたくて…」
「つまり、エインに行きたいからその足として使いたいって事?」
「い、いえ、そ、そういうわけでは…なくって…」
「ふふ、ごめん、少しからかった」
「あ、そ、そうだったんですね、良かった…」
「依頼としてってことだよね、だとしたら護衛ってことにするのが良いかもしれない」
「よく分からないですが、はい、そうします!」
「じゃあ、行こうか」
「今から出発ですか?」
「そうじゃないけど、外へ」
「は、はい」
「大丈夫、説明は私がするから」
「あ、ありがとうございます」
マリアナさんが出てきた
「話は出来ました?」
「出来たよ」
「じゃあよろしく、マリアナちゃん」
「簡単に言うと、エインに行きたいのでその護衛を依頼したい、だそうです」
「なるほど、いいよ」
「そ、それで…さ、さっきの人みたい、になるのが、心配だと…思うので、お金なら、ちゃんとありますよ」
「ペールさん、ちゃんと聞かれてる」
「ふむ、さすが我が弟子、すでに知名度が上がっている」
「そういう事なんすね、ローシェさん」
「では、明日出発する、これからしばらくよろしく頼む」
「……は…はい」
今日のうちに同時に受けられる依頼を調べておく必要がありそうだ。
この町の冒険者ギルドへ訪れる。
「この町のギルドは小さいっすね」
中に入り、依頼の掲示板を確認する。
幾つかの依頼の中で、一つだけ、エインまでの護衛依頼があった。
その依頼で募集しているのは一人、もしくは一パーティのみだ。
そして、その依頼人は
「この人が噂の大音楽家、すでに結構な護衛がいるのにもう少し増やそうって事か、慎重な人っすね」
そういえば、彼女、宿に入る前はハープを持っていたような気がする。
そのハープはどうやら魔術で隠していたようだが、だとするともしかしたら、彼女はその音楽家にあこがれているのかもしれない。だからその演奏を聴きにエインを目指した。そういうことかもしれない。
戻るか。
「カイ!どこ行ってたの」
「同時に受けられる依頼が無いかっていうのを調べに行ってたっす」
「それで?何かあったの?」
「あったっす、護衛依頼。件の大音楽家様のご一行に同行っす」
「はぁ!?」
名前・種・Lv
フェリックス・人・70
攻110/50 防222+45 魔163 精186+25 俊118+2 器118-10
HP273 MP269
スキル 鑑定 解析 毒魔術 浄魔術 毒耐性 発光石 浄風破裂 調理 解体 騎乗 装備装着 十頭蛇 病原十蛇
装備 黒覆布 聖銀長籠手 黒亜竜鞘+鱗鉄短剣
耐40 80 40(35) 重+17
装備スキル 開放 閉鎖 武装
名前出し忘れましたが、ハープの少女は14くらい、ペールさんは成人ちょっと前くらい。
この少女字数嵩増し機かもしれない。




